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カテゴリ:訃報
志ん生に 会えると春の 黄泉の道 変哲(小沢昭一) 師走としては近来稀に見る寒波に覆われた雪の日に小沢昭一氏は逝かれました。 多才多芸で有名な氏は「変哲(へんてつ)」という俳号を有し、面白い句を残されていますが、掲句は数ある(笑)辞世句のうちのひとつです。 この期に及んでどうなるかわからないからと、あらかじめ辞世を詠んでいるところが実にアッパレではありませんか! 掲句の「春」は氏が望んでいたからです。 「人間は生まれた日に死ぬべきもの」といい誕生日の4月6日を黄泉に旅立つ日と「想定」していたそうな。 だからこういう辞世句もあります。 出来すぎと 思うわが世の 春惜しむ とはいえ小沢昭一なる御仁は、こと最期に及んで慌てるような薄っぺらな方ではありません。 うかがい知る限り、氏は抜群の行動力と博覧強記なわけで、大胆力はそれによって具わり、そしてあの軽妙な語りが出来上がった、そういうことだと思います。 中日新聞(中日春秋)に面白い記事がありました。 『ある日、学習院高等科の生徒たちが一人芝居を見に来た。あまりに観劇マナーがいいので、数人を楽屋に招き入れた。いつものくだけた調子で応対したら、中の一人が帰りがけ小声で、「僕、アヤノミヤです」「母がファンです」。 殿下と知りさすがに内心慌てたが、態度を豹変するのも…とそのままの口調で、「そうかい、じゃ、オッカサンによろしくね」。』 こういうのを本当に胆が据わった人というのでしょう。 「そうかい、じゃ、オッカサンによろしくね」 このひと言は、あたかも光秀に命をとられんとする信長がまさにその時に別段慌てる風もなく、 「是非もない」 そう語ったのに比肩するほどの、後世に語り継ぐべき「ひと言」であり、大胆力を示す言葉だと思うのです。 ところで、辞世に志ん生をひいてくれた事が私にとってはうれしい(^o^)限りです。 志ん生はもちろん五代目古今亭志ん生のことであり、私が最も敬愛する落語家なのです(^^) いまごろ小沢さんは、彼岸で志ん生師の落語を聞いているのかなぁ。 「師匠、むこう(此岸)で、演目を考えてきたんですがね」 そういいながら懐から赤を入れた演目のリストを取り出して志ん生師に見せたりしてね。 考えてみれば、むこう(彼岸)には志ん朝さんもいるわけだから、小沢氏にとってはまさに天国というわけです。 談志が小さん師にたてついたら、やんわりと意見したりしてね。 何だかむこう(彼岸)は楽しそうだぞぉ~ ここはイッパツ「明日は天国のココロだぁ!」とほえてくださいね、小沢さん♪ 小沢昭一、享年八十三歳。 謹んでご冥福をお祈り申し上げます。 ~追記~ 「大声で歌う歌に、文化的な香りのするものはありませんな」 小沢さんのひと言、時節柄「歌」を「演説」に置き換えてみると含蓄の深さがわかります♪ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2013.12.07 10:56:38
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