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2010年09月09日
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カテゴリ:航空機の操縦


先日、飛ばすための講習課程をこなしてきた。

教官は私と同じくらいの歳の男だった。中くらいの背丈、まあほっそりとしているが、自衛隊員にいるような眼の鋭さと内に秘めた堅牢な肉体、というものが伺える。ああ、同じだなあ、と直感的に思った。お互い旅客輸送の乗り物を扱う者としての、なんとなく「通じるところ」というものがあるのだ。こうなると話ははやく、業種は違えど職種が似ているからこその、お互いの経験や喩えを持ち出しながら、講習はどんどん進んでいった。

機材の基本的な諸元からはじまり、コントロールの理論的な説明を受けたりする。

しかし教官は何か抑えているような雰囲気を醸し出していた。それは私も、業種は違うが指導操縦者の資格を持っているから、よくわかる。簡単にいうと、今は体育会系の教え方は禁物、となっているからだ。だがもともと育った環境が体育会系なので、どう教えたらいいのか、そこのところのさじ加減にとても気を遣うんである。

しかし似た職業であるからこそ、徐々に且つ確実にリラックス度は進行し、やがて教官はどこかホッとしたように笑顔になった。いい笑顔だ。教官もどこか緊張していたのだろう。だが私の場合は緊張どころではなく、必死なのだ。

私が操縦することになる、セスナ172S型は、小型機なので、地上走行時のステアリングがない。クルマでいうハンドル操作を、足のペダルで行う。この点がまず気になった。大型機の旅客機などは、ステアリングがあるらしい。

次に気になったのは、出力を調整するスロットルレバーである。クルマでいえばアクセルに相当するものなのだが、これが鉄道車両とは正反対の動きをするのだ。

鉄道車両の場合手前に引くと出力が「上がる」。航空機は手前に引くと出力が「下がる」。この操作が逆になってしまうのは、ちょっと怖い。咄嗟のとき、我々はどうしてもレバーを押せば出力を抑えられると思っているからだ。しかし航空機はそれだと加速してしまう操作なので、講習の段階から緊張することになった。

次に空港の説明を受ける。私がお世話になっているのは、ホンダ・エアポートというところで、自動車メーカーのホンダのプライベート空港である。このプライベート空港というものは、日本でここにしかないそうだ。

夜間用の灯火類も備えてあるので、夜でも離発着できる。小さいのに大したものだ。また、ホンダフライングクラブというのもあって、初代会長は本田宗一郎が就いていた。よくヘリに乗っては「あの新幹線を追い越せ!」などと追いかけっこしたりしてたらしい。

まあそんな話を交えつつ、規定の6時間の最後は、実機に行くことになった。ここまではよかった。


JA33HA

実機は全長8m、全幅11m、高さ2.5mというものだ。まあ小さいといえば小さい。機体の後部から近づいていく。これはエンジンが始動したときの事故を防ぐためだそうだ。あと、たぶんだが、バックできないから後ろのほうからのほうが安全、というものもあるのだろう。

まず機体外部の点検を行う。翼の状態、フラップの状態、外板の状態、タイヤ圧、オイル漏れの有無、燃料の状態、エンジンが収まっているカウル部分の点検などなど、まあとにかく全般を確認する。

次に乗り込んで、エンジンの始動を行うための手順をこなす。これがまたとにかく項目の多いこと。電子機器の電源関係を確認し、混合気を調整したりと、忙しい。だがエンジンをスタートさせるのは鍵を捻るという、クルマのような操作なのでちょっと面白い。周囲に人がいないか、また気付かない場合を想定して、手で合図を出しつつ外に向かい大声で「clear!」と言う。この段階で人がいれば「ちょちょちょっと待って待って!」となるらしい。まあそうだろうなあ。

キーを捻ると、水平対向4気筒、排気量2700ccのエンジンがブルッブルッと僅かに震えた後、元気よく回りだした。

カウルで被せているだけなので、音がほぼダイレクトに伝わってくる。これは楽しい。またプロペラの風も操縦席の窓を開けているので、そよそよと伝わってくる。これもいい。ああ、飛行機って止まってても楽しいなあ、などと思っていた。たぶん私は機械が好きなんだろう。それも、人の操作がきちんと反映されるものを。

このセスナ機も、最新鋭のものではあるのだが、基本設計は数十年変わってないらしい。エンジンを始動させるときも、燃料を電動ポンプで少し送り込んで、混合気を調整してからスタートさせる、という何だか昔バイクでそんな手順を踏んだ記憶があるのだが、とにかくその操作を自分で行うというところがいい。

こういった「儀式」があると、乗り物の機械を動かすぞ、という気分にさせてくれる。自動化しなくていい部分は、無理にする必要はない、という提言を1988年頃だったか、NASAが提唱していたのを思い出した。このほうが例えばエンジンの調子も、そのときの掛かり具合でわかるのだ。

ドッドッドッドッという大きな水平対向の音と、勢いよく回るプロペラを前にして、そんなことを考えつつその後のチェックもこなしていった。

ここまではよかった。(続く)






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最終更新日  2010年09月10日 00時44分57秒
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