「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」第6回
「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」第6回 (飛鳥京香・山田企画事務所・1975年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 第6回 人々の悲しみの涙を集めた涙岩が、粉粉になる。その涙岩のかけら、「なみだ石」が、緑色、瑠璃色の光を放ちながら、漆黒の闇の中へ、消えていくはずなのだ。今日がその日だ。 「君も芝居がうまいね、日待クン。いや本当の名前は何というのかな」ふっと滝は鼻で笑いながらいう。しみじみと、僕を馬鹿にしている。でも僕は理解できないでいる。ゆっくりと、滝が口を開いた。「それじゃな。日待クンという名のコードネームをもつ男よ。「なみだ石」のところまで案内してもらおうか」「わからないんのだ。覚えていないのだ」僕はあわてて、ごまかそうとする。「でまかせをいうな。さっき、村にたどりつく前に、この山腹の方で光がちらちらと見えていた。あのあたりが涙岩の位置じゃないのかな、なあ日待クンよ」「おおっと。そうそう。忘れるところだったな。これが必要だろうな、これからはな」 滝は短針銃(ニードルガン)をジャケットのポケットからと取り出し、それを僕に向けた。短針銃(ニードルガン)は、超小型の針を限りなくばら撒く対人殺傷兵器だ。が、僕はなぜ、それを知っているのか?自分の知識におののく。「滝、よせ、あぷないじゃないか。短針銃を、、」「おおつと。なぜ、危ないとわかる?短針銃とわかる?ふふん」「僕は、、一体、誰だ、、、」「もうよせ、日待クン,もう、すでにネタはあがっているぞ」世の中がまるで180度回転したみたいだ。僕はあきらめ、滝を後に、「涙岩」にむかい歩き始めた。もちろん、滝は右手にその究極の殺人兵器、短針銃を構え、用心深くぴったりと僕の背中に照準あわせているのだ。涙岩へは小一時間ほどかかった。悪路だった。村人以外は、知らないよりな迷路のような道だ。滝は先程、事故に出会ったばかりと思えないようなタフさでついてきた。この頑丈さは。何者なのだ。それと同じように、僕はいったい誰なのだ。何者なのだ。「まて、日待クン」滝は、道の徒切れていて、僕を止める。山道がおわり丘が盛り上がり、そこからは草原の盆地になっていて、そこに人の気配がした、樹木のそばに隠れる。涙岩のまわりには二百人ほどの人が集まっていた。村人以外の人が、かなりいるようだ。あきらかに、村の人口よりは多い。気づかれないように、そっと草陰から眺める。涙岩は緑色からルリ色へ、色々な透き通った色眼光を変え輝いていた。 人々の顔がはっきり見え始めた時、滝がいった。「ようし、日待クン、ここまでだ。いい眺めじゃないか」 それから、僕達の出現に気づいていない人々に、隠れていた岡の上から姿を見せ見下ろし大声で叫んだ。「おい、君達、おれは「地球防衛機構」のものだ。代表者をだしたまえ」 どこからともなく突然、爆音がきこえた。夜空に「ガン=シップ」と呼ばれる攻撃用ヘリコプターが5機、飛来してくる。「我々には、君たちと話し合いをする用意がある。しかし我々に逆らえば、、」 「ガン=シップ」ヘリ1機から1本の空対地ミサイルが発射され、草原近くの森の木々が打ち倒された。その人間のならから、一人の女が、前にでてきた。何てことだ。彼女だった。(続く)●090921改訂作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」