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経験を積む（２）

子どもが子どもの集団の中で経験を積んでいく様子を、親も冷静に見ていないといけないと思う。放っておいても時間が解決するタイプのものから、親が適時適切なアドバイスをしなければならないもの、中には親が身体を張って子どもを守らなければならないものまで様々だと思うからだ。でも問題は「困ったことが起きた時にそれを親に打ち明けてくれるかどうか」ということだ。学年が上がるにつれて子どもは辛いことがあっても親に言わなくなる。「ダメな子だと親に思われたくない」「親を悲しませたくない」「親が忙しそうで大変だ」と子どもなりに遠慮するしプライドもあるようだ。家庭の中に話を聞いてくれる雰囲気があるかどうか、弱音を吐ける雰囲気があるかどうかは重要だと思う。中にはトラブルが深刻な状態になっても言えずに苦しんでいることもあると思う。でも辛い思いをしている時はやっぱり親に話してほしい。我が家の問題は私がせっかちだということだった(^_^;)。子どもが話を始めると、つい途中で自分の意見をくどくど言ってしまい、子どもが口をつぐんでしまうことがあった。じっくり最後まで話を聞いてあげることがとても難しかった。それでも娘は泣き言を親に言ってくれた。一緒に解決策について何時間も話し合ったり、一緒に泣いたりしたこともあった。女の子は人に話すことでストレスを解消するようなところがあって、話しているうちにだんだん本人が冷静になって自分で解決策を思いつくこともあった。でも難しいのは男の子だ。中学校から高校にかけての男の子は辛いことがあっても黙ってしまう。我が家でも後になって友人のお母さんから「○○君、○年生の時大変だったね」と言われて初めて息子の窮状を知ったことがあった。とてもショックだった。幸いその時は自分の力で乗り切れたようだが・・。一人で乗り越えたことをほめてやればいいのだろうか？でも「辛い時は弱音を吐いていいんだよ」というシグナルをもっと送っておけばよかったと思った。子どもが大きくなって手をかけなくてよくなるにつれて、反対に目はしっかりかけなければならないと感じた。表情や声の張り、態度。何かあれば何らかのサインが出ているのだと思う。家庭で弱音を吐けなければ、他に弱音を吐く場所はないだろうと思う。

経験を積む（１）

息子が3歳の時、夫の仕事の都合で2年間盛岡で暮らすことになった。周りに知り合いが一人もいないし、子どもは早めに子どもの集団に入れる方がいいと思っていたので、息子を幼稚園の年少さんに入れることに決めた。息子は幼稚園に行くことを嫌がったりはしなかったが、しばらくの間はとても緊張した様子で通っていた。家に帰って来ると「とても気を張っていたんだなあ」と感じることがよくあった。そんなある日、息子が「幼稚園に怖い人がいる」と言う。どうもとても乱暴な男の子がいて辛いようなのだ。私は一瞬「なんで幼稚園はそういう子を放っておくんだろう。幼稚園に行くのを嫌がるようにならなければいいけど」と心配した。ちょうどその頃、幼稚園で保護者参観と懇談会があり、私はその「怖い」というD君がどんな子なのかと思いつつ参観に出かけた。D君を見て息子がどうして「怖い」と言ったのかが分かったような気がした。見るからに息子とは正反対のタイプの子だったからだ。息子は私たち夫婦の初めての子で、私は何をどうしていいのか分からずとても慎重に育てた。ちょっと神経質な子育てだったと思う。風邪気味だと思えば常に体温計をエプロンのポケットにしのばせて、しょっちゅう熱を測ったりしていた。すぐに下の子が生まれたから、息子には何かと我慢させることも多かった。妹がぐずるとついつい聞きわけのいい息子にしわ寄せがいった。息子の持って生まれた性格もあるだろうが、慎重で遠慮や、やりたいことを我慢するような子だった。それとは対照的にD君は男3人兄弟の2番目。きっと兄弟の中でもまれていたのだと思う、実にたくましく、率直で表現の素直なお子さんだった。思い立ったらどんどん行動する感じで、良く言えばたくましい、悪く言えば乱暴な子だった。考えてみるとそれまで息子の周りにいたお友達は長男や長女ばかりで、D君の様なタイプはいなかった。息子にとって初めて出会うタイプのお友達。だから怖かったのだろう。私は幼稚園の送り迎えの時にそれとなくD君ともお話をするようになった。確かに乱暴なところはあるけれど、決して意地悪な子ではなかった。私とD君が言葉を交わすようになって、息子もD君を嫌がらなくなった。行動は少し乱暴だが、本当は優しい子だった。優しさを表現するのが下手だったのだ。結局D君とは2年間同じクラスで、とても仲良しになった。行動力抜群のD君のそばにいることは息子にとっては驚きの連続だったようだが、D君に引っ張られるように、息子は前より素直に自分を表現するようになった。なによりも前よりずっとずっとたくましくなった。時にはD君と2人でいたずらすることもあった。（子どものいたずらに神経質になってはいけない。いたずらは子どもの生命力やユーモアの表れだそうだ）息子が「怖い人がいる」と言った時にD君を毛嫌いしなくて本当に良かったと思っている。神経質な親の子は神経質に、慎重な親の子は慎重に、ルーズな親の子はルーズにと、子どもは育つ家庭の影響を強く受ける。子どもの性格は、集団の中に入って色々なタイプの子どもともまれることで、社会の中でうまくやっていけるように矯正されていくのだと思う。小学校・中学校・高校と、息子が大人しいながらも生き生きと学校生活を送れたのもD君のお陰だと思っている。D君は息子が許容できるお友達の枠を大幅に広げてくれた。社会の中で生きている限り、人間関係でのトラブルは避けられない。だから人間関係の経験をたくさん積んで、どんな人にもそれなりに対応できる力をつけることができれば、それは子どもが生きて行く上での大きな力になるだろう。トラブルと思うと親も辛いが、経験を積んでいると考えるとそれは決して「困ったこと」ではないと思う。

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