不法在留外国人は増え続けている~入管難民法改正について
通常国会で「入管難民法改正案」が審議されている。すでに衆議院は通過し、いまは参議院での審理が続いている。現行の入管難民法には問題点が少なからずあり、現在わが国が抱える不法在留外国人の問題に適切に対処できないからだ。この法案は菅内閣において国会提出され成立がなされるはずだった。ところがある一件がもとで法案の成立が断念された経緯がある。2021年3月に名古屋出入国在留管理局の施設で亡くなったスリランカ人女性の件だ。左派野党と支援団体などがこの件を強く訴え抵抗し、また政府・与党側も国政選挙を意識したことなどから法案成立はならなかった。いまこの改正案をめぐって一部野党や支援団体らが再び反対運動を続けている。その前面に掲げるのは、やはり亡くなったスリランカ人女性の悲劇だ。反対運動には故人の遺族も参加している。しかし、スリランカ人女性の死には入管側の対応だけにすべて責任があるとは思われず、故人にも相応の責任があったと考えられるので、ここで再びこの件の概要を示しておきたい。-------亡くなったのはウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)で、2017年に留学生として来日した。来日後日本語学校に通っていたというのだが、なぜかその学校を1年足らずでやめ、交際相手のスリランカ人男性とともに静岡県の三島市に移り同棲していたという。このスリランカ人男性は質の悪い人物のようで、ウィシュマさんは男性から暴力を受けていたようだ。そして彼女の在留期限が2020年8月に切れ、彼女が生活費の半分を負担できなくなると、男性は彼女をアパートから追い出したのだという。行き場を失った彼女はやむなく交番に駆け込んだのだが、不法残留の疑いで逮捕され入管施設に収容された。遺族の支援者側は(実質的に)「入管職員による業務上過失致死」の疑いを主張し、これに野党側政党(の一部)が同調して国会でこの件を問題視した。しかしあり様は、団体等による“人権”を盾にした政治運動の面が強く、野党側政党(の一部)は「入管法改正」を阻止するためにこの件を狡猾に政治利用していたように見えた。なぜなら、彼らはウィシュマさんの「大人としての個人の責任」と「法治国家における秩序維持」という点についてはまったくスルーし、留学生として来日した彼女が目的を逸脱し不法残留者となった事実には触れなかったからだ(今も同じ)。彼女は教養のある人だったはずだから、自身の行動を客観的に見れなかったはずはない。「入管職員が見殺しにした」かのごとき訴えは、人権活動団体側にとって都合のいい、あまりにも一方的な物言いではないか。私はこの件に関してNHKとTBSで放送された特集番組を見た。来日する前の生前の彼女の写真が多く映され、単独や家族と映ったものなどあったが、妹さんたちと一緒に映っているものを見ると、妹さんたちと比較して彼女は明らかに痩せていた。テレビ番組の構成で彼女が入管施設に来てから急激に痩せたような印象をもたせる点には、やや疑念がある。それと、私はウィシュマさんの留学来日自体にも疑いを抱いている。彼女はなぜ勉学を放棄して、質の悪いスリランカ人男性と逃避行したのか?これは憶測だが、もしかしたら彼女と男性とは来日前から親しい関係(ネット、SNSで)にあり、来日は男性に会うことがその目的だったのではないか。“留学”はそのための方便だったのではないのか?亡くなったこと自体は痛ましいことと思う。しかし、彼女の来日後の足跡には疑いをもたれてもしかたのない面がある。移民難民ドイツ・ヨーロッパの現実2011-2019 世界一安全で親切な国日本がEUの轍を踏まないために [ 川口マーン惠美 ]