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硫黄岳のいただきの雪はバラ色に染まり、そのかげは紫色に燃えていた。朝日を受けて輝くという他動的なものではなく、山そのものの地核からそのたぐいまれなるバラ色が、にじみ出してきて雪肌を染めているように見えた。それは、処女が示す羞恥のためらいのように清楚な美しさを持っていた。
(略) その時、彼は、おそらくこのように美しいものを見ている者は、日本では自分一人であろうと考え、こういう美しいものとの対面が、彼と山とを永遠に別れさせないものにするのではないかと思った。 (第二章 展望より) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2009.01.04 18:06:43
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