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Motor & Outdoor Journalist 安藤眞の         逆説的よろず考現学

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Dec 20, 2016
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みなさん、こんにちは。
 高齢運転者の交通事故がなにかと話題になっている昨今ですが、表記のブログを紹介してくれた人がおりました。紹介者曰く「高齢者、高齢者と騒ぎすぎではないか」と。

 で、読んでみたのですが、「だから高齢者の対策は後回しでいい」とか無茶なことを言っているわけでもないし、結論の「『なんとなく危なそう』というイメージではなく、データに基づいて『どんな年代の人に、何をすべきか』を冷静に考えていくことこそが大事」という部分には諸手を挙げて賛同しますので、わざわざ話題に取り上げなくてもいいのかなとも思ったのですが、朝日新聞までこんなこと言いだしたので、念のため指摘をしておくことにしました。

 えーとまず、冒頭に挙げていらしゃるグラフを見ますと、なるほど「高齢ドライバーの事故は20代より少ない」ということに間違いありません。でもこれ「件数」ですから、リスク率で比較するには、分母を統一しなければなりません。それを検証したのが、2番目に出てくるグラフです。これを見ても、高齢ドライバーが突出して多いわけではないということがわかります。

 で、次に見ていただきたいのが、4番目のグラフです。対象を「事故」ではなく「死亡事故」に絞ったものですが、こうすると80代以上の事故率が、16〜19歳のそれと同水準まで跳ね上がって来ます。


 問題はここから。

 このブログを書かれた人は「16〜19歳と80歳以上の運転者は、死亡事故を起こしやすい」と結論づけていますが……

 え、それでいいの(^^;? 事故件数では下位にいた80代が、死亡事故になると跳ね上がってくるという事実から読み取るべきなのは、「高齢者の事故は重大化しやすい」ということではないんでしょうか?

 注意すべき点は、まだあります。まず、最も下位の年齢が16歳から始まっていること。普通自動車免許が取得できるのは18歳ですから、16〜17歳の事故は、原付か自動二輪ということになります。しかもこの統計の対象は「第1当事者になった死亡事故」なので、単独事故で本人が亡くなったケースも含まれているんです(5(2)例外参照)。さらに、ある調査によりますと、原付事故の死亡確率は乗用車の1.7倍、自動二輪のそれは約7倍というデータがあります。これをごちゃ混ぜにして、公正な比較ができるでしょうか?

 で、ちょっと独自に調べて見たのですが、まず警察庁交通局発表による平成27年の事故データ



 右のグラフを見てください。区切りが「80歳以上」ではなく、「80〜84歳」と「85歳以上」になっていますが、少なくともここからは「85歳以上の死亡事故確率は16歳〜19歳のそれを上回る」ということは読み取れます。

 でも僕が問題にしたいのは、そこじゃありません。16歳〜19歳のデータから、2輪車しか乗れない16〜17歳の数字を抜いたらどうなるのか? ということです(全体の統計は「原付以上」なので、18歳〜19歳に限定しても、それ以上の年齢でも「原付や2輪の事故も含まれる」という点では同じです)。

 そこでまず、年齢別の免許保有率分布を当たって見ました。試算には、これの3ページのものを使います。

 16歳〜19歳の免許取得者数は、約58万1千人です。うち、原付か2輪しか乗れないはずの16歳〜17歳の人数は、約7万3千5百人と、全体の12.6%です。ということは、この人たちは、2輪車特有の死亡事故リスクを上乗せしていることになりますね。それは原付で1.7倍、自動2輪で7倍ということですが、正確な配分比率は良くわかりませんので、当てずっぽうで「3倍」として計算してみましょう(統計年によって数字が動くので、絶対的な精度は期待できませんが、大きく外してはいないと思います)。計算は省きますが、16歳〜19歳では14.7人だった10万人あたりの死亡事故件数は、18歳〜19歳に絞れば約9.1となり、80〜84歳を下回る結果になります。棒グラフ上にプロットしても、年齢の推移に対するトレンドに対して、あまり違和感のない位置になりますよね。

 これはかなり大雑把な試算ですから「これが正しい」なんていうつもりはありません。でも、2輪の事故であることが間違いない16〜17歳のリスクを除外しないと、正しい比較にはならない、ということは、間違いなく言えると思います。

 それからもうひとつ、重要欠くべからざる視点があります。すでに触れておりますが、これは単独事故も含めた統計なんです。すなわち、バイクで暴走して自爆してひとりが亡くなっても「1件」、アクセルとブレーキを踏み間違えて10人跳ね飛ばし、3人が亡くなっても「1件」。被害者の数とか事故の重大性とかは、まったく考慮に入っていないんです。しかも、前者は一部の人が大好きな「自己責任」ですが、後者は遺族にとっては「殺人」と同じです。これ、同じ「1件」として扱ってもいいのでしょうか?

 本来ならば、ここから単独事故を除外し、被害死傷者数を加害事故件数で割った数字を年齢別に出すべきであり、そうしなければ、真のリスクは見えてこないのではないでしょうか。

 さらに言えば、分母は「免許人口10万人あたり」ではなく、「走行1kmあたり(または1時間あたり)」にしないと、現実的なリスクは現れて来ません(飛行機なんか「時間あたり」ですよね)。「免許人口あたり」では、年間1万km乗って1件の事故を起こす人も、2000kmぐらいしか乗らないのに1件の事故を起こす人も「ひとりあたり1件/1年」です。しかし、運転機会という要素を入れれば、後者は5倍のリスクがあることになりますよね。

 では、どうしてそういう統計にしないのかといえば、個人の走行距離(または時間)が把握できないからなんですね。

 百歩譲って、「80代以上の事故リスクは20代より低い」としても、「高齢者から免許を取り上げるなら、もっとリスクの高い若年層からも取り上げるべきだ」という話にはなりません。これから先、50年以上運転する可能性のある若者には、安全に運転するための知識やスキルを取得する機会を与えるべきですし、高齢者なら「重大事故を起こす前に、そろそろクルマを降りませんか?」と促す(代替移動手段を用意するのは大前提です)というように、年齢に合った対策を施すべきであるのは言うまでもありません。問題は、加齢による機能低下は個人差が非常に大きいため、年齢で一律に分けることはできない、ということでしょう(とか書いていたら、毎日新聞の世論調査で「免許に定年制を導入」に賛成という人が19%というニュースが入って来ました(^^;)。

 というわけで、「データは単に数値を見るだけでなく、その背景に潜むものまできちんと考察しないと、真実に近づくことはできない」、というお話でした。






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Last updated  Dec 20, 2016 07:26:07 PM
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