ホームレスの4~6割が精神疾患、夜回り通じ医療につなぐ。
ホームレスの4~6割が精神疾患、夜回り通じ医療につなぐ「東京プロジェクト」森川すいめい代表に聞く 厚生労働省の調査によると、2012年1月現在のホームレス数は9,576人(前年比マイナス1,314人)で、1999年の調査開始以来、初めて1万人を下回った。一方で、同省の委託事業としてNPO法人「ホームレス支援全国ネットワーク」(福岡県)の調査では一時的なホームレスが年間4万人と推計され、依然として路上生活を送る人が多いのが実情だ。 こうした中、陽和病院(東京都)精神科の森川すいめい医師らがわが国で初めて実施した調査で、東京・池袋駅周辺のホームレスで精神疾患を抱えている割合が2008年で62.5%、2009年で41.0%と高いことが分かり、精神医療的支援の必要性が浮き彫りになった。 夜回りや炊き出しを通じてホームレスの医療・生活支援を行う「東京プロジェクト」の代表でもある森川氏に、アウトリーチ(奉仕活動)の実際や精神科医としての役割、同プロジェクトの最終目標などを聞いた(関連記事)。 [PR]医学データにもとづく認知症を予防する生活習慣 高齢化で認知症ホームレスも増加 --精神疾患を抱えているホームレスが多いそうですが。 医学生の頃からホームレスの支援活動に携わり、2003年にホームレスの支援活動団体「TENOHASI(てのはし)」を立ち上げてからも、ずっと活動を続けてきました。こうした経験を通して、ホームレスに精神疾患が多いことは実感していたし、1996~2007年に出版された海外の研究では、統合失調症をはじめとする精神病性障害は2~42%、うつ病は0~41%、アルコール依存症は9~58%と、いずれも高率であることが示されてきました。 しかし、わが国ではこうした実態が明らかにされてきませんでした。そこで、2008年12月~09年1月に、われわれが支援活動を行っているJR池袋駅から半径1キロ圏内での路上生活者を対象に、精神疾患の有病率を調べたんです。・・(「日本公衆衛生雑誌」2011; 58: 331-339)。 2009年末にも同様の調査を行ったところ、対象者168人のうち34%が知能指数(IQ)70以下で、知的機能障害のあることが推測されました。 さらに、未集計ではあるものの、自閉性障害やアスペルガー障害などの広汎性発達障害が多いことも分かったんです。 これらに加え、高齢社会の進行に伴い、認知症のホームレスも多く見られるようになりました。大半のホームレスは、こうした精神疾患などを複数抱えています。今後、他の地域でも同様の調査を行い、わが国全体のホームレスの精神疾患有病率を明らかにする必要があるでしょう。 高い生活保護受給のハードル ・・ つまり、精神疾患を抱える人のうち、未診断のままで、何かしらの支援を受けていない場合は貧困状態に陥りやすく、やがてホームレスになる可能性が高いのです。 生活保護を受けるにしても、受給を申請するには言語コミュニケーション能力が求められるため、精神疾患の診断が付いていない人で、周囲にサポートをしてくれる人がいない場合、受給申請のハードルはかなり高い。また、認知症の場合では、単身・独居であると、徘徊して家に帰れなくなり、ホームレス化する人も少なからずいます。 夜回り中の何気ない会話から心身の状態を探る --東京プロジェクトではどんな活動を?・・ 2003年に設立した「TENOHASI」や、2008年から認定NPO法人「世界の医療団」などと共同で行っている「東京プロジェクト」を通して、JR池袋駅周辺での夜回りを毎週1回と、近隣の公園での炊き出し・医療・福祉相談を毎月2回行っています。・・ 「アウトリーチは"火消し"にすぎない」 --アウトリーチ活動での医師としての役割は? 精神科医としての私の役割は、まず、目の前にいるホームレス状態の人がどういう精神的な障害を持っているのか、それによってどんな困難を抱えているのかを定義すること。その上で、例えば、発達障害で音に敏感なので個室に入れるよう紹介状に記入するなど、本人の要望を取り入れて方向性を判断します。 診療報酬得られる訪問看護ステーションも設立 --受診につなげる実際のルートは? 受診については、本人の同意が得られれば「東京プロジェクト」で借り上げているワンルームマンション(緊急シェルター)で風呂に入り、こちらで用意した新しい衣服に着替え、スタッフとともに生活保護の申請をして、ボランティア医師が書いた紹介状を持って精神科病院に行くというルートが、この10年ほどの活動で確立できています。したがって、病院側も、ホームレスだからといって診療報酬が請求できないということもありません。 また、今年2月に訪問看護ステーション「KAZOC(かぞっく)」を立ち上げました。・・・現在、ホームレスを脱して地域で生活する66人をフォローしているところです。 ・・・精神疾患などを持っている人が特別視されることなく、地域社会で自由に安心して生きられるようになるためのモデルケースを作ることが、「東京プロジェクト」の最終目標です。[健康百科] 貴重な資料ですが、字数制限があり、抜粋しています。リンク先からご覧ください。 にほんブログ村 にほんブログ村