038942 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
2004年10月07日
XML
 彼女は、僕が思っていたよりも明るい雰囲気の人だった。
 広場のベンチに座っている彼女を見て、もっと暗いイメージを想像していたので、楽しそうに笑う彼女が意外だった。僕は、そんな彼女に好印象を持った。

「僕は、大野友宏と言います。お察しの通り、あそこの雑貨店でバイトしています。」
「私は、山下加奈子。ご存知の通り、日曜日はここで待ち合わせをしています。」

 ご存知の通り、そう言って彼女は笑った。

「確かに、知っています。毎週ここに居ること。・・・やっぱり待ち合わせをしてるんですね・・・」
「うん。待ち合わせ。・・でも、待ち人は来ない。・・なんだか気味悪いわよね。毎週日曜日にただ待ってるだけの女って。」

 彼女は自嘲のニュアンスをこめてそんなことを言った。

 やはり、遠くから眺めていた時から思っていたが、彼女は大きな苦しみを抱えていた。明るい口調の中にも、彼女の心の奥に沈んでいる暗い塊の一片を、僕は垣間見たような気がした。

「いや、気味悪いだなんて全然思わないっすよ!とっても綺麗な人がそうやって毎週日曜日に現れるって、むしろミステリアスで魅力的って言うか・・。」

 僕は彼女の言葉に対して精一杯のフォローをした。そんな僕を見て、また彼女はクスクスと笑い出した。

「・・今度はなにがおかしいんですか?」
「なんか、頑張ってフォローしてくれてるのがおかしくて。・・いや、馬鹿にしてるとかじゃないのよ。なんか、私がミステリアスで魅力的って・・やっぱりおかしい・・。でも、慰めでも、そう言ってもらえると嬉しい。ありがとう。」

 彼女はそう言ってまた笑顔になったので、僕は少しだけ安心した。


 話して見ると、彼女はより魅力的だった。明るくて、楽しくて、よく笑って・・だけど彼女は、心の奥に大きな苦しみを抱えている。
 僕は、彼女に惹かれるのと同時に、彼女の中の苦しみとどう接していいのか困惑していた。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2004年10月07日 14時01分40秒
コメント(0) | コメントを書く
[連続小説1「マチビト」] カテゴリの最新記事


PR

プロフィール

かめ@ゴミスティピョン

かめ@ゴミスティピョン

フリーページ

コメント新着

 雪村ふう@ Re:書きたいことを書くのって、難しい。(03/13) 就職決まったんですね。 おめでとうござ…
 かめ@ゴミスティピョン@ Re:どうでもいいけど。(02/10) くみさん >アイスティーはコップじゃな…
 くみ@ どうでもいいけど。 アイスティーはコップじゃなくて、グラス…
 かめ@ゴミスティピョン@ Re:いい話じゃないですかー(02/15) ぼっつぇ流星号さん 読んでくれてありが…
 ぼっつぇ流星号@ いい話じゃないですかー こういうほのぼの幸せなのっていいと思い…

日記/記事の投稿

お気に入りブログ

眠れない夜のおつまみ Dionaeaさん

キーワードサーチ

▼キーワード検索


© Rakuten Group, Inc.