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カテゴリ:演劇、観劇
言葉を並べたてると薄っぺらになってしまいそうで怖いのですが、今まで味わったことのない緊張感、とでも言いましょうか。
もちろん上演時間2時間の観客の関心は、二人の登場人物の関係性に向けられていました。 突然訪れて来た若い女性(伊藤歩)、それを歓迎しない素振りの中年男性(内野聖陽)、そして舞台はオフィスビルの雑然としたロッカールーム。 幕が開いて、まずこの情景が観客の目に飛び込んできました。 この芝居を楽しむには、とにかく状況を把握しなくてはなりません。 ボールの投げ合いのような会話。 まるで関係の優位性を表すようなボールが、行ったり来たり。 時にはそのボールは逸れ、転がったり、そのうちどちらか一方が掴んで放さない、そんな状況が訪れます。 なかなか相手に渡らないボールの行方を傍観しながら、これはリーディングでも面白いのではないか、そんな想いが頭をもたげてきました。 そして…。 迎えるクライマックスの、この視覚的なインパクトといったら!!! もう、ボールの行方なんかどうでもよくなりました。 今まで漏らすことなく聴いていた情報が伏線となり、この衝撃のためにあったのではないかとさえ思えます。 演劇の舞台ならではの趣向かもしれません。 膨大な量の会話劇ですが、ムダはありません。 ゆるめられていた緊張の糸が、キュッと引っ張られたような状況に、声も出ませんでした。 ブログラムによると、作者のデヴィッド・ハロワーは1966年生まれ、作品も約5年前にイギリスのグラスゴーで産声をあげたのだそうです。 今の時代を生きる作家の作品に、同世代の感性で触れられることに、これから先の観客の楽しみを得たような興奮すら覚えました。 若い女性を演じた伊藤歩の登場時には陶器のように美しく無表情だった顔が、終盤は人間味と言うより野生味を帯びています。 その顔が実は芝居の核なのではないのかと、舞台作品の醍醐味もたっぷりと味わいました。 作・デヴィッド・ハロワー、演出・栗山民也、 翻訳・小田島恒志、美術・島次郎、照明・勝柴次朗、音響・山本浩一、衣裳・宇野善子 ※公演詳細は、ホリプロのサイトで。 (世田谷パブリックシアターにて) ☆「悲劇喜劇 2009年 08月号」早川書房 『ブラックバード』の戯曲が掲載されています。(劇場でも販売中) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009.07.30 23:56:34
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