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| ★★連ドラ★崖っぷちのエリー★★
| ★一恋橋(いちれんばし)★
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ハシゴしようと誘われたSHUNは、
その気になれなかった。 《いつも通り廻りには乗りのいいメンバーが揃っている。 ふた言目には女の話しが飛び出す…。 それを俺は、いかにも嬉しそうに調子を合わせる。 エゲツない話しが出たら、 もっとエゲツない話しで、 会話を沸かせる。 そんなんほんとは、 なんも楽しくなんかない。 そして、…こいつらはみんな、 俺の事なんてどうでもいい奴らばかりだ…。 みんな女さえいればいい。 楽しくわいわい出来たらいい。 俺もそうだ。 そう…想われてる。 でもカズさんは違った。 カズさんは全く違う。 俺にあんな事言った奴なんて何処にもいない。 凄い顔で言ってたな…。》 SHUNはオートバイに跨って、 愛想良く仲間に手を振り、 あてもなく、バイクを走らせていた。 《そう、急に顔色が変わって、力が抜けてしまった俺に、 だ~れも気付く気配もない。 大樹さんの事を、誰!? と聞く奴も居ない。 でもあいつらはみんな、 仲間だと想ってる。 いや、そう言葉にする。 何も解っちゃ居ない。 俺の事なんて誰も解っちゃいない。》 SHUNは思い出した。 今自分が心で感じた事の全てを、 それ以上に全部心のままに話せた…それが一煌だった。 その日の事が頭の中で駆け巡っていた。 SHUNは、無償に一煌に逢いたくなった日だった。 やっと自分のものになったと想った彼女と、 あっと言う間の別れ…。 撮影所でのちょっとしたトラブルも重なり、 想うように事が運ばず、 イライラしていた日…。 かばってくれる人間は何処にもいなかった。 彼女には浮気がバレ、 散々に罵(ののし)られた。 SHUNはじっとただ聞いていた。 謝っても無理だと想った。 また同じパターンを繰り返していた自分も感じながら、 SHUNは孤独感に包まれていた。 また終わった…。 そんな時思い出したのが一煌だった。 家に居る事を、 電話で確認したSHUNは、 『これからカズさんを拉致するから!動かないように!』 と一煌に伝え、 オートバイで一煌のアパートに向かい、 驚く一煌を強引にバイクの後ろに乗せ、 バイクを飛ばした。 一煌は何かよっぽどの事があったんだと、 すぐ心で察して、 ブツブツ言う事もやめた。 と言うより、そんな声など聞こえる筈がないと、 あきらめていた。 晴海埠頭でSHUNはオートバイを止めた。 一煌にはちょっと懐かしい場所でもあった。 『ここさぁ、プロモーションビデオを撮影したとこなんだよ。 ほら、CDデビューした時…。』 文句のひとつも言わない一煌に、 SHUNは少しキョトンとしていた。 《カズさんごめん。》 『えっなんで!?』 一煌はそう言って笑った。 《ちゃんと無事に家に戻しますから。》 『いいよ。いいよ。大丈夫。 明日なんにもないから。 餃子御馳走して貰うから。』 《もちろん!》 『なんかあったんだ…。』 《なんもない。》 『ムカつくなぁ…。』 照れ隠しに、 冗談ぽい事しか言えないでいるSHUNを、 しっかりと一煌は察して少しでも楽にしてあげようと、 必死になっていた。 それが解るSHUNはまた余計に照れくさくなって、 話しはしばらく馬鹿らしい会話ばかりが続く…。 《カズさん…ほんとは怒ってるんやろ!?》 SHUNはボソっと口にした。 二人にとって初めて、 心を裸にして、 精一杯の言葉で、 語り合い、 目に見えない深い絆を感じた、 大切な時が刻まれようとしていた。 一煌もSHUNも、 この時の会話を常に心の奥に仕舞い、 この時程正直に語り合う事もなかった程、 本音の会話をした日だった。 それぞれが自分の今日までの人生を伝える事から、 二人の時間はどんどん《今》へと近付いて行った。 一煌は言った。 『俺はね、 いい人で居たいとか想った事ほんとにないよ。 まじないよ。 良く人のおせっかいばっかりしてって、 言われてるけど、全然違う。 たぶんね、 何の意識もした事ないけど、 回りがそう見えるんだったら、 自分の為に人に一生懸命になってるんだと想う。 ずっとずっと一匹狼みたいな感覚が消えなくってさ…。 たぶんみっともないけど、 孤独感みたいなのが十代の頃からずっと消せなくてさ、 みんなそうだけど、 一人で頑張るしかない世界だもんね。 あのCDデビューで失敗してから、 ごそっと借金抱えて、 余計そんな感じになってて。 十代の時から一度も誰にも《守って貰ってる》感覚を、 感じた事なくて…。 人が例えば何か相談事をして来てくれるとするでしょ…。 もうその事自体が嬉しいって言うか…。 なんか、必要とされてる事が安心感になるって言うか…。』 《そんなんでようやれるわ…カズさん。 誰にでも必死になって…。俺にはよう出来ん。》 『なんにもしてないよ。 勘違いだよ。 ただ、一生懸命に一緒に考えたりはするよ。 でも、自分がね、ちょっとでも人になんかしてあげられたって想うと、 少し安心と言うか…。 でも…不思議だけどさ、 全く自信ないんだよ。 カズさんカズさんってみんな言うって言ってくれたけど、 いざとなれば、ほんとにね、 ほんとに謙遜とかじゃなくて、 誰も居なくなる覚悟がちゃんとある。』 《そんでも、よう続くわ…。 完璧に利用されとった人も、 おった訳でしょ。あいつ…とか…ほら…》 『え!?誰!?』 《ほら、SUEくんだっけ。あないに、カズさんの事コテンパンにしよって。 ぶん殴ったりますわ俺が。》 『ああ…。 いいのいいの…。 そんな利用されてなんかいないよ。』 一瞬蒼ざめた一煌を見て、 SHUNは言った。 《ごめんなさい余計な事言うて…。》 『でもね、一人だけ、 自惚れかも知れないけど、 一人だけ、ずっとおんなじ場所で、 ずっと俺の事見てくれてる人がいるよ。』 《ああ、大樹さんて言う人…。 ライブで逢ったけど、 ろくに話し出来んかった。》 『SHUNとは全く真反対な、 きちんとした、頑張り屋だよ~。 もう全く…SHUNとは違う! 大樹だけは、 ずっとどんな俺でも、 どんなになっても待っててくれるような…そんな存在。 SHUNはいっぱい友達居るじゃん。 女もいっぱい居るじゃん。 』 《すんません。もうしません。》 二人は笑った。 《カズさん…俺はね、 信じられる友達なんか誰もいません。 大事に想われてる自信も全くないし。 いらん。 そんなんほんとは、 なんも楽しくなんかない。 そして、…みんな、 俺の事なんてどうでもいい奴らばかりだと想ってます…。 『そんな事ないよ。 大切に想ってる人だって絶対居るから。 でもね、 そう言うのって、 自分の勇気でもあるからね…。』 少しの沈黙を破って、一煌はまた話し始めた。 『また…女関係!?』 《もういい。もういらん。》 『いいんだよ。SHUNはそれで。いいんだって。 俺はね、 真剣に言うけど、 SHUNみたいなタイプは絶対友達に欲しいタイプじゃないから。 絶対合わないし、 同じ空気吸いたくない位、 やな男だったよ!』 一煌はわざと顔を近づけて、真剣な顔で言った。 《自分の事はよう解っとります。》 『でもね。 ここから大事。 俺はSHUNがもう今はどんなに女癖が悪くても、 短気でも、傲慢でも、』 《まだ言いますか。》 『あはは…。』 《それでそれで!?》 『それでもね、SHUNはそれでもいい。 俺の言う事はちゃんと聞くから。』 一煌はほんとに伝えたい言葉が言えなかった。 ~こんなに強引にでも、自分の事を捕まえようとしてくれる。 こんなに…心の内側まで何でも話してくれる。 必要としてくれてる。 それがほんとに伝わってくるから、 ほんとに嬉しい。~ 一煌はそう言いたかった。 しかし、SHUNには十分な会話だった。 《俺がカズさんを守りますから!》 『いいよ~守ってくれなくても…迷惑だよ~』 《絶対守る。 俺初めてこの人信じたいって想ったんです。》 『いいよ。 無理しなくても…。 俺の事外で悪く言ってても俺は平気だから。 俺が大事にするって決めた事だから。』 《いやです! 絶対守ります。 俺ねカズさん…。 35、6で、 もう死にたいんです。》 『何言ってんの!』 《まじです。 お爺さんになるまで、 生きてたくないんですよ…。》 『そう言う事言ってる奴程、百まで生きるんだよ。』 なごやかな会話は延々続き、 朝陽が顔を覗かせて来た…。 《はよ、乗って下さい。帰りましょう! 》 二人は次第に明けて行く朝の美しい輝きを焼き付けて、 お互いの心にしっかりと絆を確認した日となった…。 その日を想いながら、 SHUNは自然に晴海埠頭に向かっていた。 そして同じように、 紅い月を見つけた…。 《綺麗やなぁ…。》 SHUNもまた、 一煌を想って祈った…。 《逢えるよね、カズさん…。また逢えるよね…。》 仕事の時間まではまだ少しある。 一煌はそのファーストフードで時間を潰そうと決め、 入ろうとした時だ。 首に変な感覚が走った。 後ろを向けとばかりに、 首が何かの力で動かされている。 一煌はまた何かが起きるのだろうかと心配になったが、 そのまま感じる方向を向き直した。 そして、 紅く輝く月を、 一煌も見つけ、 もっと見える場所まで動いて行った。 前にも見た事がある。 あんなに月が紅い…。 ホワイトクリスマスにはならなかったけど、 あんなに不思議な光を放つ月が輝いてる。 今日はいい日だ。 なんか魔法でも使えそうな日だ。 あの月は、 きっと何か僕に力を与えてくれる。 僕は何故かそう感じた。 願い事をしよう。 流れ星の僕が願い事を出来るのは、 あの紅い月が見えた日にしよう。 そんな勝手な想像を膨らませられる程、 何だか幸せな気持ちに包まれていた。 ~何を願う。 流れ星としては…。~ あっまただ。 《どうしてそう言う風に…》 ~質問はしない約束だよ。 いいから、何を願う…。ひとつだけ叶えようか…。~ 《ほんとに!?…いや、そんなの信じない。》 ~いいのかい。 あの月を同じように見つけて、 流星の事を想っていた二人が居たよ。~ 僕はすぐに、 SHUNと大樹が浮かんだ。 ~何にもしてあげられる自分じゃないと想っていても、 その心にこそ、 人は奇跡と言える魔法を持っていたりするんだ…。 いいのかい。 目を閉じなさい。 今感じる願いをただ言葉にすればいい。 それこそが奇跡を生む…。~ 今感じる事…。 《SHUN、大樹…。 絶対頑張ってね。 絶対幸せになってね…。 お願いします。お願いします。》 僕は美しい光に包まれたように、 身体がとても温かくなった。 ・。* 。 +゚。・.。* ゚ ・。* 。 +゚。・.。* ゚ ・。* 。 +゚。・.。* ゚ + お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006/10/24 05:23:27 AM
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