なのか目
疲労困憊して家のドアを開けたら、さっき開けたはずのドアが目の前にありました。私は確かに、いつものように「514号室」のドアの鍵穴に鍵を入れ、気だるく左に回し「ガチャ」という無機質な音を聞き、ドアを開ける習慣として当然のように取っ手を握り、扉を開いたのです。一連の行動の結果が、目の前のドアなのです。しばらくその場で考え込み、一つのぼんやりした納得が頭に浮かびました。「防犯の為、管理会社が二重ドアにしたのか!」成程。これは泥棒視点でこの状況を見なくてはいけないのだな。ふむ。忍び込もうとした家のドアを開けたらまたドアだった!「もう私泥棒やめます!普通の泥棒になります!!」良い話…!と心が温かくなった所で、私は疲弊している事を思い出しました。お部屋に入りたい。「まっかろーん!じゃんぼーう!」って叫びたい。カーテンに絡まって「DON'T TRY…DON'T TRYですよ…」って呟きたい。「どぉおぉぉぉぉぁああぁぁああ!!!!!!!!」ですから、また一連の動作を丁寧に行ったのですよ。そしたら、また、ドア、なの、です、よ。その時…アナフィラキシーショックって言うのかな?実は私自身が蜂なのですけれど、自分の毒に耐性が無かったみたいで、めまいや呼吸困難が波のようにやってきたのです。流れていた音楽が歪み始め、人の笑い声が混ざり、鼓膜の内側に流れ込んでくる不快感。行き場の無い吐き気、目の前の流れ星、空気の無い呼吸リズム…私のスイッチは切れました。どうして今こうやって部屋に入れたのか分かりませんが、明日もあの状態だったらドアを爆破してやろうと思います。今日はそんな一日でした。 おしまい