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2012.05.26
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カテゴリ:unclassified




甘口の酒が多いとお嘆きの貴方に [12/05/11]




 先日、またまたとっても楽しいお酒の会に参加させていただく機会がありました。京都のとってもおしゃれな地酒BAR「膳」の10周年記念のお酒の会♪

 「膳」は、長期熟成させた生酒がずらりと並ぶ、日本酒好きのマニア心を絶妙にくすぐるお店です。。。。。あ、ほとんどの方は、そもそも「生酒」って何?「長期熟成」ってどーいうこと?? いったい何の意味が??? と、ハテナマークが点滅しまくりですよね。いやいや、もちろんそんなことなーんにも知らなくったってだいじょうぶ! 元トラック運転手(通称・パンチ師匠)というご主人、膳さんの飾らないユニークなお人柄にゆったりと癒されながら、「おしゃれに、でもリラックスしながら、とっておきのおいしいお酒が楽しめるバー」として、だれもが日本酒のおいしさ、ふしぎさ、楽しさ、深さを楽しめるお店でございます。

 その膳さんが10周年を記念して開く会とあって、当日のラインナップは、もう「今、ここ」でしか味わえないレアなビンテージものばっかり。おそらく、これから一生、二度と出会う機会のないお酒ばかり。




 会場は、「膳」の近くにある、これまたおしゃれなイタリア料理店「イル・カッペッロ」。この日はチーズを使ったお料理(もちろん、すべてイタリアンですぞ)をいろんなバリエーションで楽しむ趣向で、お酒も、それに合わせて味のゴツッとした「やんちゃな」お酒を・・・ということで、播州のお酒が多かった! 私、すまいは神戸なので播州といえば同じ兵庫県なのですけれど、実はあんまり播州酒に詳しくないんですよね。だからどれもこれも興味深々で、楽しく、おいしくいただきました♪ 




 で、それはさておき、実はこの会でとっても印象に残ったことがありまして、今日はそのことを書きたいと思います。

 私、開始時間ギリギリに来たために満員の会場で友人と同席することができず、カウンターにひとり座らせていただくことに。隣には、「こういう会(日本酒の会)に参加するのは初めて」というご夫婦が座っておられたので、(これは日本酒好きを増やすチャーンス!)と勝手にやる気まんまん。あんまりおしつけがましくならないようにと気をつけたつもりではありましたが、気づけば「BYとは何か」「どんなところに注目して飲むと楽しいか」みたいなことを、聞かれもせんのにせっせせっせと説明させていただきました。
 
 私の隣に座っておられた奥様は、そういう説明を聞くのは初めてということで、この際、わからないことは何でも聞いちゃえ! という感じで、大吟醸って何なのか、とか、お米をたくさん削った方がおいしいお酒になるのか、などなど、私にとって実に説明しがいのある質問をたくさんしていただきました。で、この日出てきたお酒を次々と飲んでは「わ、さっきのとぜんぜん違う!」「私、これが好きかもしれないです~」などと、私といっしょにキャッキャッと楽しんでおられたのですが、ご主人のほうはちょいと納得のいかない様子。どうしたのかなーと気にしていると、「もっと辛口の酒はないの?」。私、とっさの一言が出てこなかった。辛口って・・・・何なんだ? どんなのが辛口? ウッとつまっていると、ちょうど膳さんが回ってこられて、「今日は味のしっかりしたお酒ばっかりですからね。。。あえて辛口といえば、これかな。。。」と、一生懸命お酒を選んで勧めておられました。

 かなり前にこのブログにも書いたのですが、日本酒といえば、まずは「辛口のやつ」とリクエストする人はとっても多いのです。特に、ある年齢以上の男性は9割以上が「辛口」とおっしゃるのではなかろうか。でも私、考えてみれば、どういうお酒が「辛口」といわれるのか、深く考えずに過ごしてきた。

「辛口」「甘口」というのは、一般的には「日本酒度」という数字で判断できるとされています。ラベルに表示されているものもありますので、機会があればチェックしてみていください。プラスなら辛口、マイナスなら甘口。でも実際に飲んでみると、数字的にはめちゃくちゃ辛口でも、飲んでみると「甘さ」を感じるお酒はいっぱいある。というのも、日本酒の味は、辛さ・甘さだけじゃなくて、酸味、うまみ、苦味、こうばしさなどなど、とっても複雑な要素がからみあっているので、辛い、甘いという単一な指標でははかれないものだから。

 それなのに、なぜ「辛口」にこだわる人が多いのでしょうか。

 酒販店や飲食店の方に聞くと「1種の呪文みたいなもの」「とりあえずどんな酒を注文していいかわからないとき、辛口と言っておけば間違いない、あるいは通っぽくみえると信じられているからじゃないか」などとおっしゃるので、「なるほどねー」と納得しておりました。

 私も、「辛口」ということばでまず思い出すのは、子供時代にテレビコマーシャルでがんがん流れていた「まだまだ甘口の酒が多いとお嘆きの方に・・・」という某大手日本酒メーカーのキャッチコピーです! あの渋ーい男性の声の台詞がなんとも大人っぽく、実に説得力があった。こども心に「そうかー。甘口の酒っていうのはダメなものなのかー」と、日本酒なんて1滴も飲んだことがないにもかかわらず、この「呪文」がしっかり刷り込まれましたからね。

 そんなこともあって「辛口=呪文」説にすっかり納得し、その「呪文」の中身にちゃんと注目してこなかった。だから、この「辛口」を求めたご主人にもうまく応えることができなかったのです。これではいかん、日本酒のホントのうまさを伝えようと思えば、今後も必ず遭遇するであろうこの問題から逃げていてはいけないと思い、よい機会なので、辛口が好きというこのご主人に「どんなタイプのお酒がお好きなんですか?」と、いろいろ尋ねてみました。

 すると、好きなタイプのお酒は「淡麗辛口な東北の酒」とのこと。なるほど。もうちょっと詳しく尋ねてみると、京都(伏見)の酒は甘いからあまり好きではない、唯一飲めるのが、某大手の蔵が超格安で出しているお酒。これがなかなかうまい、と。

 あ、そういうことか。。。なんとなくわかりましたよ! この方が求めておられるのは、いわゆる水のごとくすいすい飲めるお酒なんですね。そうか。それを「辛口」と表現していたんだ!

 この「辛口」志向、実は、一流の日本料理人の方々の好みと一致しています。料理の道を追及する多くの料理人が理想とするのは、いわゆる「料理をじゃましないお酒」。酒そのものがうまみたっぷりだと繊細な料理をぶちこわしてしまう、だから理想は水のごとく、味のない酒。超高級日本料理店に日本酒をちゃんとそろえているところが少ないのは、そういう思想が背景にあるのです。

 でも日本酒ラブな私からみれば、それだけにこだわっているのは実にもったいないです。もちろん、淡麗辛口なおいしいお酒もたくさん存在しますが、いわゆる「料理のじゃまをしない」といわれるお酒は、できあがったお酒を活性炭できつく濾過して色と香りを抑えていることも多いのです。この濾過によって「キレイ」なお酒になるのですが、一方で、自然なうまみや個性も奪ってしまいます。別の言い方をすれば、大切に残したい魅力的なうまみいっぱいの酒も、できるなら消し去ってしまいたい雑味いっぱいの酒も、きつく濾過をかければ同じように「すっきりした酒」=「淡麗辛口の酒」に変身する。だから、日に日にレベルアップしている現代の日本酒業界では、飲んだ瞬間に脳天を直撃するような美しいうまみのあるスゴイ酒を醸している蔵は、きつい炭濾過など、もったいなくてかけていません。


(2)へ続く













稲垣 えみ子(いながき・えみこ)プロフィール


1987年に朝日新聞記者となり、社会部、週刊朝日編集部、大阪版編集長などを経て、2010年4月から地域ニュースディレクター。プライベートではヨガインストラクターの資格を持つ健康マニアで、生ゴミ堆肥によるベランダ菜園と、裏山(六甲山)登山が趣味。












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最終更新日  2012.05.26 10:55:26
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