テーマ:詩と詞(ことば)(499)
カテゴリ:ココロのしずく
正午に汽笛が鳴り響き 頭をたれて黙祷を捧ぐ あの日私は この町にはいなかった それどころか 訪れた事すらなかった 見ず知らずの街が火に包まれ 白い空を黒煙が焦がすさまを 遠い空の下で呆然と見ていた まるで現実とは思えないけど これは現実なのだ いま、遠くの街が燃えている なにか、しなくては。 私に出来る事は、何? 自分の事以外で そう、はっきりと あれだけつよく思ったのは おそらく初めてだった 病弱な母と 認知症の祖母と アル中の父を抱えた私が できることは何だろう? 体調不良でアルバイト生活の私にもできることは 一体なんだろう? 結局、動けない私は 当時バイトしていたコンビニで 日当分を募金箱に入れた 「今日はただ働きでいいや、と思ってさ。 あの神戸の街をみたら 働けることだけでもありがたいと思ってさ」 そういうと、みんな賛同してくれて バイト全員が日当分を募金箱に次々と入れていった。 自分で学費を払っている大学生も 店一番の働き者の中卒の女の子も お子さんに障がいのあるお母さんも みんなすすんで このお金が神戸のために役立つようにと 祈るような気持ちで募金箱にお札を入れた お客さんたちも すすんで募金をしてくれた いつもは一円玉や五円玉ばかりで 半年経っても半分もたまらない募金箱が 500円玉やお札であっというまにいっぱいになった 「ありがとうございます」と笑顔でいいながら なんだか涙が出そうになった 大きな街がこわれてしまった こんな絶望的な冬の朝でも この国はまだまだ 捨てたもんじゃないと あの頃の私は 10年後の自分がこの街に住んでいるなんて これっぽっちも思ってなかった あの日 善意を届けてくれた大勢の人たちに 感謝の気持ちを 追悼の祈りとともに この風と 汽笛にのせて お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2011.01.17 22:00:35
コメント(0) | コメントを書く |
|