か な う か 陛 下 と の 対 面 横 井 さ ん
か な う か 陛 下 と の 対 面単 独 ね ぎ ら い も 旧 来 の 慣 習 壁 だ が宮 内 庁 検 討「 天皇陛下にお会いしたい。陛下を信じ陛下のために生き続けたこの気持を陛下に伝えてほしい 」--元日本兵、横井庄一さん(56)の訴えは大きな反響を呼んでいるが、宮内庁は陛下のお気持やお立場も考えたうえで、横井さんの訴えが実現できるような方法があるかどうか、検討を始めた。5月に予定されている赤坂離宮で開かれる園遊会に横井さんを招待し、その席で陛下がねぎらいのお言葉をかけられることがもっとも自然なかたちではないか、という意見が宮内庁筋では強い模様だが、それ以前に単独会見のかたちで陛下が横井さんに会われることも含めて暖かい白紙の立場で検討、という微妙なニュアンスもみせてる。最終的には政府筋とも相談のうえ決定されることになろうが、陛下と民間の特定個人との単独会見は前例がないだけに、もし実現すれば昭和史を象徴する一場面として大きな反響を呼ぶことになりそうだ。横井さんの「 天皇陛下にお会いしたい 」という痛切な声が報道された27日、毎日新聞社へだけでも「 ぜひ実現して横井さんの労をねぎらってあげてほしい 」「 それがなにものにもまさる横井さんへの贈り物だ 」という電話が殺到。陛下は新聞やテレビで横井さんのことは十分ご存じで、お心にかけられているという。お立場上、積極的に私的な感想をおもらしになることは少ないが、陛下のお人柄からみて「 日本兵 」横井さんには深い関心と感慨をお持ちになっていられるはず、と側近はいう。しかし、陛下のお気持ちとは別に単独会見となると、宮内庁の厚いしきたりの壁が横たわっている。戦没者遺族代表、文化功労者や内外の記者団を引見される場合でも、特定の人にだけお言葉をかけられることは立場上ひかえられるのが厳しい慣例になっているという。園遊会でも、特定の人でなく国民各層から選ばれた代表に広くお言葉をかけられるのが建前となってる。そうしたきびしい慣習の壁がありながら、なお同庁高官筋が暖かい白紙の立場で検討したいと表現しているのは、今度の横井さんの事件が戦時中から戦後を貫く象徴的で稀有のケースであり「 天皇陛下 」のために南海の孤島で28年間も生き抜いた1人の「 兵 」との対面が、、慣例やしきたりを越えて実現する可能性が全くないわけではないことを示唆している点で注目される。上記、記述は、1972年( 昭和47 )1月26日、新聞に掲載されたものです。