エアフォース・ワン
【エアフォース・ワン】「アメリカ合衆国は姿勢を変えます。これからは政治的利益よりも、人道上、正しい道を取ることを優先させます。暴力は政治の武器ではない。それを用いる者を、我々は決して許しはしない」『エアフォース・ワン』は1997年の作品だが、今見てみるとつくづく「時代は変わったな」と感じてしまう。19年前なのだから当たり前だと言ってしまえばそれまでだが、今なら保守派のクリント・イーストウッドでさえここまでの愛国精神は前面に押し出さないであろう。とにかく「強いアメリカ」をアピールするのみならず、合衆国のためなら命をも惜しみはしないという自己犠牲精神がそこかしこからプンプンにおう。キャスティングも大統領役にハリソン・フォードを持って来るのだから、完全に不死身で負け知らずのイメージをねらってる感がアリアリだ。(ちょうどブルース・ウィリスのキャラが「不死身の男」というイメージで定着しているのと似ている。)作品は「空飛ぶホワイトハウス」の異名を取る合衆国大統領専用機(エアフォース・ワン)が舞台となっている。 ストーリーはこうだ。カザフスタンに非合法なテロ政権を誕生させた独裁者であるラデクを、アメリカはロシアの協力のもと、逮捕するのに成功した。アメリカの大統領であるジェームズ・マーシャルは、モスクワで開かれた祝賀会におけるスピーチで、「テロには決して屈しない」と断言する。その後、大統領らはエアフォース・ワンに乗り込んで帰国の途につく。搭乗したのは大統領を始め、その妻と娘、政府高官や警護官、さらにはロシアのテレビ・クルーなどであった。ところがこのロシアのテレビ・クルーは、全員テロリストだった。エアフォース・ワンが離陸してまもなく、特別警護室の職員3人を射殺したのを皮切りに、テロリストらは銃器を入手し、コックピットを占領。テロリストらの要求はラデクの釈放で、実現するまでは30分ごとに1人ずつ処刑すると突き付けた。警護官らは必死に大統領を守り、命と引き換えにパラシュート付き脱出艇に乗せようとするものの、大統領はみなを見捨て一人だけ脱出するなどということはできなかった。そこで、脱出したと見せかけて、密かに機内に潜伏するのであった。 『エアフォース・ワン』の見どころは、航空機という、いわば密室の中でくり広げられるアクション、そしてパニックである。テロリストからいかにして大統領を救出するのか。人の命と引き換えにテロに屈してしまうのか。オーソドックスだが手に汗握る、見ごたえのあるテーマとなっている。 主人公に扮するハリソン・フォードは、このときまだまだ若々しい。素手で敵にパンチを喰らわせるシーンなどキレキレで、アクションとしてはお見事である。テロリスト役ゲイリー・オールドマンも、このキャスティングは完璧なハマリ役だった!名悪役として申しぶんない。作中、BGMとして勇ましく流れている音楽はとても良かった!だれもが様々な機会に、必ず一度は耳にしたことがある勇壮な曲である。 作品は全体を通して「強いアメリカ」を意識した完全無欠のハリウッド映画である。多少、時代性を感じさせるところもあるけれど、それもご愛嬌。アクション好きの方にはおすすめだ。 1997年公開 【監督】ウォルフガング・ペーターゼン【出演】ハリソン・フォード、ゲイリー・オールドマン