|
テーマ:詩&物語の或る風景(1047)
カテゴリ:夢物語
![]() わたしは、小さな家にいた。 借家で、築何十年だろう。 玄関は引き戸で、入ったところに小さな土間があり、たたきをあがると4畳半の和室。 正面に、一間半もの押入れがある。 玄関から見て左手に、続き間で6畳の和室がある。 和室の左手奥は、カーテンのかかった掃きだし窓だ。 台所やお手洗いは、2間続きの四畳半の奥にあるのだと思われた。 小さな家、たぶん大きな家をいくつかにわけて借家にしている、長屋のようだと見えた。 小さいわりに、しっかり作られた部分もあるからだ。 情景を、リアルにはっきりと、覚えている。不思議な夢だ。 わたしは、四畳半の玄関の近くの、出窓になっている腰高窓にもたれかけて、小さな女の子と会話していた。女の子は8~9歳くらい。つややかな薄い髪を丸いオカッパ頭にしている。 どこにでもいるような子ども。 女の子の弟が、足元に丸くなって、ミニカーか何かで遊んでいる。 もう少し小さくて、5~6歳くらいだ。 6畳の部屋と4畳半の部屋にまたがって、こたつがおいてあり、 モサモサした30代の男たちが囲み、マージャンをしていた。 部屋はタバコの煙でかすんでいた。 オトコタチの和やかではあるが大きな声が、小さな家に響いて、柱や窓に共鳴する。 お酒もはいっているんだろう。 女の子は、わたしのスカートをつかみ、なにやら話をしている。 自分の話を聞いてもらえれば安心するのだということを、わたしは知っているので、 内容よりも、テキトウに【聞く】ことに意識を向ける。 女の子が満足そうなので、わたしも満足している。 ふと、出窓の向こうが薄暗くなっていることに気がつく。 みんな晩御飯はどうするんだろう。こどもたちは。 【今日は、お正月だっていうのに】 と、思い至って、この家の荒廃ぶりに気がつく。 父親は、正月だからと【タクシー運転手仲間(そういうことらしい)】と、マージャン。 こどもたちは、正月らしいことが何一つ味わうことができていない。 【わたしが踏み入っていいのはどこまでなのか】 【結婚しているわけでもないのに(付き合っているヒトらしい)】 もう、こんな時間だ。 こどもたちもだが、おとなたちも不憫だった。 お正月の晩に、何を食べようと考えているのだろう。 この時間から…わたしに、お正月らしい何かを用意することもできない。 【カレーを食べよっか】 と、わたしは小さく、女の子に声をかけた。 きょとんとしている。 自分が【食べたい】と、何かを欲するコトバをだしたことがない様子だ。 父親であるオトコに、声をかける。少し大きな声で。 【カレーを食べよっか】 わたしも、おどおどしている。 この家で、わたしが、何かをしようと提案していいのだろうか。 気を取り直して、もう一度声をかける。 【みんなで食べられるし、美味しいし、ね。子どもたちも好きだし。】 そう言うと、 オトコは、トモダチにどうするか声をかけだした。 案の定、みな、とくに食事のあてがあるわけじゃないみたいだ。 女の子が喜ぶと思っていたが、案外静かだ。 どうしたのか、と様子をチラッとうかがった。 固く、うつむいている。目はうつろだ。 オトコが【あぁ、この間、ウサギが死んだから】と向こうの部屋から言った。 【うさぎ?】わたしは、【玄関の土間と床下で、女の子がウサギを飼っていたことを思い出した。】 【死んじゃったの。。。】そう声をかけると、女の子は跳ねたように勢いよく押入れに向かって駆けてゆき、固い、B5サイズの茶封筒を持ってきた。 茶封筒の折りたたんだ口を開くと、自分の手のひらに、中身をさらさらと出した。 灰色の小石のようだった。 【ウサギ、死んだの】まだ、ショックが強い、固い声だった。 灰色の小石は、ウサギの骨だった。 うさぎの死のショックで、 【肉を食べることが、できなくなっているのだろうか。】 【料理はどうしたらいいのだろう】 女の子を慰めるより先に、そんなことが思い浮かんだ。 もとより、慰めると言っても、どうやっていいのかわからない。 オトコのトモダチが、大きく咳払いをした。 わたしは、まだ、動けないままだった。 Blog ![]() ![]() 写真 ![]() ![]() お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[夢物語] カテゴリの最新記事
|