編集長からの電話
部屋に戻った私は、旦那と共通の友人へ電話を入れました。同業者で、こんな事態を話せる親しい友人は、そんなにいません。まっ先に思い付いたのは、仕事を手伝ってくれるIさん、同業のKさん。ところが、その日に限って携帯が繋がりません。自宅に電話をしても、留守電になっています。漫画家の一斉摘発が行われて、みんな連行されたんだ!良く分らない思考の飛躍で、私は更にオロオロします。でも関西の友人Tさんなら、まだ大丈夫かもしれない!滅多に電話をしないTさんの連絡先を、あちこち探します。そんな時に、編集長から電話が来ました。「ビューティ先生はいらっしゃいますか?」全然予測していなかった電話に戸惑いながら、不在の旨を伝えます。すると編集長は、警察から何か連絡があったかを聞いてきました。聞いて来るからには、何か知っている事があるに違いありません。旦那が連れて行かれた事を言おうかと思いました。でも警察が旦那に、会社へは連絡するなと指事をしています。もし喋った事が後々警察に知られたら、どうなるか分りません。私はへごもごしながら、何だか苦しい話をしました。実は、少し出掛けていて、帰って来たら旦那がいなくなってました。自分が留守の間に出掛けてしまう様な人ではないし、連絡もないままでもう随分経っているから、もしかしたら警察が留守中に来たのかも。自分で話ながら、苦しい言い訳に聞こえました。幸いな事に編集長から疑いの言葉はなく、そうですかの相づちの後「実は会社に警察が来まして、お宅の住所と電話番号を聞いて行きました。後で警察からの連絡があるかも知れません」そう続けました。もう旦那連れていかれてますと、言うに言えません。それにしも、警察に連れて行かれたのは旦那だけだったのか。他の漫画家さんはどうなっているのか、聞きたくてたまりません。編集長の話しが続き、更にショッキングな言葉が耳に飛び込みます。「私も今、警察に行く所なんですけど・・・」編集長、あなたもですか?!事態が予測の範疇を余りに越え過ぎて、くらくらしました。