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僕にとって、
夢から醒めた時のような、 一瞬とも言えるような時間でもあり、 とても、 長い長い時を越えたような気もした三時間が、 ここから始まった…。 ・。* 。 +゚。・.。* ゚ ・。* 。 +゚。・.。* ゚ ・。* 。 +゚。・.。* ゚ + ~《神様に近い場所…》~ ~ル…ルル…ル…~ 《この声!?…》 ~ル…ルルル…ルルル~ 《セソ!?》 その声…歌は、少し空の彼方の遠くの方から、 時に左側から、時には右側から…。 まるで僕の回りを飛びながら歌っているかのように、 とても心地良く届いていた。 あの歌…《さくらの唄》だ…。 《あの…。》 ~私を呼んでるのかい…。~ 《あの声は…セソですよね…。》 ~さぁ…、 どうだろう…。 ただの錯覚かも知れん。~ 歌声はピタッと止んだ。 急になんとも言えない沈黙が走る。 そして、また…。 ~ル…ルル…ル…~ 《あっ…やっぱりセソだ…!?》 ~私には聞こえない…と誰かがお前に言ったらなんと言う。~ 《えっ!?なんでそんな事言うんですか…?》 ~いいから、 何も考えずに、 今は私と話をしよう…。 その代わり、寒い想いはさせない。 ベンチに戻ってみなさい。 いい事が起きる。~ 僕はキョトンとしながら、ゆっくり新聞紙を敷いてあったベンチに戻った。 そして腰掛けた時、 まるでベンチの下にストーブでもあるかのように、 暖かい風が優しく、僕の足元から身体に感じられた。 新聞紙はまるで、電気カーペットのようにホカホカして来た。 《!?う…嘘ぉ…!?》 僕は思わず口からそんな言葉を漏らした。 ~嘘がいいかい…。~ 僕は慌てて答えた。 《嘘でもなんでも、錯覚でも幻覚でもいいから、 このままがいい…。あたたかい…。》 そして、すぐに、 心でこう思った。 心で今疑う事をやめよう。 そしたらこのまま、温かいままで居られるかも知れない。 すぐに、その心に答えが返って来た。 ~そう、それでいいんだ。~ 僕はゆっくり頷いた。 夢なら夢でいい。 なんだか、倖せな気持ちになって、 心はとても穏やかだった。 このまま時間が止まってしまってもいいと思った。 夢なら覚めないままでもいいと思った…。 一瞬でも今、 何も考えずに、 ただこの声と話しをしていられる。 その時間がずっと続けばいい…。 ~書きなさい。最初の約束だった。~ 薄明かりの電灯と、 柔らかな月の光…。 十分に筆記を出来る。 久しぶりにリュックサックから、ノート取り出した。 ゆっくり読み返す事もなかったノートには、 やっぱり不思議な絵と書きなぐった文章が、 今日まで起きていた不可解な現象の中の記録を、 少なくとも僕の紛れもない真実として、 証しとして残してくれていた。 さっさと捨てる事も出来た。 でも、僕にはどうしても、そうは出来なかった。 この声に対して僕は、何の期待もない。 僕にとって何ひとつ《都合のいい、便宜のいい現象》など、 絶対に起こしてはくれないと知っている。 …解った…ではなく、 僕は心でそれを《知っている》。 そう自分で言葉にした方が、 しっかり落ちた。 僕が突然の声にドキっとしないように、 まるでとても気遣ってくれているかのように、 遠くの方から少しずつ、 声が届いてくる…。 僕にとってその声は、 聞き易い、綺麗な発音の、 声優さんや役者さんが喋っているような、 とにかく心地いい男の人の声だった。 それが、 この現象が始まってからのまず、 芯と言える声。 姿、形は見えない。 でも、今では少しだけほっとする程、 人としてまるで出逢ったかのような感覚にもなっていた。 もし毎回様々な声だったとしたら、 考えて見たら、今の僕の精神状態はまた、 全く違っていたかも知れないと思う…。 幸い今は人が殆ど通っていない。 でも誰かが目の前を通り過ぎたとして、 僕が上を向いてブツブツ喋っていたら、 そりゃあ振り返って、変な人だとまたもう一度見るだろう…。 書いた方がいいに決まってる。 僕は白紙のページを開き、 筆記を始めた。 ~話しを続けよう。 流星…いいかい!? お前には人には聞こえない声がこうして聞こえている。 そして子供のような歌声が、 さっき聞こえた。 動揺するお前はそれを伝えた。 『女の子の歌声』が聞こえると…。 しかし、私達には聞こえないと傍に居る子達は首を傾げた。 さあ…なんと言う。 正しい答えなどこの質問にはない。 ただお前の答えが今聞きたいんだ…。 深く考えなくていい。 そのまま、私に質問の答えとして、 お前が話せばいいだけだよ。~ 《…その人が、大樹なら…、SHUNなら…そして、 僕に起きている事を少しでも理解してくれてる人が傍に居るなら、 僕は、もう一度伝えるかも知れません。 『今、聞こえてるんだよ。女の子の歌声…!?』って…。》 ~じゃあ、何にも知らない子が傍に居る時は…~ 《言いません。聞こえても。》 ~じゃあ、思わず口にしてしまったとしたら!?~ 《…しません。しません…それじゃ駄目ですか…。》 ~ならば、 何かを感じると自分で自分を把握している子。 つまり《霊感》があると言う、 自らの認識の中で、 その子が、何かしら感じ、 『子供の霊』が居る…と口にしたら?~ 僕は少しだけ考えた。 《…僕には歌声が聞こえる…》 ~この土地で起きた天災で亡くなった子供の霊…そうその子が言ったら?~ 《なんでもかんでも、霊と言う言葉と結び付けちゃいけない。そう言います。 セソがそう教えてくれました。 ほんとにそうだと…思いました。》 ~そうか…。 それはいい事だ。 多過ぎる…あまりに多過ぎる。 この日本に於いては、 《霊感がある》と言う枠の中に自分を重ね、 何の対処も出来ない上に、 遊び半分でさえ口にする子が…。 粗塩を持てば、なんでも祓えると思っている浅はかな子もね…。~ 《僕もきっとそうでした…。 余計に怨念みたいな怖いエネルギーを増幅させる事すら…あるんですよね…。》 ~ならばそれはなんだい。 その話しにある怨念の意を持つエネルギーは…なんだい…。~ 僕は黙ってしまった。 霊…と言いそうになって、 でも何処で区別すればいいのか、 自分の中で言葉に出来なかったからだった。 ~【烈】~ 思考の中に、 この文字が飛び込んでくる…。 【れつ】…。 《【烈】…》 ~怨念を持つ魂。憎悪の魂。輪廻を成せない魂。 人間を脅かそうとする魂…。悲しみに満ちた魂…様々な形で火の意を持つ、目には映らない魂のエネルギーもまた、 この世に残存している事もまた確かだ。 それをまず、 流星としての意識の中でいい、 この言葉として囲いを作り、 心の区分けをしなさい。 そして烈と接刻(せっこく)を持つ事は、 命さえ脅かし、破滅にさえ導く強い危険な事でもある。 接刻を明ける事が、 お前にもしここからの道の中であるとするなら、 お前を守れるものは、お前の強さは、 その心にある、 揺ぎ無いその…~ 聞き取れなかった。 僕は聞き返した。 《揺ぎ無い…なんですか》 その質問を無視するかのように話しは続いた…。 ☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。. お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006/11/09 09:15:45 AM
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