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2006/09/30
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カテゴリ:カテゴリ未分類
 ハシゴしようと誘われたSHUNは、
 その気になれなかった。

《いつも通り廻りには乗りのいいメンバーが揃っている。
 ふた言目には女の話しが飛び出す…。

 それを俺は、いかにも嬉しそうに調子を合わせる。
 エゲツない話しが出たら、
 もっとエゲツない話しで、
 会話を沸かせる。

 そんなんほんとは、
 なんも楽しくなんかない。
 そして、…こいつらはみんな、
 俺の事なんてどうでもいい奴らばかりだ…。

 みんな女さえいればいい。
 楽しくわいわい出来たらいい。
 
 俺もそうだ。
 そう…想われてる。

 でもカズさんは違った。
 カズさんは全く違う。
 俺にあんな事言った奴なんて何処にもいない。

 凄い顔で言ってたな…。》

 SHUNはオートバイに跨って、
 愛想良く仲間に手を振り、
 あてもなく、バイクを走らせていた。

《そう、急に顔色が変わって、力が抜けてしまった俺に、
 だ~れも気付く気配もない。
 大樹さんの事を、誰!?
 と聞く奴も居ない。

 でもあいつらはみんな、
 仲間だと想ってる。
 いや、そう言葉にする。

 何も解っちゃ居ない。
 俺の事なんて誰も解っちゃいない。》

 SHUNは思い出した。

 今自分が心で感じた事の全てを、
 それ以上に全部心のままに話せた…それが一煌だった。

 その日の事が頭の中で駆け巡っていた。

 SHUNは、無償に一煌に逢いたくなった日だった。
 
 やっと自分のものになったと想った彼女と、
 あっと言う間の別れ…。

 撮影所でのちょっとしたトラブルも重なり、
 想うように事が運ばず、
 イライラしていた日…。

 かばってくれる人間は何処にもいなかった。
 彼女には浮気がバレ、
 散々に罵(ののし)られた。

 SHUNはじっとただ聞いていた。
 謝っても無理だと想った。
 また同じパターンを繰り返していた自分も感じながら、
 SHUNは孤独感に包まれていた。

 また終わった…。
 
 そんな時思い出したのが一煌だった。

 家に居る事を、
 電話で確認したSHUNは、
 『これからカズさんを拉致するから!動かないように!』

 と一煌に伝え、
 オートバイで一煌のアパートに向かい、
 驚く一煌を強引にバイクの後ろに乗せ、
 バイクを飛ばした。

 一煌は何かよっぽどの事があったんだと、
 すぐ心で察して、
 ブツブツ言う事もやめた。
 と言うより、そんな声など聞こえる筈がないと、
 あきらめていた。

 晴海埠頭でSHUNはオートバイを止めた。

 一煌にはちょっと懐かしい場所でもあった。

 『ここさぁ、プロモーションビデオを撮影したとこなんだよ。  
  ほら、CDデビューした時…。』
 文句のひとつも言わない一煌に、
 SHUNは少しキョトンとしていた。

 《カズさんごめん。》

 『えっなんで!?』
 一煌はそう言って笑った。
 
 《ちゃんと無事に家に戻しますから。》

 『いいよ。いいよ。大丈夫。
  明日なんにもないから。
  餃子御馳走して貰うから。』

 《もちろん!》

『なんかあったんだ…。』

 《なんもない。》

 『ムカつくなぁ…。』

 照れ隠しに、
 冗談ぽい事しか言えないでいるSHUNを、
 しっかりと一煌は察して少しでも楽にしてあげようと、
 必死になっていた。
 それが解るSHUNはまた余計に照れくさくなって、
 話しはしばらく馬鹿らしい会話ばかりが続く…。

 《カズさん…ほんとは怒ってるんやろ!?》
 SHUNはボソっと口にした。

 二人にとって初めて、
 心を裸にして、
 精一杯の言葉で、
 語り合い、
 目に見えない深い絆を感じた、
 大切な時が刻まれようとしていた。

 一煌もSHUNも、
 この時の会話を常に心の奥に仕舞い、
 この時程正直に語り合う事もなかった程、
 本音の会話をした日だった。

 それぞれが自分の今日までの人生を伝える事から、
 二人の時間はどんどん《今》へと近付いて行った。

 一煌は言った。
 『俺はね、
  いい人で居たいとか想った事ほんとにないよ。
  まじないよ。
  良く人のおせっかいばっかりしてって、
  言われてるけど、全然違う。

  たぶんね、
  何の意識もした事ないけど、
  回りがそう見えるんだったら、
  自分の為に人に一生懸命になってるんだと想う。

  ずっとずっと一匹狼みたいな感覚が消えなくってさ…。
  たぶんみっともないけど、
  孤独感みたいなのが十代の頃からずっと消せなくてさ、
  みんなそうだけど、
  一人で頑張るしかない世界だもんね。

  あのCDデビューで失敗してから、
  ごそっと借金抱えて、
  余計そんな感じになってて。

  十代の時から一度も誰にも《守って貰ってる》感覚を、
  感じた事なくて…。

  人が例えば何か相談事をして来てくれるとするでしょ…。
  もうその事自体が嬉しいって言うか…。
  なんか、必要とされてる事が安心感になるって言うか…。』

 《そんなんでようやれるわ…カズさん。
  誰にでも必死になって…。俺にはよう出来ん。》

 『なんにもしてないよ。
  勘違いだよ。
  ただ、一生懸命に一緒に考えたりはするよ。
  でも、自分がね、ちょっとでも人になんかしてあげられたって想うと、
  少し安心と言うか…。
  でも…不思議だけどさ、
  全く自信ないんだよ。

  カズさんカズさんってみんな言うって言ってくれたけど、
  いざとなれば、ほんとにね、
  ほんとに謙遜とかじゃなくて、
  誰も居なくなる覚悟がちゃんとある。』

 《そんでも、よう続くわ…。
  完璧に利用されとった人も、
  おった訳でしょ。あいつ…とか…ほら…》

 『え!?誰!?』

 《ほら、SUEくんだっけ。あないに、カズさんの事コテンパンにしよって。
  ぶん殴ったりますわ俺が。》

 『ああ…。
  いいのいいの…。
  そんな利用されてなんかいないよ。』

 一瞬蒼ざめた一煌を見て、
 SHUNは言った。

 《ごめんなさい余計な事言うて…。》

 『でもね、一人だけ、
  自惚れかも知れないけど、
  一人だけ、ずっとおんなじ場所で、
  ずっと俺の事見てくれてる人がいるよ。』

 《ああ、大樹さんて言う人…。
  ライブで逢ったけど、
  ろくに話し出来んかった。》

 『SHUNとは全く真反対な、
  きちんとした、頑張り屋だよ~。
  もう全く…SHUNとは違う!

大樹だけは、
  ずっとどんな俺でも、
  どんなになっても待っててくれるような…そんな存在。
  SHUNはいっぱい友達居るじゃん。

  女もいっぱい居るじゃん。 』

 《すんません。もうしません。》

 二人は笑った。

《カズさん…俺はね、
 信じられる友達なんか誰もいません。

 大事に想われてる自信も全くないし。
 いらん。

 そんなんほんとは、
 なんも楽しくなんかない。
 そして、…みんな、
 俺の事なんてどうでもいい奴らばかりだと想ってます…。

 『そんな事ないよ。
  大切に想ってる人だって絶対居るから。

  でもね、
  そう言うのって、
  自分の勇気でもあるからね…。』

 少しの沈黙を破って、一煌はまた話し始めた。 

 『また…女関係!?』

 《もういい。もういらん。》

 『いいんだよ。SHUNはそれで。いいんだって。
  俺はね、
  真剣に言うけど、
  SHUNみたいなタイプは絶対友達に欲しいタイプじゃないから。
  絶対合わないし、
  同じ空気吸いたくない位、
  やな男だったよ!』
  一煌はわざと顔を近づけて、真剣な顔で言った。

 《自分の事はよう解っとります。》

 『でもね。
  ここから大事。

  俺はSHUNがもう今はどんなに女癖が悪くても、
  短気でも、傲慢でも、』

 《まだ言いますか。》

 『あはは…。』

 《それでそれで!?》

 『それでもね、SHUNはそれでもいい。
  俺の言う事はちゃんと聞くから。』

 一煌はほんとに伝えたい言葉が言えなかった。
 ~こんなに強引にでも、自分の事を捕まえようとしてくれる。
  こんなに…心の内側まで何でも話してくれる。
  必要としてくれてる。
  それがほんとに伝わってくるから、
  ほんとに嬉しい。~

 一煌はそう言いたかった。
 しかし、SHUNには十分な会話だった。

 《俺がカズさんを守りますから!》

『いいよ~守ってくれなくても…迷惑だよ~』

 《絶対守る。
  俺初めてこの人信じたいって想ったんです。》

 『いいよ。
  無理しなくても…。
  俺の事外で悪く言ってても俺は平気だから。

  俺が大事にするって決めた事だから。』

 《いやです!
絶対守ります。

  俺ねカズさん…。

  35、6で、
  もう死にたいんです。》

  『何言ってんの!』

《まじです。

  お爺さんになるまで、
  生きてたくないんですよ…。》

 『そう言う事言ってる奴程、百まで生きるんだよ。』

 なごやかな会話は延々続き、
 朝陽が顔を覗かせて来た…。

 《はよ、乗って下さい。帰りましょう! 》

 二人は次第に明けて行く朝の美しい輝きを焼き付けて、
 お互いの心にしっかりと絆を確認した日となった…。

 その日を想いながら、
 SHUNは自然に晴海埠頭に向かっていた。

 そして同じように、
 紅い月を見つけた…。

 《綺麗やなぁ…。》

 SHUNもまた、
 一煌を想って祈った…。

 《逢えるよね、カズさん…。また逢えるよね…。》

 
 仕事の時間まではまだ少しある。
 一煌はそのファーストフードで時間を潰そうと決め、
 入ろうとした時だ。

 首に変な感覚が走った。

 後ろを向けとばかりに、
 首が何かの力で動かされている。

 一煌はまた何かが起きるのだろうかと心配になったが、
 そのまま感じる方向を向き直した。

 そして、
 紅く輝く月を、
 一煌も見つけ、
 もっと見える場所まで動いて行った。

前にも見た事がある。

あんなに月が紅い…。
   
ホワイトクリスマスにはならなかったけど、
あんなに不思議な光を放つ月が輝いてる。

今日はいい日だ。
なんか魔法でも使えそうな日だ。

あの月は、
きっと何か僕に力を与えてくれる。
僕は何故かそう感じた。

願い事をしよう。
流れ星の僕が願い事を出来るのは、
あの紅い月が見えた日にしよう。
そんな勝手な想像を膨らませられる程、
何だか幸せな気持ちに包まれていた。

~何を願う。
  流れ星としては…。~


あっまただ。

《どうしてそう言う風に…》

~質問はしない約束だよ。

  いいから、何を願う…。ひとつだけ叶えようか…。~


《ほんとに!?…いや、そんなの信じない。》

~いいのかい。
  あの月を同じように見つけて、
  流星の事を想っていた二人が居たよ。~


僕はすぐに、
SHUNと大樹が浮かんだ。

~何にもしてあげられる自分じゃないと想っていても、
   その心にこそ、
   人は奇跡と言える魔法を持っていたりするんだ…。
   いいのかい。

   目を閉じなさい。
   今感じる願いをただ言葉にすればいい。
   それこそが奇跡を生む…。~


今感じる事…。

《SHUN、大樹…。

 絶対頑張ってね。
 絶対幸せになってね…。

 お願いします。お願いします。》

僕は美しい光に包まれたように、
身体がとても温かくなった。

・。* 。 +゚。・.。* ゚ ・。* 。 +゚。・.。* ゚ ・。* 。 +゚。・.。* ゚ +

 

 

 





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Last updated  2006/10/24 05:23:27 AM



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