今日は、「ぜいたく」をしたハナシを書く
他人の「ぜいたく」を聞かされる方は
あまりおもしろくない気分になるもんだが、
まあ、おつきあいいただきたい
僕だって、ぜいたくすることもある。
ハナシのきっかけとして、
「ハマリ食」について、説明せねばなるまい。
「ハマリ食」とは、僕が勝手にそう呼んでるんだけど、
「好物」とはちょっと違う。
好物ってのは、食べ物で何が好きかって言われたときに答えるヤツで、
そんなに頻繁でなく、しかし長年にわたって好きな状態が続き、
「ここ一番!」というときに食べたいものだ。
これに対して「ハマリ食」は、
まあ、ハマるくらいだから、嫌いなわけはないけど、
だからといって、「一番好きな食べ物」というわけでもなく、
ある時期、なぜか急に愛しくなって、
気づいたらそればっかり食べてる期間があって、
でも、しばらくするとそのブームは急におさまる、
そういう食べ物のことである。
あるでしょ?そういうこと。
僕もこれまで、何度もの「ハマリ食」があった。
(つまり、ハマリ食は、名詞ではなく、その状態を指す言葉だな)
やけに「うどん」に凝りたくなって、
毎日2玉くらいゆでて、醤油をたらして食べてた時期もある。
ゆで卵にハマって、一日4個くらい食べてたこともある。
ビーフシチューを作って、食べてはルウをつぎたし、
1週間ずっとシチューだったこともある。
「ハマリ食」は、年がら年中、何かにハマっているわけではない。
ノーマルの状態のときの方が長い。
しかし、ひとたび「ハマリ食」になると、
もう、そればっかの日々になる。
そして、1週間くらいすると、ピタッとおさまって、
しばらくソイツに見向きもしなくなる。
この辺が、「好物」とは異なる点である。
今、僕は
ハマリ食の状態にある。
何にはまっているか。
キムチである。
キムチにはまってる。
もっとも、はまってるからといって、
自分で作ろうというレベルではない。
売ってるモノを買ってきて食すだけである。
でも、キムチはもともと嫌いではないとはいえ、
これまで、わざわざ買ってまで食べようとは思ってこなくて、
それがスーパーでビン詰めをヤツを買ってきて、
それを唯一のおかずとしてご飯を食べているというのは
これは「ハマリ食」にちがいない。
そして、今日、
今回のハマリ食である
キムチで
ぜいたくをしてやろうと思った。
「ぜいたく」って言葉は、微妙なニュアンスを含んでいると思う。
ただ単に高額をはたく行為は「ぜいたく」とは、ちょっと違う気がする。
自分の状況に対して、ちょいとムリをする、
この「ムリをする」というところに
「ぜいたく」という言葉のキモがあるように思う。
(辞書には、そんなことは書いてないけど)
だから、「キムチでぜいたく」と言ったとき、
例えば、キムチを食べるためだけに韓国に行くとか、
100グラム1万円の、高級フカヒレキムチを食べるとか
(↑そんなん、あるんかなぁ)
キムチ風呂に入るとか、
そういうのは「ぜいたく」ではない
このレベルは、もう僕にとっては「不可能」である。
では、どうやって「ぜいたく」することにしたか。
スーパーに行くとわかるが、
たいていのお店では、
キムチは数種類おいてある。
普通は、一度にひとつ購入して食べるので
ぶっちゃけ、どこのキムチがおいしいのか、よくわからん
つまり、みんな一緒のような気がする。
そこで、思いついた。
「ハマリ食」状態なのだから、
今回の食であるキムチにとことんつきあってやろうじゃないか。
キムチをおかずにして、
キムチを食べるのである。
どうです、「ぜいたく」でしょう?
こっちのビンでひとつまみキムチを食べ、
その甘辛さが口の中にいる間に
これをおかずにして
別のパックからひとつまみ喰うのである
2つでは、まだまだぜいたくとは言えない。
日本には古くから懐石料理というのがある。
本格的なのになると、
フランスのフルコースどこではない品数が出てくる。
どうだろう、キムチ懐石というのは。
ただし、キムチを料理の一部につかっているとか、
そんな生易しいものではない。
向付 : キムチ
汁 : キムチ
お漬物 :キムチ
ごはん :キムチ
デザート:キムチ
どうです、ぜいたくでしょう?
そこで僕はスーパーへ向かった。
もう、どれがおいしいか、店頭で悩むことはない。
全種類買っちまうんだから、
全部を味わうんだから。
気分はるんるんである
ところがどっこい・・・。
いざスーパーに行きましたね。
漬物、おそうざいコーナーに行きましたね。
すると、パックやビン入りのキムチが8~10種類、置いてありましたね。
まず、コースの中核となるキムチとして、
某焼肉店プロデュースのビン入りを買い物かごに入れる。
ついで、平べったいパックの
「こくうま」とか書かれたヤツを入れる。
さらに
「北海道で一番売れている」とかいうキャッチのヤツを・・・。
・・・ここらで思ってしまった。
「モ、モ、モシカシテ、
オレ、イマ、アブナイヤツニナッテルノデハ!!」
買い物かごに
キムチをいくつもいくつも投入する30過ぎの男。
それが同じ種類なのであれば、
さぞかし大家族なのであろうという言い訳もたつ。
しかし、30男が投入しているキムチは
全部、異なる種類なのだ。
いったい、どういうわけなのか、理屈が通らない。
「キムチ男」。
僕のアタマの中にその言葉がぐわんぐわんと響き、
るんるん気分が一気におさまった。
「マズイ、マズイゾ、コレワ!
オレ『キムチオトコ』ニナッテルゾ!!」
ひとたびこういうことを思ってしまうと、
なかなかそれを払拭できない。
もう、次のキムチに手を出すのに勇気がいる。
また、悪いことに、
キムチのパックって、結構な大きさがあって、
他の買い物にまぎれてごまかせない。
すでに僕の買い物カゴの表面は
キムチでいっぱいだ。
これじゃあ、ハタで見てる人は、
カゴ全体がキムチだと思うのではないか。
いや、ちがうんだ、
このカゴの下には、ビールもトマトジュースもあるんだ、
たまたま表面にキムチが並んでるだけなんだ・・・。
もう、店内でひとりパニック状態である。
でも、「ハマリ食でぜいたくを」をちかったのだ、
それを断念するわけには・・・。
結局、10種類くらいあったキムチの中から、
僕の買い物カゴに残ったのは
4種類だけでした。
小心者だなぁ~~
ところが、
小心者の冒険はまだ終わっていない。
レジを通らねばならないのだ。
悪いことに、
後ろにはおばちゃんが並んでしまった。
こっちの様子を見てる。
さらに悪いことに、
レジのお姉さんが、
キムチばっかり4連続で打ちやがった。
「○○キムチ」、
「△△キムチ」、
「××キムチ」、
「□□キムチ」・・・。
レジの表示に、キムチが連続行進する。
「ア、キットイマ、コノオネエサント
ウシロノオバサンハ、
オレノコトヲ『キムチオトコ』トオモッテルナ!
オレナラ『怪奇キムチ男』トカアダナスルモンナァ。
ソウニチガイナイ!ソウニキマッテル!ウワァァァ!!」
ようやくレジを通過して、
人目をはばかるように
4種類のキムチを袋につっこんだ。
しかし、スーパーを出ると
さっきまでの緊張感が一気になくなり、
全種類購入ができなかった自分の小心ぶりが情けなくなり、
なんだかフクザツな気分になったのでした。
なんのハナシだ、コレ
Kama