昼から白手袋ギャルソンの給仕って……
昨日は成城マダムのイラストレーターОさんとランチしながら次号の打ちあわせ。巻頭特集、大小取り混ぜて20点以上あるのに、ラフ提出は今週金曜という鬼畜のごとき仕事を発注したので、うしろめたさにこちらから出向く。最近はもう、メールとデータ送信だけで仕事が済んじゃうので、Оさんと会うのも1年半ぶりぐらいだ。最初にОさんの案内に任せて、芸能人がよく来るというそば屋「庵」で二色蕎麦をいただく。芸能人に興味がないので、どうせサインだらけの店だろうと思っていたら、ちゃんとした手打ちそばのお店でちょっと安心。季節のさくら蕎麦とせいろが半々ずつ盛られたせいろが出てくる。せいろは更級系であくまで上品。細くて固めのそばがおいしい。でも個人的には薮系のそばが好きさ。さくらそばは、ほのかにさくらが香るぐらいで、色も控えめ。先日、深川で食べたさくら蕎麦は思いっきりピンクで桜餅の味だったけど、こっちは上品だな。もしかして深川のは着色料でも入ってた? でも蕎麦粉だけで打っているらしく、蕎麦が短いうえ、たやすくプツプツ切れるよ……。次いで打ちあわせも兼ねて、昨秋、駅ビルに出来た成城コルティ内にあるシェ松尾のカジュアルラインレストラン、グランファミーユシェ松尾に行く。松濤の本店は、昔一度だけ言ったが、雰囲気は好きだが料理はあの値段(酒込みで1人3万くらい)にしては、特に感動するほどのものではなかった。そしてここはフレンチなのにアフタヌーンティーセットがあったりと、闇鍋状態のレストランで、都心からちょっと離れた場所だから、消費者のニーズになんでも応じないとやっていけない様子が手に取るようにわかる(笑)。シェ松尾も質が落ちたというべきか、辻口シェフ並に多角展開に命をかけているというか。デセールメニューしか確認していないが、まさかカレーやハンバーグがあったりしないだろうな。店内はゴージャス感はなく、あくまでシンプル路線だが、入っていきなりテーブルに案内されるまでの数十秒を待つためのソファセットが。夜はウェイティングバーを兼ねるのか、ここでシガーでもたしなむのか。ちょっと違和感。テーブルはさすがにダブルリネンだが、不織布使っているのは気にくわん。ランチタイムだけかな? 午後2時すぎだというのに、まだ優雅にランチを楽しんでいるマダムたちや、お茶を楽しむグループで、席は半数ほど埋まっている。そしてその7割がちゃんとしたスーツ姿。ななななんですか、ここは! 昼からドレスコードでもあるんですか? それとも成城ではこれがデフォですか?あああ今日はアクアスキュータムのトレンチにスカート穿いてきてよかったよ。かろうじて「負けないもんね」オーラを出せた。でもおにいちゃんにコートを脱がせてもらえたなかった(涙)。一方、駅から徒歩10分のところにお住まいのОさんは、まるきりクロワッサン主婦みたいなアースカラーのペザントドレス。これはこれでいいんだな。だって、私が普段着ているような1万以下の服じゃないもんな。(食後にのぞいたセレクトショップで、「あ、これ安い!」とОさんがのたまった、私には1000円ぐらいにしか見えなかった割烹着みたいなスモックが、20,000円也。成城価格おそるべし)。それよりコミドランかシェフドランか知らんが、スタッフが白手袋はめているのは、なんか秘書ものの読みすぎ(映画なんかの見過ぎ)ですか? 生白トリュフとか特殊な高級食材を扱う際に手袋つけるのはわかるが、普通にコーヒーと菓子を給仕するのに、なんでそんなものが必要? あ、でも器が透明なガラスだったので、指紋がつくのを避けるためなんだろうか? 別にクリスタルでもないのになあ。スタッフはいかにも土地柄に合わせて選びましたって感じの、小顔で育ちのよさそうなおにいちゃんだったが、やはり日本人が白シャツに黒ベストで白手袋はめてサーヴするのは、どうも違和感がある。そういう私はジーヴスシリーズの読みすぎだ。それに、かわいそうに、木綿の手袋って意外と滑るんだよねえ。以前、誰かに連れていってもらったレストランで、手袋はめてデキャンタする手からボトルがずり落ちたのを観たことがある。自分たちの席ではなかったが。おされと見栄えのためとはいい、あんまり意味ないからこういう小細工はやめたほうがいいよ。ガラスの器だって、トレイに乗せて持ってきて、底とエッジを持てばいいんではないの? まあ文句言ってもはじまらんが。 ちまちまと一口サイズ以下のデセールが6種類並んだプレートは、女子どもが喜びそうなかわいさだが、おいしいものは特にない。全部合わせても普通のケーキ1個分の量に満たないし。でも、さくら色のさくらアイスは、卵控えめなジェラートタイプでさっぱりしていておいしかった。なんかなつかしいアイスの味。それもシェ松尾の名で出すには間違っている気がするが。それよりストロベリーのマカロンが真っ赤ッ赤でとても口に入れるものには思えなかった。天然材料だけであんな色が出せるのか? だらだらと2時間近くおしゃべりしていたら、私たちを含めて2組しか客がいなかった。そして客がいる限り立っていないといけないおにいちゃんは、しびれをきらしてコーヒーのサービスをしてくれた。Оさん「あら、ここおかわりタダなん?」ギャルソン「お客様、こちらはサービスでございます」……恥ずかしいよОさん……。さくらそばにさくらアイス。東京はもう葉桜なのに、ちょっと遅れた口内桜祭りだった。Оさんとは、少女漫画で育つと、いかに男で失敗するかについて話が盛り上がる。失恋でうつを発症した20代女性のほとんどが、少女漫画に出てくる男性が理想で、現実とのギャップに悩み(騙され、捨てられ)、精神を病んでしまうらしい。やっぱり人間、10代後半ぐらいで一度虚構の世界から足を洗うことは絶対必要だ。自分もそれができなかったクチなので、オトコを見る目のなさには自信がある(笑)。さすがに今は見た目だけで恋に落ちるようなことはないが、脳内の理想像と現実のギャップにそりゃあ苦しめられたもんさ。少女マンガは(そしてBLの多くも)、出てくる男性、みんなヒゲも生えないような、脛下も、無論胸毛もないようなツルツル男子ばっかりだからな、まず生理的にだめだったりするんだよな。二次元に萌えておたく活動している女子は、だから現実の恋には敢えて目を背けているんだな。おねいさんはその気持ち、よおくわかるぞ。このあたり、三浦しをんさんが胸毛好きというのがちょっと意外だった。そうそう、今読んでいるのは3月に出た三浦さんの新潮文庫「夢のような幸福」。相変わらず萌えが炸裂していて笑える。