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ユーカリの木陰で里の行

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2022.02.11
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カテゴリ:ファミリー



まずはプールを好きになろう。
この年末、
頭痛の種でしかなかった存在を前に、そう決意した。

今回は我が家のプールの話を。
日本でプール付きの家というと豪邸って感じだけれど、
オーストラリアでは別段珍しい話じゃない。
ふつーによくある家の一つ。
ここも、そもそもプールじゃなくて、
小学校の学区に惹かれて選んだ家だった。

娘の小学校入学にあたって、
日本語と日本文化を教えてくれる小学校で
学ばせたいと考えたのだけど、
幼稚園部から通っているモンテッソーリスクールも、
学区内の公立小学校もイタリア語だった。

公立の小学校は厳しい学区規定がされていて、
日本語を教える学校に入学するには
お隣の学区に引っ越す必要があったのだ。
ちなみに引っ越してから2年後に
娘は元のモンテッソーリスクールに
出戻りすることになったのだけど…。しょんぼり

もともとプールを気に入ったのは、
メルボルン育ちの夫の方だった。
子供のころ藁を積んだ大きな裏庭で
妹や弟たちと遊んでいたという彼は、
子どもが生まれると広い庭の家に住みたがっていた。
一方、東京に住んでいた私の方は
こっちの不便さや人口密度の薄さにうんざりしていたから、
これ以上不便になるなんてあり得ない話だった。
前の家のように庭なんか猫の額でも
商店街や駅に近い方がむしろ好ましく、
プールなどあってもなくても良かったのだった。

それでも引っ越した当初は、
キラキラ輝く水色の水面をうっとりと眺めたものだった。
ダイニングリビングルームと
ラウンジルームがプールに面していたので、
娘を小学校に送り出し遅い朝食を取るときや、
息子をお昼寝させてコーヒーで一息つくときなんかに、
ふっとプールに見入っていた。

僧侶や行者は湖面を見て瞑想するというけれど、
プールサイドの木々をゆらゆらと反射させ揺れる水面を見ていると
心が和む。
窓から覗く水景色に疲れも癒されるようだった。
ああ、家にプールがあるってなんて贅沢なんだろう、と。

だけどその美しい水面は、暫くすると
ビニールのプールカバーに覆われることになった。
プールは、思った以上にメインテナンスが必要だったのだ。ショック

前の所有者から紹介されたプールクリーナーに言われたのだ。
カバーをかけて水を守らなければ、
ビクトリア州の強い日差しに水が干上がってしまうし
(しかも当時は酷い旱魃だった)、
枯葉がプールに落ちると、
濾過器とクリーピークローリィ(お掃除ロボット)で
水質を維持するのが難しくなって、
毎日水面を掃除しなければならなくなるから、と。

ただでさえ子育てと仕事で手一杯なのに
プール掃除の時間など取れるはずもなく、
かといって2週間に1度の業者の訪問回数をもっと増やすなんて
経済的にあり得ない話で…。

こうしてあっという間にキラキラ輝く水色のリフレクションは、
汚れたビニールのプールカバーに取って代わられることになった。
憩いの風景は、あっという間に消えてしまった。

それでもプールの存在に5歳の娘は大喜びだった。
お姉ちゃんの興奮と熱気に巻き込まれて、
1歳になった下の子も楽しそうに水遊びをした。
ちょっと暖かい日が続くと、子どもたちとダディンは
ワイワイ大はしゃぎで水飛沫をあげた。

以前の家に比べると不便になったし
予算もオーバーしてしまったけれど家族が嬉しそうなので、
この家にして正解だったと思ったものだ。

とはいえビクトリア州はキホン、寒い。
前の家のリノベーションで
空調設備について調べていたときに知ったのだが、
1年のうち冷房を使うのは延べ日数にして一月にも満たないのに、
暖房の方は1年の大半。
だから戸外のプールなんて、入れる日など殆どないのだ。

にもかかわらず
「せっかくプール付きの家に引っ越したのだから」と、
夫は子どもたちとプールに入っていた。
夫の実家はビーチに近く、
真冬の凍える海でふつーに泳いでいたという
祖父の習慣が自慢の家庭で育ったから、
日本育ちの私の肌感覚からすれば「あり得ない」寒い日でも
子どもたちと一緒にプールに入ろうとした。
そんなことをしたら子どもたちが風邪をひいてしまうと
度々口論になったものだ。

そのうち息子が喘息になった。
水泳は喘息に良いとも聞くけれど、
寒い日にプールに入ると小さな子はやはり風邪をひく。
すると喘息の発作が出て、
病院の救急に駆け込まなければならないことも。
毎日処方箋の服用が必要になって、
吸引機が手放せなくなった。

3歳のころ風邪をこじらせて喘息の発作を起こした息子が
喘ぎながら言ったことがある。
黄色いアンパンマンのパーカーを着て、
洗面所の自分用の台に腰かけて、
吸引機を吸ってはなんとか呼吸を続けていた息子は
瞳に涙をいっぱい溜めて言ったのだ。

「ママ、ムウもう…ダメかもしれない…。
息が…できないんだよ。
もう次の息は…できないかもしれない」、と。

息ができないということは、幼い子にとって
どれほどの恐怖だったことだろう。
大丈夫だよ、できるよ、と励ましながら
事前に防げなかったことが悔やまれた。

息子は2歳になったころから
アトピー性皮膚炎にも悩まされるようになった。
夏が来てちょっと暑い日が続くと、
白いすべすべの肌から赤い発疹が現れる。
するともう痒くて堪らなくなってしまう。

医者だった夫は冷やしたり、クリームを塗ったり、
濡らした包帯を巻いたりと手を尽くし、
幼いながら本人も自分で氷を患部に当てたり
クリームを塗ったりと頑張っていたけれど、
それでも赤い発疹は広がって、ケロイド状になった。
5歳の時などアトピーで救急入院になってしまったほどで…。
プールの水はアトピー性皮膚炎には有害だから、
発症したらプールには入らないようにと主治医からも言われた。

いつしか私はプールを目の敵にするようになっていた。

夫との口論もますます増えた。
国際結婚なので
文化的バックグラウンドや価値観の違いから
いろんなことで意見と見解が合わず口論が絶えなかったのだけど、
プールは夫の家族をめぐるトラブルと並んで喧嘩の元だった。

子どもたちが成長するにつれ、
自然とプールに入る機会は減っていった。
中学校に入ると娘も忙しくなって、
お姉ちゃんが入らないとつまらないので息子の足も遠のき、
プールから歓声が上がることも減っていった。
稀に夫が独り、プールで泳いでいた。

相変わらずプールは、
枯葉のこびりついたくたびれた水色のビニールカバーで覆われて、
ただそこにひっそりと佇んでいた。
使わないのにメインテナンスの費用ばかりが嵩むので、
2週間おきに来ていたプールクリーナーの訪問を
冬の間は3週間おきに減らしてもらうことにした。


続きは​「プールのある風景・後編」​で。


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Last updated  2022.02.24 08:40:22
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