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《櫻井ジャーナル》

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2014.12.05
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 ロシアからEUへ天然ガスを輸送する新たなパイプラインになるはずだったサウス・ストリームの計画が御破算になった。ロシアから黒海を横断、ブルガリア、セルビア、ハンガリー、スロベニア、そしてイタリアへいたるルートだったが、ブルガリアがアメリカの圧力に屈して建設の許可を出さず、ロシアは見切りをつけた。替わってトルコへ輸送するブルー・ストリームを建設する。EUにとって大きなダメージだ。

south stream
サウス・ストリーム

 blue stream

ブルー・ストリーム

 かつてネオコン/シオニストから好かれていたハンガリーのビクトル・アルバン首相は最近、アメリカから嫌われているのだが、その理由もサウス・ストリーム計画にあったと見られている。ジョン・マケイン米上院議員はアルバン首相を「ネオ・ナチ」と呼んだらしいが、ネオ・ナチを使っているのはマケインなどネオコン/シオニスト。自分の本性を相手に押しつけて攻撃するのは彼らの常套手段だ。

 ブルガリアが計画を止める動きに出たのは6月。アメリカやEUからプラメン・オレシャルスキー首相が圧力を受けてのこと。計画の中止で仕事と相当額の利益を失うことになるが、EUも厳しい状況。欧州委員会のジャン-クロード・ユンケル委員長はパイプラインを建設できると述べているが、サウス・ストリームに替わるエネルギー源の確保は難しい。

 アメリカのシェール・ガスやシェール・オイルが増産されるという人もいるが、これには問題がある。勿論、今年の冬は間に合わないということもあるが、フラッキング(水圧破砕)という手法に対する抵抗が強まっているのだ。

 シェール(堆積岩の一種である頁岩)層まで掘り下げ、そこから横へ掘り進んで「フラクチャリング液体」を流し込んで圧力をかけて割れ目(フラクチャー)を作り、砂粒を滑り込ませてガスやオイルを継続的に回収するというのだが、この方法は自身を誘発すると言われ、化学薬品を使うために環境汚染が問題になっている。アメリカの農業を支えてきた地下水を汚染する可能性が高いのだ。

 また、シェール・オイルの採掘予測が間違っている、あるいは嘘だという指摘がある。つまり、シェール・ガスやシェール・オイルの産出量は増えないということ。しかも最近は石油相場が下落、コストの問題でビジネス的にも成り立たないくなってきた。「シェール・オイル幻想」も消えかかっているのだ。

 こうした状況の中、EUの支配層はアメリカの命令に従ってロシアとの商談を中断したのだが、そのひとつの結果としてサウス・ストリーム計画が中止になってしまった。EUの支配層は自分たちの魅力を過信し、ロシアは譲歩してくるとでも思ったのかもしれないが、惨めなことになっている。

 すでに今年5月にロシアは中国と天然ガスの供給契約を結び、11月には「西ルート(またはアルタイ・ルート)」の施設を使った新たな天然ガス供給が明らかになっている。そしてトルコとの契約。ロシアに見限られたEUはアメリカに頼らざるをえないが、そのアメリカの状況も怪しい。EUは窮地に陥った。

 かつてはヨーロッパに憧れていたロシアだが、ボリス・エリツィン時代に「西」の正体を知り、「民主化幻想」は消えている。今回、素早く「東」へ切り替えられたのは、そうした背景があるのだろう。

 ただ、EUの弱体化はアメリカにとって悪くない話。「潜在的ライバル」が消えることを意味するからだ。次はロシアということになるが、ソ連や帝政ロシアだけでなくロシアそのものを消滅させたいとリチャード・チェイニーは1991年当時、つまりソ連が消滅した頃に語っていたという。これはロバート・ゲーツの著書、『任務』(Robert M. Gates, “Duty,” Alfred A. Knopf, 2014)には書かれている話。

 ソ連を消滅させたクーデターで実権を握ったのがボリス・エリツィンで、その背後には西側の巨大資本が存在していた。エリツィンが台頭する前の段階でアメリカは秘密工作をスタートさせている。ひとつはアフガニスタンへソ連軍を引き込んでイスラム武装勢力と戦わせるという工作で、1970年代に始まる。これはズビグネフ・ブレジンスキーのアイデアだった。

 同じ時期、IOR(宗教活動協会。通称、バチカン銀行)を使った工作も進められた。イタリアの大手金融機関、アンブロシアーノ銀行と連携してポーランドの「連帯」へ違法融資して「民主化」を煽っていたのだ。この工作の背後には非公然秘密結社のP2が存在、これはNATOの秘密機関のひとつ、グラディオとつながっている。

 この当時、IORの頭取だったポール・マルチンクスはローマ教皇パウロ6世(ジョバンニ・バティスタ・モンティニ)の側近。モンティニは第2次世界大戦の前からヒュー・アングルトンとつながっていたが、そのボスがアレン・ダレスであり、ヒューの息子はCIAの防諜部門を指揮、秘密工作にも手を染めていたジェームズ・アングルトンだ。また、1978年、就任した直後に急死したヨハネ・パウロ1世から引き継いだヨハネ・パウロ2世(カロル・ユゼフ・ボイティワ)はブレジンスキーと同じポーランド出身である。

 ロシア制圧の要石はウクライナだと考えていたブレジンスキーは今年1月の段階で反政府グループへの支持を明言、クーデター後の展開が思惑通りでないことを懸念したのか、5月にはクーデター政権へ軍事援助するように主張している。計算違いを武力で押し切ろうとしているように見える。






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最終更新日  2014.12.06 05:09:12



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