ご要望がありましたので、久々に統計から見る中国茶シリーズをば。
・・・とはいえ、マニアックすぎても面白くありません。
今年は、池上彰ばりにわかりやすく解説できるよう心がけたいと思います。
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今回は生産統計のご紹介。
今、中国茶ってどのくらいの量作られているの?
を簡単に見ていきます。
あわせて現地の業界動向が、日本のお茶好きにどう影響を与えそうかについても考えていきたいと思います。
<増え続ける生産量>
中国のお茶の生産量は、年々増えてきています。
いわゆる改革開放路線をとるようになった1978年。
このときは26.8万トンほどでしたが、2006年には102.8万トンと100万トンを超え、2008年には125.8万トンに達しました。
30年間で約5倍というめざましい伸びを示しており、お茶の生産量世界No.1の地位を固めています。
これを中国の経済規模の成長と比較してみましょう。
茶葉の生産量推移とGDPの関係をまとめてみました。
棒グラフが茶葉の生産量(左の目盛り)、折れ線グラフが国内総生産(GDP)の推移です。
グラフの傾きに注目してみると、茶葉の生産が増えるスピード以上に、経済成長していることが見てとれます。
中国のGDPは、1978年には3645.2億元だったものが、2008年には300670億元にまで達しており、約9倍の成長を見せています。
そんな中国経済全体の成長ぶりと比べてしまうと、茶葉の生産量の伸びは、まだ緩やかに感じてしまうのです。
<中国の国内消費が伸びそう>
中国では政府主導で、”茶為国飲”というキャッチフレーズで、お茶を飲む人を増やそうという動きを進めています。
日本語に訳すと
「お茶を国民的な飲料に!」
というところですかね。
実は、中国で日常的にお茶を飲む人というのは、全人口比で見ると思ったほど多くありません。
茶産地の人だったり、よほどの上流階級でもない限り、普段は白湯を飲んでいます。
文革もありましたし、お茶を飲むという習慣(余裕)がなかったんですね。
ところが、経済が成長し、1人あたりの国民所得が一定水準を超えて生活にゆとりが出てくると、急激に茶などの嗜好性飲料の消費が伸びるという現象があります(例:1970年代以降の台湾)。
今、世界中の企業から注目されている消費意欲旺盛な中国の中流層の人々。
この人たちに、スターバックスコーヒーではなく、お茶を飲ませることができたら、莫大な国内マーケットができることになります。
こういう成長ストーリーが見えていることもあり、中国の茶業界では新興企業が続々と台頭してきています。
たとえば、上海万博での”世博十大名茶”などの取り組みは、こうした企業が急激に力をつけてきていることを示しています(1社あたりの出展料は150万元・約2250万円!だったのだとか)
これだけの金額を負担できるのは、民間の茶葉会社が力をつけてきている証拠です。
政府としても、農民の暮らしを楽にしないと国(=党)が持たないという状況ですから、農家の所得拡大につながるであろう、お茶の消費拡大には、かなり力を入れて取り組むのではないかと思います。
国策でガツンとやり始めると、かの国は強いですからね。。。
<日本のお茶好きの視点で見ると・・・>
と、このような中国の情勢を見ていると、日本のお茶好きにも影響が及んできそうです。
なによりも、
良質なお茶の値段は上がる一方になりそう
です。
”中国産=安い”の方程式は、お茶に関しては通用しなくなると思われます。
茶農家の所得が都市住民の所得に近づいてくるまで、この流れは止まりそうにありません。
まあ、これは仕方がないことだと思います。
農家の方が豊かになるのを止めることはできませんし、労力を考えたら、今までが安すぎたんです。
#もっとも、かの国は”ピンからキリまで”の幅が恐ろしく広いですから、安全性と品質を問わなければ、今までの値段でも入手はできるでしょう。しかし、私はそんなお茶を断じて飲みたくありませんw
・・・と理解を示せるとはいえ、デフレ経済下の日本に住むお茶好きにとって、値上がりはかなり痛い話です。
ブランドに拘らず、お手頃で良質なお茶を見つける(たとえば量産品種や機械摘み、機械製茶のお茶を選ぶ)というのも一つの手ですが、それとて限界があります。
やはり、最大の防衛策は、
良いお茶は今のうちに買って飲んでおく
ことでしょうね(^^;)
高いなら高いなりの楽しみ方を考えりゃいいんですが。