「石丸現象」の冒険(27日の日記)
今月上旬の東京都知事選挙で165万票を取った石丸伸二氏について、毎日新聞専門編集委員の伊藤智永氏は13日の同紙コラムに、次のように書いている; 東京都知事選で約165万票を獲得した石丸伸二氏とは何者か。告示後、これは2位に入るかもしれないと調べ始めたが、むなしくなったのでもうやめた。 公約はあいまいなのに、ネット交流サービス(SNS)や動画サイトで若年層や無党派層の支持を集めるポピュリスト(大衆迎合主義者)。言うなら「民主主義のハッカー」か。ハッカーとは、良いことであれ悪いことであれコンピューターを駆使して常識外れな目的を実現させる者のこと。 しかし、石丸氏は動画投稿サイト「ユーチューブ」などSNSでせっせと発信し、拡散を呼びかけただけ。高校生でもやっている。 ボランティアの支援も含め、石丸陣営が仕掛けたというより、テレビよりネットを見る人々の間で、同じ考えや好みを自発的に広げる現象が起きたらしい。 では「ハーメルンの笛吹き男」。とんだ買いかぶりだ。石丸氏の演説はおよそ雄弁には程遠い。 開票直後、各メディアのリレーインタビューで、聞き手に次々とかみついた。なるほど。毒舌が売りのホリエモンこと実業家の堀江貴文氏、ネット掲示板「2ちゃんねる」(現5ちゃんねる)開設者で「論破王」と呼ばれる「ひろゆき」こと西村博之氏、けんか腰の橋下徹元大阪市長。あの人たちをまねているのか。 でも、攻撃的なのに痛々しい。堀江氏は「適当に答えられないんだな。真面目なんだよ」とかばった。無理しているのだろう。 広島県安芸高田市長時代の訴訟2件で敗訴。対立した市議会の議決を経ずに予算を組むなど「専決処分」を重ねた。「戦う市長」の演出にせよ、問題は中身だ。市長選ポスター代不払い、「道の駅」へのブランド店誘致、保育所と幼稚園の統合計画……。それくらい何とかできなかったのか。あげくに任期途中に辞職では、行政手腕を疑わざるを得ない。 問うべきは、石丸氏が何者かではなく、石丸氏を偶像に押し上げた165万有権者像の方だ。 各メディアの出口調査で、18~29歳は石丸氏支持が一番多い。これは分析されている。注目すべきは、30~50代も3位の蓮舫氏より石丸氏支持が多かった。蓮舫氏支持が増えるのは60代以上。 2・3位の得票を比べると、石丸氏は23特別区で全勝。中央・千代田・港・品川各区で大差を付けた。高層マンションが並ぶ情報感度の高い富裕層居住区である。 小池百合子氏当選を前提に、石丸氏の実像を承知の上で、既存政党拒否の票を投じたのか。直接民主主義は怖い。(専門編集委員)2024年7月13日 毎日新聞朝刊 13版 2ページ 「土記-『石丸現象』の冒険」から引用 この記事を書いた伊藤氏はジャーナリズムの世界で働く人だけあって、都知事選挙に突如現れた「石丸伸二」とは何ものか調べたところ、その正体はすぐに判明して、中身が中身だけに「むなしくなって」調査をすぐにやめたとのことであるが、むなしくなって調査をただ止めるのではなくて、「自分が調べたところでは、彼は市長在任中に議会を軽視して勝手に予算を組んだり、市長選ポスターの印刷費を踏み倒して裁判に訴えられて敗訴が確定したり、挙句は任期途中で辞職したというような「事実」を、毎日新聞が特ダネとして報道するべきだったと思います。それは、石丸伸二氏に限らず、現職の小池百合子氏についても三井不動産に都有地を破格の安値で譲渡したり、取り巻きだった都職員を同社に十数人も天下りさせて、神宮の森を取り払って高層ビルを建築する計画を多くの都民の反対の声を無視して実施しようとしていることを、投票日前に報道して有権者の「判断材料」とするべきであったと思います。上の記事で、筆者は「問うべきは・・・石丸氏を偶像に押し上げた165万有権者の方だ」と断言してますが、165万有権者を「つんぼ桟敷」に置いて、「石丸氏に投票」という状況に追い込んだ責任の一端は、毎日新聞にもあると思います。