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2008.08.20
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カテゴリ:■一日一賢
今日の一日一賢



■あの有名人のお宝カメラ 「藤森照信」さん





プロフィール





藤森 照信
(ふじもり・てるのぶ)


 1946年茅野市生まれ。71年東北大学工学部建築学科卒。助教授を経て、98年東京大学生産技術研究所教授に就任。建築家、建築史家。86年、「建築探偵の冒険・東京篇」でサントリー学芸賞受賞。ほかに毎日出版文化賞、日本芸術大賞、日本建築学会賞など受賞多数。建築家の作品として「神長官守矢史料館」「ニラ・ハウス」「秋野不矩美術館」「ねむの木こども美術館 どんぐり」など。著書に「歴史遺産 日本の洋館」(全6巻)「藤森照信の原・現代住宅再見1~3」など多数。86年には赤瀬川原平氏、南伸坊氏らと路上観察学会を結成している。





――カメラ歴は?






ミノルタCLE、ミノルタα-7000などを経て、現在メーンで使っている
パナソニックルミックスL10。現代建築は撮る気がしないということ
で、被写体は歴史ある建物。正面から撮るのでレンズは歪まない
限界の14ミリから50ミリのズームレンズが気に入っている。カメラ
選びは人任せで「知っている機能はシャッターとプレビュー、あと
は消去。一日を振り返りながら、いらないのを消すのが楽しい」と
笑った


 
 中学1年生のとき、田舎の中学の先生をしていた親父が所有していたカメラを触ったのが初めてです。なんというカメラかもう忘れちゃったけれど、レンズの横にシャッターチャージみたいなのがついていて、それを押し下げると「ジー」と音が鳴って精密機械独特のバネの感触が気持ちよかった。でも写真を撮ったのはそのときぐらいかなあ。本格的に撮り始めたのは、1974年に「東京建築探偵団」をつくって、東京の西洋建築を調べ始めてからですよ。そこで撮った写真を長谷川堯さん(建築評論家)に見せたら「ちゃんとプロに教えてもらってから撮れ」と怒られた。でもどこが悪いのか、言ってくれないんだよね。おそらく直しようがないほど悪かったと思う(笑)。それで建築写真家の増田彰久さんにコツを聞いたら、非常に簡単で「正面から撮れ」と。(笑)

 でも考えてみれば、ぼくはそれまで一度も正面から撮ったことがなかったんですよ。正面から撮ると横が切れるときがあって、それが嫌でいつも斜めから撮っていた。そういう写真は中途半端で印象に残らないんだよね。それで壁面に平行にカメラを向けて撮ると、どことなく印象深くなるのでびっくりしました。





――今までどんなカメラを?






フランス・オーベルニュ地方にある奇想遺産、ル・ピュイ・アン・ブレ。
岩の頂上にある教会は10世紀後半に建てられた。なんとも不思議な
外観だが、内部も予想外のつくりだったという


 
 建築写真といえば垂直を出すためにアオリレンズを使う人が多くて、ぼくも一度だけ使ったことがあるけれど、リズムが崩れるのでやめました。ぼくは「見て」「考えて」「スケッチして」「写真を撮る」なんです。そこでアオリレンズを使うと操作が面倒で流れが分断される。それが不愉快なんですよ。撮影はピントを合わせてシャッターを押すだけで十分。

 自分で気に入って使っていたのは、ライツミノルタCLEです。小さくて扱いやすい。でも巻き戻しレバーが取れちゃったりとか、壊れやすいんだよなあ。3台ぐらい潰したかな。人からは「このカメラはそんなに酷使するものじゃない」て怒られたけれど。ぶつけてフィルターのガラスにひびが入ったこともある。外れないから石でガラスをガンガン割ってたら、それを見た赤瀬川原平さんがひっくり返った(笑)。「精神衛生上悪いからやめろ」






奈良・三輪山から大和三山と生駒山系を撮影。以前は建物だけだった
のが風景も撮るようになり、今は建築と風景がお互いを引き立て
合うような状態に関心があるという



 赤瀬川原平さんらと路上観察学会を始めたときはニコンのMFカメラで、そのあとAF機能が付いたのがうれしくてミノルタα-7000からAF機に入ってデジカメに来て、これで打ち止めかな。ルミックスL10は建築とカメラの両方に詳しい人にプレゼントされました。カメラ選びは人任せですね(笑)。デジカメになって助かったのは、フィルムの入れ忘れがなくなったこと。撮った写真が手元にあること。昔は写真をマスコミの人に貸すと返ってこないことが多かったんですよ。デジカメはそんな心配はないし、海外のメディアにもメールで送れるのが便利です。ライカに興味はありません。赤瀬川さんからさんざん話を聞かされて逆にライカウイルスに免疫ができているので発病しませんよ。(笑)





――対象は建築だけですか?






藤森さんが設計した京都・徳正寺の茶室「矩庵」。地面から上げ、
樹上に造られている。15時ごろ、庭のアーチの影が障子に映った
ところをシャッターを切った


 
 人物やモノは撮らないですが、きれいな風景は撮ります。もっとも海外に行くと1週間で2000キロも建築から建築へ移動していくので、なかなか風景を楽しんでいる余裕はありませんが。風景を撮るようになって、建築写真に対する考え方は変わりました。最初は単なる記録で撮っていたんですが、表現する写真も面白いなと思うようになりました。ぼくが撮っている古い西洋館などは、ぼくの写真にしか残っていない。丸の内だと30くらいのうち28はなくなっています。そういう建物のよさをちゃんと残すためには表現も大切なんだと気づいたんです。表現の力がなくなったら記録としても困るわけです。撮っていて面白いのはインテリアや建物の装飾などディテールですね。ファインダー越しに見ると周囲の余計なものが整理されるから、より本質が明快になるのでしょう。



「アサヒカメラ」(朝日新聞出版)連載「あの有名人のお宝カメラ」より















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最終更新日  2008.08.20 15:59:39
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