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テーマ:身近な人権問題(279)
カテゴリ:身近にある人権問題
>つづき ■実態調査などのデータから見えてくることは? 野宿生活者に対しては非常に反感的な市民感情があるので、それに対する客観的な説明として、実態調査データを使って説明させてもらいたい。なお、私は2004年5月に神奈川県が行った「神奈川県ホームレスの就労ニーズに関する実態調査」の調査部会長を務めている。 実態調査を行うと、必ず年齢と性別に非常に偏りがあることが分かる。年齢は50~64歳までが三分の二を占めている。性別は圧倒的に男性だ。前述の調査では、横浜・川崎をのぞく県域の野宿生活者206名から対面式聞き取り調査を行ったが、7名しか女性を確認できなかった。全国調査でも、女性とはっきり認識できたのは3%しかいなかった。現場で野宿生活者と出会っているものとしての感覚では、この数値は極端なきがするが、実際に広い意味での不安定居住ではなく、はっきり野宿と分かる女性は一割程度ではないかと思うので、圧倒的に男性であるということは間違いない。 この数値が何を意味するかということを詳しく掘り下げることは紙面の関係でしないが、興味の有る方は連絡をいただければ、資料提供などをしたいと思うので、ここでは簡単に触れさせてもらう。 単純にいって、年齢と性別に極端な偏りがあるということは怠け者というような個人的な性質問題だけで規定できる問題ではないということはあきらかだ。特に、50~60歳に集中するということから、どうしても仕事の問題とは不可分だ。若くはないので、仕事には就き難い、しかし、高齢者福祉などの既存の社会資源を使える年齢にはなっていない。逆にいえば、仕事と福祉の谷間の世代が野宿しているということが言える。また、性別についても、圧倒的に男性であるから、野宿という現場で再生産があり、野宿生活者が増えているわけではないことが分かる。野宿でない生活から、何らかの事情があり、野宿をはじめざるを得なくなったのである。このことは非野宿者を野宿に送り出すシステムが現在の社会にあることを意味する。 繰り返しになるが、野宿生活者は年齢や性別に偏りがあることから、社会的に生み出されたものであることは明らかである。その社会構造の問題に触れることなく、野宿から自分を追い出して社会に戻ることを無条件によしとする考えはあまりに短●的としかいいようがない。非野宿の社会はそんなにバラ色の社会なのだろうか?私は激しい疑問を持っている。 これは蛇足であるが、野宿生活者などを指差して、「勉強をしないとああいう人になってしまいますよ」という市民がいるという。私自身はこのような現場を目撃したことはないが、それに近い感情を肌身に感じることはある。しかし、このような憎悪にも似た感情を通りがかりの方に持つことはないはずだ。それだけ野宿生活者への偏見は根深いということなのだろうか?また、根深い故に襲撃などの問題があとをたたないということなのだろうか。 >つづく お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007/02/17 03:19:25 PM
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