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カテゴリ:演劇、観劇
紀伊國屋サザンシアターでの上演は終わりましたが、関東では鎌倉で観劇のチャンスがあります。
この作品は小津映画の「麦秋」「晩春」をモチーフに平田オリザが現在に置き換えて書き下ろした作品です。 「麦秋」の舞台は鎌倉の極楽寺。 こちらも舞台となる家は極楽寺という設定で、この家に集う人々の話を聞いていると、どこからどこへ歩いたなど情景を思い描きながら観る楽しみもありました。 幼い頃に母親を亡くして、父娘二人暮らし。 そこに大学教授である父の同僚や教え子、そして親戚まで多くの人々が出入りして、家というものが温かく感じられました。 人々が集まる場所、小津映画では、それが家だったような気がします。 嫁にいかない娘、60歳を過ぎてシングルの叔母など、独身女性には耳の痛い話かと思いきや、彼女たちの生き方が実に颯爽と、凛として愛情深く描かれていました。 お節介を焼く親戚も、つまるところは思いやり。 平田オリザの現代版のこの作品では、家族一人、二人暮らしの人々も、この家に集い、憩い、議論して、その傍らではアイロン掛する生活の匂いもあり、家というものに実に愛着が感じられます。 セリフの端々に聞かれる自然と共存する人々の豊かな心に触れて、居心地の良さを感じました。 突然娘が結婚を決意することで、「存在」であった父親の内面が浮かび上がってきます。 そして結婚を決意した娘の、自分の気持ちに気付く瞬間。 その思い切りが潔くて可愛らしく見えました。 この作品の居心地の良さは、人々が思いやり、支えあって、彼らの人生がまだまだこれからも続くところにあるのではないかと思います。 演出は今年94歳の戌井市郎。 瑞々しさが演出に溢れています。 作・平田オリザ、演出・戌井市郎 装置・石井強司、照明・山内晴雄、音響効果・望月勲 ※鎌倉は、6月19日(土)鎌倉芸術館 小ホールで上演されます。 チケットの詳細は鎌倉芸術館のサイトで。 ※公演の詳細は、文学座のサイトで。 (紀伊國屋サザンシアターにて) ☆「悲劇喜劇 2010年 06月号」早川書房 文学座特集とともに、『麦の穂のゆれる穂先に』戯曲が掲載されています。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2010.06.15 19:03:38
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