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cms@ebisu

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2010.04.10
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カテゴリ:演劇、観劇
東京裁判の詳細は年号を覚えることだけで事足りたのが、それとも不勉強な私が覚えていないのか、ついに歴史と向き合う時が来ました。

井上ひさしの戯曲は、とにかくとっかかりが入りやすい。
そして登場人物の歌うメロディーが最後まで、帰り道に至ってもずっと耳に残っています。

ふと、井上作品がミュージカルや音楽劇とされない理由を考えてみました。
不思議と今まで音楽的な角度から作品を捉えたことはありません。
世間一般にもミュージカルという扱いはされていないようです。
劇中の音楽は、観客の胸に染み入る手段の一つ、演出に過ぎないのかもしれません。
そしてちょうど今、私がこうしているように、劇場を後にしても芝居の情景がメロディーとともに走馬灯のように甦り、気にかかる言葉をひとつひとつ辿る作業が続くのです。

さて物語は、昭和21年、日本がアメリカの占領下に置かれて東京裁判が始まるという時、紙芝居屋の親方、田中天声(角野卓造)は突然、GHQ・国際検事局から検察側の証人として東京裁判に出廷することを命じられました。
裁判に出廷した後、天声は東京裁判にはカラクリがあるのではないかと思い始めます。
一国民の目線で抱くそのカラクリとは…。

この作品を含む東京裁判三部作は、2001から2006年にここ新国立劇場で上演される際に書き下ろされたそうです。
井上ひさしの作品は、初期の頃から全く輝きを失わないものだと思います。
日常から戦争に触れて、戦争を知らない観客に、いかに悲しい出来事を生むものかをささやき、時には叫んでいるように感じられます。

プログラムの冒頭には、こう書かれています。
 「いつまでも過去を軽んじていると、
  やがて私たちは未来から軽んじられる
  ことになるだろう。
               井上ひさし


これが作家の鳴らす警鐘だったとしたら…残念なことにもう新作で、戦争や隠された疑問について「知らない」人々に知らせることは叶わなくなってしまいました。

観劇の翌日、11日早朝のニュースで、作家の訃報が流れました。

これからは残された作品が繰り返し上演されるよう、観客として声をあげたいと思います。

作・井上ひさし、演出・栗山民也、
音楽・クルト・ヴァイル、宇野誠一郎、音楽監督・編曲・久米大作、美術・石井強司、照明・服部基、音響・黒野尚、衣裳・前田文子

※公演の詳細は、新国立劇場のサイトで。

(新国立劇場 小劇場にて)

☆作・井上ひさし「夢の裂け目」集英社
 

☆作・井上ひさし「夢の泪」集英社
 

☆作・井上ひさし「夢の痂」集英社





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最終更新日  2010.05.24 01:40:31
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