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加藤浩子の La bella vita(美しき人生)

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June 6, 2019
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先週のことですが、所属している日本ヴェルディ協会の主催で、イタリア・オペラの分野で大活躍中の評論家香原斗志さんをお迎えし、講演会を行いました。
 テーマは「イタリアにおけるヴェルディ上演の現在」。大変興味深いテーマで、平日の夜にもかかわらず40名ほどが見えて盛況でした。
 香原さんのお話は、まずは「伝統」への疑義。いわゆる「イタリア・オペラの黄金時代」に代表される、素晴らしい立派な声で歌われることが「伝統」になってしまっているが、それは果たして楽譜に書かれている通りなのか。作曲家の意図にかなっているのか、というところから入り、昨今、批判校訂版も出版され、作品が書かれた時の形が明らかになってくると、それは今「伝統」と言われている演奏法とは違う。もともとの楽譜に書かれているのは、声をはりあげるのではなく、もっとニュアンスに富んだ、繊細な、ベルカントの技法を踏まえた歌い方だということです。
 考えてみれば当然のことで、当時活躍していた歌手たちはベッリーニやロッシーニやドニゼッティが得意だったわけで、ヴェルディももちろんそんな彼らを前提にして書いている。ヴェルディになっていきなり声が立派になるとか、声をはりあげるとか、そういうことはありえない、というわけです。
 比較対象の音源や映像も豊富で、参加者からは「大変面白かった」という声が多く出ていました(冒頭で、立派な声のデルモナコと、繊細さがまさるカウフマンのラダメスの比較、とてもわかりやすかった)。ユーモアを交えつつ、熱気あふれる香原さんのお話ぶりも好評でした。
 見せていただいた映像のなかでは、トリノの「第一次十字軍のロンバルディア人」で歌っていたアンジェラ・ミードがよかったなあ。ミードは生で聴いていないので、ぜひ機会を見つけて聞いてみたいです。
 個人的に香原さんのお話をきいていて思い出したのは、一昨年インタビューしたフランチェスコ・メーリの話。メーリは一昨年の夏にザルツブルクで、ムーティの指揮で「アイーダ」のラダメスを歌ったのですが、ムーティと楽譜を徹底的に研究した結果、とても繊細でニュアンスに富んだ歌い方になった。それは、一部の聴き手には批判された。彼らが期待していたような、立派な声をはりあげるものではなかったから。でも「楽譜通りにやったらこうなった。それが好きか嫌いかはまた別の問題」と、何度も強調していたのでした。同じことだと思います。

 この4月、トリノに、ヴァイオリニスト&指揮者のファビオ・ビオンディの取材に行った時も、同じような話が出ました。「伝統」というのが、いかにオリジナルと異なっているかという話です。食べ物がいい例だ、とビオンディは言いました。たとえばパルマの名物ハードチーズで、法律で決められた産地や製法の認定マーク、D.O.Cがついているパルミジャーノ・レッジャーノは、このチーズが生まれた時と今では味が全然ちがう!のだそうです。
  
 日本ヴェルディ協会では、このような講演会やイベントを年に5−6回開催しています。会員は無料です(年会費は一般会員で1万円です)。終了後はほぼ毎回、講師を囲んで懇親会を行っています。オペラ好きの方、ぜひご入会ください。ヴェルディアン以外も大歓迎です。楽しいですよ〜。

日本ヴェルディ協会





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最終更新日  June 6, 2019 04:28:48 PM


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