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2020年03月02日
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カテゴリ:音楽メモ
波多野睦美さんのコンサート翌日はヤマノミュージックサロン新宿で行われたセミナーに参加しました。
今井顕先生はウィーン国立音楽大学で教鞭を執られた後、今は国立音楽大学大学院の教授をされています。

テーマは『ベートーヴェンらしさとは? 作曲家が楽譜に託した心情を解き明かす』
導入は、"ハイリゲンシュタットの遺書"のファクシミリ。1802年10月6日、ウィーンではもう冬支度の始まるこの時期に書かれた「ハイリゲンシュタットの遺書」。"遺書"と呼ばれていますが、実際には難聴を受け入れて創作活動を続けるぞ、という意思表明の書付だとのこと。10月10日に加筆されている部分の最後はスペースがなくなってどんどん字が小さくなってました。それは意思が弱まっていったことの現れなのか、それとも・・・。

因みに、ウィーンへ行ったときに訪れたベートーヴェンハウスでハイリゲンシュタットの遺書の実物を見ました。日本語訳も用意されていて、その訳は今井先生のものでした。

最初の譜例は「月光ソナタ」。
このソナタの自筆譜の1ページ目と最終ページは失われてしまったそうです。
ずっと疑問に思っていた曲頭の指示の謎が解明されました!
それは
Senza Sordino。

Senza=〜なしで
Sordino=弱音器

なのですが、楽譜下の註釈には
with pedal
と書いてある。”弱音器”どこへ行ったの?と思ってたわけです。
ベートーヴェンの時代のピアノにはまだ足ペダルは一般的でなく、膝で押し上げるものが主流だったそう。このSordinoは"弱音器" ではなく、今で言うダンパーのことなんだそうです。

(音の響きを止める)ダンパーなしで=ダンパーが常に上がった状態=常にペダルを踏んで
という意味となると!

これが分かっただけでも、出かけた甲斐がありました。

更に、初稿では3小節目からかかっているスラーが、日本の出版社のものでは取り除かれている、或いは本来書かれていない1小節目からスラーが付いている、など作曲家の意図を汲むことなしに勝手に書き換えられて来た事実を知りました。

これも、ベートーヴェンはアーテュキレーションとしてスラーを書いていた、つまり音をつなげて演奏することを意味する現代とは違っていたことが原因と知りました。

お話はモーツァルトの父、レオポルトの『ヴァイオリン奏法』(1756年)へと。
レオポルトの定義
その1:強拍をはっきりと区別・・・表現のためのアクセントは通常強拍に付けられる。例えば4分の4拍子での1拍目と3拍目のように。
その2:拍は音楽の魂
その3:スラー冒頭の音はいくぶん強めに

なるほど。
しかしながら、この定義をひっくり返す人が後に現れた。
それがフーゴー・リーマン(1849〜1919)。ライブツィヒ大学の教授だったリーマンは、「古典時代からの伝承は間違っている」としてバッハやベートーヴェンの楽譜を大幅に勝手に加筆して出版。
それも、書き直した方がよい演奏効果が出ると信じていたからなのでしょうが、それが日本に入ってそのまま出版されたそうで、わたくしたちが幼いころ習ったソナチネやソナタはベートーヴェンが書いたものとはほど遠いものだったという、これまた新事実。

例えばベートーヴェンの「やさしいソナタ 作品49-1」の第2楽章。
日本の出版社のものは左手にスラーが付いていました。はい、確かにレガートで弾くように習いました。
でも原典版はスラーがついていない。
この楽章は七重奏曲作品20(クラリネット、ファゴット、ホルン、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスの編成)にも転用されていて、伴奏はチェロが音を切って演奏して楽しげな雰囲気を出しています。レガートで弾いては、全く違う雰囲気になってしまうのです。
因みにピアノ三重奏曲第8番 作品38にも転用しているほど、このメロディーを気に入っていたようです。

ベートーヴェンの時代には家庭で楽しむために交響曲のピアノ連弾版が多く出版されましたが、だいたいスラーが書き変えられていることも長年謎でした。
オーケストラスコアでは楽器によって記譜法が違いますが(例えば弦楽器の場合、スラーが弓順も示す)、それにしても書き換える必要性がないスラーが悉くそうなっているのはやはりリーマンの影響なのでしょうか。

モーツァルト交響曲40番の冒頭。赤がオーケストラスコアのヴァイオリンパートのスラー。最初の3つだけ書き込みました。


楽譜を読み解くためのためになるセミナーでした。





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最終更新日  2020年03月03日 11時40分53秒
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