「今日一日生きて」
・3、23、土
我々は自分たちの人生において「正しい」とはなにか?を常に自分の頭で考えることができなければならないと常々僕も思う。
ここで述べられているのは科学的環境の問題についてだが、我々はその日常の中で自らの行動にそれを問わねばならない。
しかし「正しい」という観点を社会や他人の定義することに合わせたり流されたりしては意味がない。
「正しい」の定義は常に自分の中にだけある。
よって物を盗むことを「正しい」とする個人も存在することになる。
自分にとっての「正しい」を冴えた頭で定めて行くのはとてもとても難しい。
それはすでに哲学でもある。
しかしまた人間社会の中で生きる限り、他人に理解される「正しい」もどうしても必要となって来る。
では我々はオギャーとこの世に産まれ、一体何処で自分なりの「正しい」に行き着く思考を身に付ける、もしくは植え付けられるのか?
家庭、教育、信仰などの自分を取り巻く環境一般であろう。
そんな様々な条件の中でも、我々は兎に角「自分の頭でものを考える」という訓練を積まねばならない。
まず一つ下記の武田氏の例だ。
今我々は中国から飛んで来る黄砂、PM、花粉に苦しんでいる。
何故そう思うかというと、テレビ報道や他のマスコミでそう言っているからではないのか。
黄砂が本当に我々の体に悪い影響を及ぼしているのか?
PMは本当に悪い影響を及ぼすほど飛んで来ているのか?
武田氏はこれらに疑問を投げかけている。
『{事実→整理→意見}という順序が必要だ。決して{好き嫌い→意見→事実}にならないように注意しなければならない』と言う。
しかしその思考順序は訓練になるが、武田氏の疑問が本来的を得ているのか?
実際我々の気管支の中では非常なアレルギーを起こしてはいないのか?
こういった環境の問題は、測定する術も、科学的知識も持たない我々にとって「何が正しいか」を考える術さえない。
しかしすべてにおいて自分の頭で考えようとする訓練にはなる。
そして自分の頭で考えようとすれば、この日本では必ず疎まれることになる。
アンリ・シャルパンティエという洋菓子のメーカーが僕は嫌いである。
僕自身の舌が悪いバター、悪い砂糖、儲けだけが目当てのポリシーのない営業を感じ取るからだ。
もちろんこれは僕自身の感じることで、それは間違いかもしれない。
しかし皆口を揃えて「美味しい美味しい」とそれを食べる。
でも有名なメーカーの名前に舌自体が機能せずに、思い込みだけが機能しているということはないだろうか。
武田氏の理論で言えば「中国は嫌いだから、黄砂もPMも悪い」と同じだ。
人に惑わず、社会に惑わず、アルプスのおんじを目指す。
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「正しい」とはなにか?横糸編(1) 黄砂とPM
「tadashii01kousatdyno.94-(9:14).mp3」をダウンロード
3月に小学館から「「正しい」とはなにか?」という本を出しました。多くの方が「
何が正しいか」を考える時に、高校時代に勉強したソクラテス、カントなどを思い浮
かべるかも知れません。でも、それだけでは日常的に起こることについて「正しいか
どうか?」を自分で判断するのはかなり難しいのです。
たとえば、消費税アップに伴って自民党は「消費税アップ還元セール」のようなもの
をスーパーなどでやるのを禁止する法律を作ろうとしています。私のように「日本は
自由主義国家」と思っている人にとっては、「なぜ還元セールが悪いの?」という気
がしますが、自民党は「悪い」と思っているらしいのです。
また家族で親子げんかや夫婦げんかが絶えない人もいますが、「なぜ、ケンカするの
?」ということをあまりしっかりとは考えていない人もおられます。私は大学で15年
ぐらい「正しいとはなにか」という講義をして来ましたが、良く学生が「先生の講義
を早く聴いておけば良かった。ケンカをしなくてもすんだのに」とレポートに書きま
す。
そこで、本の出すのに合わせて、本は「ある考えに基づく縦糸」のようなものですか
ら、「ガリレオ放談」(小学館のブックピープル)と「ブログ」で横糸を書きたいと
思います。第一回は黄砂とPMです。
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黄砂は数1000万年前から絶えず大陸から日本列島に降ってくるもので、「自然現象」
だ。一方、PMは石炭を焚いたりディーゼル発電などからでる人工的な物質です。黄砂
が無機質、PMは有機物なので、水と油のような違いがあり、まったく別もので、また
「黄砂にPMがくっつく」などということはない。
中国の砂漠などの大地から黄砂が発生するが。黄砂は太古の昔から日本に飛んできて
、日本の大地を作り、食物を育て海を豊かにしてきた.黄砂は弱アルカリ性なので、
とても良いものだ。
ところが、役所や最近の報道はややいい加減なので、黄砂とPMを両方「大気汚染物質
」として一緒に測定したり、記事に書いたりしている。もともと、アメリカで大気中
に浮遊する微小物質がPM10とかPM2.5 のような指標で示すことが決まったときには「
砂塵のような天然物を除く人工物」となっていたが、日本の大気汚染法令では天然物
を除いていない。
黄砂は粒径が数ミクロン(4ミクロンぐらいが中心)だから、PM10にもPM2.5 にも入
る。PM2.5は2.5ミクロン以下と報道されることもあるが、2.5ミクロン以下の粒子が5
0%ある粒子群を言っているので、4ミクロンの黄砂も入る。
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このように現在のPMの発表や規制値は「いい加減な定義、測定、発表」ということで
行われ、それを元にして「中国はケシカラン!」と非難している人がいるが、このよ
うなことは「事実を曲げて相手を非難する」ということになるので、「南京事件で中
国が事実に異なることを言っている」というのと同じレベルになってしまう。
またPMの最初の事件は1953年12月のロンドンスモッグだが、ロンドンスモッグも含め
て何回かあったが、隣の市や隣の国に人的な影響があったことはない。その意味では
中国のPMが日本に影響を及ぼすというためには歴史的な事実、流体計算、気象解析な
どを十分に行う必要がある。
第一、PMの報道がほとんど東京などの都市に限定されていて、中国からのPMと分離す
るのは詳細な分析をするか、もしくは日本の地方の測定値を公表する必要がある。
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この例は「正しさ」を考える上での前提条件のような初歩的な例で、まずは事実を正
確に整理しなければならないことを示している.「どれが正しいか」、つまり自分の
意見を定めるためには、{事実→整理→意見}という順序が必要だ。決して{好き嫌
い→意見→事実}にならないように注意しなければならない。
(平成25年3月17日)
武田邦彦