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駆け出し記者の一期一会

2008年03月30日
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カテゴリ:日常
いつ雨が降ってもおかしくない曇り空の週末、次の雨には散りそうな桜が急に惜しくなる。
日頃、季節の移ろいにさほど関心のない夫にも桜の花を愛でる気持ちはあるようで、
まだそんな情緒に無頓着な息子たちを放っといて、二人で花見に出かけた。

人の勧めで、目黒線西小山駅のガード下から目黒の碑文谷へと向かう桜並木を辿ってみる。
道路の中央部分が一段高い土盛りの緑道になっていて満開の桜が見事だった。
へーえ。こんな所が近所にあったのか。
越してきてかれこれ5年になろうというのに知らなかったとは。
用事のある目的地への決まったルートでしか行動していないんだな。。

道沿いの案内板に由来の説明がある。
「目黒区南部を流れ、やがて東京湾に注ぐ立会川。かつてこの川には小魚が群れ、
 両岸には青々とした水田が広がって、のどかな農村風景が見られた。
 しかし、都市化と共に川も姿を変え、昭和39年暗渠に。
 その後、散策が楽しめる緑道に生まれ変わった。碑文谷八幡宮までその長さは1キロほど。
 春には両側の桜並木が見事な桜のトンネルをつくり、花見客で賑わう。
 また緑道の各所には雪見橋、月見橋など、川の流れとともに姿を消した石の親柱が再現され、
 昔の面影をかすかに偲ばせている」

都内のもっとメジャーな桜の名所に比べると穴場なのか、
そぞろ歩く人の数もさほど多くなく、桜の風情が損なわれなくてよい。
無論、シートを広げて宴会に興じるほどの幅もない細い緑道であり、
ベンチに腰掛けてつつましやかに弁当を食べるシニア夫婦を一組見ただけだった。

桜の花の色はピンクと言うには淡すぎ、かと言って白くもなし。
晴れた日には何となく濁って見えるのがあまり好きでないのだが、
こういう曇り空だと、桜も周囲の景色も古びた写真のような色合いになり、
どこか懐かしいような情緒がある。
「すべては夢まぼろしでした」と言っているように。

こんなささやかな散歩ではあっても、毎年何となく花見に出かけ、
今年の桜が咲いている有様をこの目で確かめようとするなんて、
やっぱり日本人なんだなあ…と思う。

このあいだ、東山魁夷展の紹介文を書いていて、
アメリカ人エディターの直しが妙に気に障った。

例の有名な円山公園のしだれ桜の上に月が懸かっている『花明かり』についての
リリースの説明はこうである。
「円山公園の満開の枝垂れ桜と満月が向かいあうその一期一会の瞬間に、東山はめぐり合いました。桜は月の光をうけてますます幽玄に輝き、美の絶頂をきわめています。夜桜にかかる月は、古来、愛されてきた主題です。構図や色彩の特徴は紛れもなく東山自身のものでありながら、この作品がとりわけ多くの人々の記憶に刻まれているのは、まさにそうした日本美の典型と強く結びついているからといえるでしょう」

こんなに長々とこの通り和訳するわけでは決してないけれど、確か、
「このほか、『花明かり』に見られるように、彼は京都において、
 日本人の心の内にある風景をとらえようとした」
というような内容をどうにか英語にしたものを提出したのだった。

すると、彼が手を加えた原稿では
 “Other works depicting Kyoto tackle typical Japanese icons
  such as "Moonlit Cherry Blossoms" (1968).”
となっていた。
「京都を描いた他の作品は『月明かりの桜の花(←花明かりの英語タイトル)』(1968)のような典型的な日本の具像に取り組んでいる」
という感じ。typical Japanese icons!?
なによ、そのあっさりした言い方! とっさにムカついたのである。
「記憶に刻まれている」桜の姿が汚されたような気がして。

…しかし、冷静になってみると、その言葉は「外国人から見た日本の姿」を伝えるものだった。
満開の桜を見れば、外国人だって「ビューティフル!」と思うには違いない。
けれど、桜に結びついた諸々の情緒のような日本人の特別な思い入れなどは、
外国人には理解不能な一種奇異な感覚なのかもしれない。
それをいちばん短い言葉でまとめると「ティピカル・ジャパニーズ・アイコン」になるのだろう。
なので、今回はエディターに文句を言わず、黙って修正に従った次第である。

ささやかな花見を終えて帰宅した頃から、雨が降り出した。
気温も下がり、「花冷え」と呼ばれる肌寒さである。
この雨でだいぶ散ってしまうのであろうか。

雨が降っても風が吹いてもすぐに散ってしまうような
ある意味、根性なしの桜の花は、
『星の王子さま』に出てくるバラの花みたいに
「あたくし、かよわいんですの」と言っているようで、
時折反発すら感じて「しっかりしろ!」と言いたくなるけれど、
さりとて、雨ニモ負ケズ風ニモ負ケズ、決シテ散ラズ
しぶとく枝にしがみついていたりしたら、さぞや鬱陶しいんだろうなあ…。

幸か不幸か、そんなことはあるはずもなく、
「しづごころなく花の散るらん」だからこそ、こんなにも惜しまれ、
ほんの一瞬の絶頂の美をせめて心の中にとどめようと思うのだ。







最終更新日  2008年04月01日 21時27分08秒
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