カテゴリ:雑談
メディアは権力であるので、それに対する監視機構の必要性は大きい。長年、それは国家権力サイドであったが(いわゆる検閲や言論統制である)、近年、メディアと国家の権力の大きさは逆転しつつある。
検閲とか言論統制とか聞けば、「国家の陰謀!」「国家の暗躍!」など恐ろしいイメージがすぐに湧くが、権力が逆転すればそれを行うのはマスコミサイドであり、現にそう言う事例はたくさん知られている(サリンえん罪報道などもその一例であろう)。 国家権力の検閲や言論統制は巨悪で恐怖で、マスコミによる検閲や言論統制はそうでないのか。私は同等か、それ以上にかなり恐ろしい時代になっているように感じる。 今この状況に小さな小さな風穴を開けているのがインターネットである。最近ではマスコミの監視機構としての役割をも(まだ非常に微々たる力ながら)果たしつつある。マスコミ内の物のわかった人たちはその事をかなり怖れている。そしてメディアにおいて必要以上にネット内の情報を貶める報道をする傾向となっている。 もちろん、いわゆるネットの、例えば匿名巨大掲示板に集まる情報の大部分は、非常に価値の少ない情報である。嘘もある。煽動目的、他人に対する誹謗中傷もある。その代わり貴重な一次情報を得られる事もある。でもここでもっとも重要なのは、それらほとんどの情報がマスコミのコントロール下でない情報であることである。 もちろんマスコミが意図してネットに流す情報もたくさんあるし、煽動もしようと何度も試みているのだが、微妙にうまくいかないように出来ている、それがネットの特性の一つではないかと思う。いろいろ細かい情報が錯綜していて、そんな巨大なノイズだらけの情報の中にマスコミの情報もマスコミが出さない情報も同じ大きさで転がっている。マスコミが一定の方向に煽動しようとしても、ここまで種々雑多な情報が一緒くたになっていると、そう簡単に思惑通りにはいかない。 もう一つネット情報の特性として重要なのは、嘘や事実ではない情報も一次情報と同じくふんだんにあるから、ネットの情報を活用しようと思えば、ある程度自分自身で裏を取ったり、調べたり、考えたりしなければならなくなる。その一連の行動が、とりもなおさず無批判、無条件にメディアから流される情報を鵜呑みにする状況を打開するきっかけになるのである。 「納豆がダイエットに効く」と。 「そうテレビが言ったから」たくさんの人が納豆を買いに走った。自分自身で考えたり(納豆にだってカロリーはあるさ)調べたり、裏付けをとったりしないままに。 小売店は大量に納豆製造業者に注文を出し、納豆製造業者はいきなりの増産体制を無理して作って頑張った。その後データ捏造が明らかになり、納豆を買いに言った人々は口々に言った。 「騙された。」 納豆業者は生鮮食料品である納豆が大量の在庫となり、経営の危機に立たされている業者も多いと聞く。 …テレビは今まででもしばしば大衆を騙している。嘘や事実でない情報が流れるのはネットとそう変わらない。 「テレビに騙された」といい、今度はその犯人を(またもやテレビに乗せられて)叩きに叩きまくる。それはとりもなおさずテレビに洗脳、煽動されていると言うことなのだが、当の本人達は一人もそれに気づいていない。 インターネットである程度メディアリテラシーを養った人は、テレビでそういう情報が出た場合、たぶんまずネットでもっとたくさんの情報を集める。一つのソースから出た情報を元に判断することが危険であると言うことが(いろんな意味で)身に染みてわかっているからだ。いくつかの情報を集めて、ある程度自分でも考えてその情報に対して判断を下す。それだけでも、少なくともテレビで報道された一つの情報を元に行動してしまう人に比べて、ずっと煽動されるリスクが減ることは想像に難くない。 テレビのニュースやワイドショーに煽られるがまま「児童虐待をする人は鬼畜!」「飲酒運転する人は犯罪者!」「不二家は企業として失格!」と叫ぶのも、実は本質はほぼ一緒である。 「だって当たり前じゃん!悪いことは悪いんだし!」と言うかも知れないが、こうやって物事を単純化してつるし上げる事は、社会的にあまりいい影響は及ぼさないと私は考えている。単純化された悪をたくさんの人々が大声で糾弾することで、本質的な問題点が隠蔽され、対応がおろそかになっていくデメリットの方が大きいと思う。 そもそも「誰が見たってその通り」という事象を取り上げて人々を煽っていくことこそ大衆煽動の第一歩である。そうやっていわゆる「大きな正義」を取り上げて騒ぐのは、細かい事象を隠蔽するのにもってこいだからだ。さらに、こうやって「誰が見たってメディアが正しい」と思うことを植え付け、メディアを批判する能力や精神を人々は徐々に失っていく。メディアによる洗脳である。 …まだ続く(ぉい!) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
January 27, 2007 12:54:33 PM
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