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2004年10月02日
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 その日は、雨が降っていた。私は広場の大時計の前で傘を差し、彼を待っていた。時計を確認すると、約束の時間の午後3時は、もう30分も過ぎていた。

 私は、人を待つことには慣れていた。雨が降っていたりすれば、予定通りにいかないこともある。待つことを苦には思わなかった。普段は多くの待ち合わせの人がいるその広場も、今日は人影がまばらだった。私はその中に彼の姿が無いことを確認しながら、いろいろなことに思いをはせていた。
 その時、私の携帯電話が鳴った。最初は彼からの電話かと思ったが、ディスプレイの表示は知らない電話番号だった。私は一瞬訝しげに思いながら、通話ボタンを押した。
「もしもし。」
「○○病院の者ですが、山下加奈子さんですか?」
 電話口の相手は、この辺りで一番大きな病院の名前を告げ、そして私の名前を確認した。その瞬間、私の中にはなんとも言えない不安が膨れ上がった。彼の身に何かが起こったということを、私は直感的に感じ取ったのだ。
「はい。山下ですが、どうしましたか?」
 心の緊張とは裏腹に、私は冷静に受け答えをしていた。警鐘を鳴らすように徐々に高ぶりはじめた感情が、未だ脳までは届いていないようだった。感情と切り離されたところで、ただ機械的に言葉を発しているかのような口が、自分のものではない気がした。冷静に聞いてください、と前置きして話し始めた電話口の人間の方が慌てている感じさえした。

 私の直感は、見事に当たっていた。私はすぐさま病院へと向かった。





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最終更新日  2004年10月02日 14時33分36秒
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