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朝吹龍一朗の目・眼・芽

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2009.09.10
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カテゴリ:女の不思議男の謎
3態      女の不思議男の謎
                       朝吹龍一朗

 190センチはありそうなブロンドでとび色の目をした男が、ケータイを片手にものすごい形相で私鉄のターミナル駅からJRの駅のほうに乗り換えるコンコースをを風切音が聞こえるくらいの速さで歩いてくる。手にはむき出しで使い込んだテニスラケットを持っている。いわば「抜き身」状態である。

 同じ男を再び見かけた。やはり同じ私鉄の車内で、今度はむき出しのマンガ本「コナン」のシリーズの、しかも古本を持って、ほとんど顔の高さにある吊り輪を握っていた。外国人のようだが、日本語も読めるし、日本文化もそれなりに理解できる様子と知れた。

 3度目は、身長差40センチの可愛い女の子を連れて、その沿線の有名な公園を散歩しているのとすれ違った。女の子の手は肘が曲がるくらい上がっている。男は穏やかな顔をして、彼女への心遣いなのか歩幅も小さくしてゆっくり歩いている。

 ほんの1週間の間である。朝吹は密かにジョン・スミスと名付けたその男の印象が忘れられなかったが、その1週間のあと、とんと見かけなくなってしまった。


 妙な縁もあるもので、それから3年も経って、ジョン・スミス氏、本名はグレゴリー・フィッツジェラルド・キンバリー氏が朝吹のオフィスを訪ねて来た。もちろん朝吹が3年前に1週間に3度も見かけたことなど知る由もない。朝吹のほうは一目であの彼だとわかったが。

 あるイギリス系エネルギー会社の日本支社長であるキンバリー氏は、朝吹の勤める会社に今流行りの「CO2排出権」のセールスに来たのだった。彼はエネルギーとCO2と地球温暖化と、そして排出権なるものについて、水が氷、水、水蒸気に変わることを例に挙げながら、極めて論理的にかつわかりやすく説明した。文科系出身の朝吹にも十分理解できた。

 なるほど、「水の3態」ですか。3年前のすれ違いをキンバリー氏に話すと、破顔一笑、
「それは私の『3態』でしたね。最初ご覧になった私は、シェリー、いや、妻の桜子のことです、朝吹さんが公園で見かけた女性です、が怪我をしたと聞いて仲間とのテニスを切り上げて病院に向かう途中でしょう。無我夢中で意味もなくラケットを持っていて、シェリーに笑われたのを覚えていますから。

 その次はシェリーの引越しの荷造りを手伝いに行った帰りでしょう。シェリーの本棚にあったマンガを借りていきました。

 最後は引越しの前日です。準備も終わってがらんとした部屋にいるのも淋しいというので、近くの公園へでかけたのです。

 最初が固体、氷の私でしたね。そして次が液体、水の状態。最後が気体、シェリーを妻に迎える約束も整い、水蒸気になって天にでも昇るような気持ちの時でした」


 以上、コナンもかなわない3年越しの謎解きだった。


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Last updated  2009.09.10 21:17:33
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