《日本の“はっぴいえんど”にも影響を与えた、60年代のサンフランシスコ・ロックを代表する伝説的なバンド。フォーク、カントリー、ブルース、R&B、サイケデリックなどの多彩な要素を融合させた60年代後期のサンフランシスコ・ロックのなかでも独特の存在感で異彩を放った。1966年に結成され、1st『Moby Grape』、2nd『WOW』といった名作を残すものの、1stアルバムから5枚のシングルを同時発売するといった無理もたたってか、短かい活動期間で解散した。》~CDジャーナルより~
60年代末期、サンフランシスコで活躍した【モビー・グレープ】の『WOW』です。ジャケットがシュールなダリ風の油絵ぽくて、サイケ時代を反映したかのような作品です。
【バッファロー・スプリング・フィールド】あたりと同世代のようですが、モビー・グレープの方が音楽性が多様で面白い。いや、ほんとフォーク、カントリー、ブルース、R&Bと色々とある。
メンバー全員がソングライターの才能があり、曲を提供している。そしてヴォーカルも出来るようなのです。どの曲にも【バーズ】ほど綺麗ではないが、独特のハーモニーワークが聴けます。
カントリー系の曲は「MURDER IN MY HEART FOR THE JUDGE」
フォーク系の曲は「BITTER WIND」「HE」
サイケデリックな「ROSE COLORED EYES」
ジャムセッション風のブルースなナンバー「MILLER’S BLUES」
ブルージーなロックンロールナンバー「CAN’T BE SO BAD」なんかギターリフが渋くて最高。さらにホーンの導入でファンク度アップ。踊れるー。
「JUST LIKE GENE / AUTRY A FOXTROT」の50年代あたりのレトロな酒場(グラスが鳴る音、ウェイターの声が木霊し雰囲気抜群!)の
ダンスホールを再現したかのような音場は、良き時代のアメリカを連想してしまい、聴いているこちら側まで入り込んでしまい、幸福な気分になれます。
「HE」で聴けるヴァイオリンはフラワーカルチャーそのものの音色で、ふくよかなコーラスと共にトリップを誘います。
「MOTERCYCLE IRENE」はマリファナ煙草をくわえ、入れ墨をしたヒッピーな女、南に行けばハーレーの上で処女を奪われ、男遍歴は数知れず、刑務所暮らしも経験し、今は放浪暮らし、行く末はバイク事故で死んでしまった。そんな物語の曲。最後にオートバイがスリップし、衝突したようなSE(サウンド・エフェクト)で終わる。
「THREE-FOUR」はラブバラード。ストリングスが美しい名曲!
《THREE-FOUR》
♪どうか俺のことは心配しないで 君を守ってやるよ
俺を思うだけでいい そしたら駆けつけるから
悩みは忘れるんだ 嫌なことは考えないで
愛の美しさは君と共にあるから
たとえ心は遠く離れていても
君の全てを愛しているんだから
俺は命が尽きるまでここにいるつもりだよ
俺が死んでこの命が
君の見えないところに行ってしまっても
君の中には俺の魂がずっと生き続けている♪
「FUNKY-TUNK」はヴォーカルに早回しを使用。あの【フォーククルセイダーズ】の「帰ってきたヨッパライ」はもしかしてこの曲のパクリか!?
うーむ、これは60年代アメリカンロックの名盤に相応しい、密度の濃い作品ですね。
当時のヒッピームーヴメント文化の臭いがプンプンしております。
“はっぴいえんど”への影響とありますが、以後の【細野晴臣】のソロ作に通じるものを感じとりました。ルーツなのかもしれないなと思った。これを知ったことも収穫でした。ニヤリ。
PS
(なおモビー・グレープは、2007年1月にサンフランシスコのフィルモアにて、再結成ライブを行ったそうです。)
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