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カテゴリ:ウオーター・ナイツー聖なる水の僕
ウオーター・ナイツー聖なる水の僕(しもべ)■第8回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 漫画の描き方manga_training動画 聖水紀第8回 「本当に知らないようだな」 男は静かに言った。 「君はウェーゲナー・タンツ宇宙連邦軍大佐だ。聖水が地球防衛圏を突破するのに手をかした男だ。 君のために地球は聖水に汚染されたのだ」 ロイドの目には憎しみの炎が燃えている。 ロイドの言葉はシマの心に深々とつき刺さる。 俺がウェーゲナー・タンツだと。 地球最大の裏切り者。 急に過去の記憶が戻ってきて、タンツの心と胸を一杯にした。 犯罪者。 震えがタンツの体を襲った。 たっていられない。両手両ひざをついた。 タンツの体は小刻みにふるえる。汗が体じゅうから吹き出る。 ロイドがひざまずき、タンツに被いかぶさるように、タンツの顔をのぞきこむ。 「タンツ宇宙連邦軍大佐。君に教えて欲しい。宇宙連邦軍の秘密要塞の位置を。君しか生き残っていない。 宇宙連邦軍で、君しかね」 タンツの脳裏には、連邦軍の潰滅シーンが想起された。 「ねえ、タンツ、お願い。教えて。覚えているはずよ。宇宙要塞ウェガの位置と要塞侵入のパスワードを」 「宇宙要塞ウェガが我々の切り札なんだ」 タンツは無言で震え続ける。 「だめよ。ロイド、タンツは堅く自分の殻に閉じこもっている。病院でも、自分がタンツだと、 結局最後まで認めなかったというわ。今でもショック状態よ。我々の機械で治療しましょう」 「ベラ、時間が惜しい気がする。こんな奴に時間を与えるのがねえ」 あたりが急に騒がしくなった。ロイドは建物から飛び出る。男が走ってくる。 「どうした、何があったのだ」「大変です、チーフ」 息を切らせてその男は叫ぶ。雨がその男の顔といわず、頭といわず激しく降り注ぐ。 「騎士団員です、騎士団員がここに」 「なぜ、ここがわかったのだ」 ロイドの手の中で男は崩れる。 「聖水がかかっていたのか」 ロイドの方へ、雨足のけぶる中、また誰かがちかずいてくる。 「誰だ。ハーマンか」ロイドは仲間の名前を呼ぶ。 「残念ながら、ハーマンではありません」やさしい声がかえってくる。 「誰だ、きさま」 ロイドはいぶかって相手をみようとした。 ぬっと新手の男が登場する。大音声で名乗りをあげる。 「初めて、お目にかかります。聖水騎士団員、レオン=フガンといいます。以後、お見知りおきを。 歌姫ベラ、さらにこぎ人シマをいただきにまいりました。おとなしく渡していただきましょう。 もし、だめとあらば、この私の聖水剣の舞いをご覧にいれましょう」 「きさま。ひとりでここへ」 「そうです。失礼にあたらねばよろしいのですが」 「いい度胸だ。が、どうしてここが、」 「職業上の秘密ですといいたいところです。、まあ、サービスしましょう。 聖水が彼女にかかったのですよ。その聖水がこの場所を教えてくれたのです」 「あの少量の聖水が」 「そうです。ああ、それについでに申しあげておきましょう。その聖水は私が先刻、 研究所からいただきました。私に所有権はありますものですからね」 「聖水を返してもらおう」 「わからない人だなあ。私たちに所有権はあるといったでしょう。それより、 ベラとシマを渡してください。あなたがたレインツリーを滅ぼすのは時間の問題なのですよ」 フガンはあたまりまえのように言う。 「フガンとやら、我々が簡単にベラとシマを返すとおもったか。 この基地で、きさまから聖水を奪い取ってくれる」 「お手並み拝見しましょう」 フガンはニヤリと笑う。聖水剣を引き抜いていた。 建物からベラが飛びだしてきた。 「ロイド、無謀よ。彼は聖水剣をもっているのよ」 「これはレディ、またお目にかかりましたね。聖水騎士団レオン=フガン。 聖水の命により、あなたを貰い受けにまいりました。すぐさま、聖水のみもとに」 フガンはベラの方に手をさしだしていた。 「笑わせてくれるわね。フガン」ベラはフガンの手を打ちすえる。 「私のお願いを受け取っていただけない。寂しい限りです。 わかりました。それでは力ずくで、あなたをさらつていきましょう」 「フガン、いい度胸だ、まわりを見ろ」 ロイドが叫んでいた。 フガンのまわりをレインツリーのメンバーがとりかんでいた。 「これは、これは怖そうなおにいさんがただ」 「フガン、へらず口をたたくのもこれまでだ。我々の包囲陣、やぶれるか」 「何」フガンは聖水剣をむけた。が、聖水が彼らにとどかない。 「こ, これは」 「フガン、我々が何故、このような多雨地帯にいるのか、わかるか」 「さては」 「きさまの想像どうりだ」 水にたいして水を使う。地球の水がレインツリーの呪術師の念力によりバリアーとなっている。 分がわるいとフガンは判断する。 彼は臨機応変フガンは一瞬飛び上がり、ベラの真後ろに着地した。 「さてさて、レインツリーの皆さん、今日はこれで幕にしておきましょう。変に手だしをなさると、このお嬢さんが傷つきますよ。これでも私は諦めのいいほうなのです」 「皆、構わないで、このフガンをやっつけてよ」 「レディ、そう騒がれてはこまります。あなたは諦めの悪い方ですね」 フガンはベラに当て身をあて、気を失わせる。 「フガン、きさま」ロイドの顔は激怒の色。 「皆さん、お静かに、彼女が目をさまします」 フガンはベラを担ぎあげ、走り去る。上空から飛翔機が降りて来る。 「ちょうど、いい時間です」 「では皆さん、またお目にかかりましょう。あ、それから、シマによろしく」 飛翔機は飛び上がっていった。 ■聖水紀■(1990年作品) (続く) 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 漫画の描き方manga_training動画 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2011.12.04 22:52:38
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