カテゴリ:Day
その美術館は公園の中にある。
冬の公園は芝も枯れ木々の葉も落ち、 池で遊ぶ冬鳥の他は全て眠りについていた。 そんな時間の止まった公園に足を踏み入れ、 美術館とは反対の方向に足を向ける。 ただの気まぐれだろう。 暖かくあらゆる風景、高貴な芸術に満ちた空間よりも 全てが止まった空間の方がふさわしいと思ったわけではない。 音もない道をただ歩く。 と、ふいに強い花の香りが鼻腔に届く。 その匂いに導かれて進むと、 鑞梅の木が黄色い花を咲かせていた。 鑞梅の学名に含まれるChimonanthusは ギリシア語で冬の花。 冬の季節に冬の花。 だが、この匂いの中だけは、 一つ先の季節。 この匂いに誘われて、 森の時が動き出すのは、 もうすぐ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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