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《櫻井ジャーナル》

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2018.09.12
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 シリアの北西地域にあるイドリブはトルコに接し、ジハード傭兵に支配されてきた。その地域を奪還するため、シリア政府軍とロシア軍は空爆を始めているようだ。アメリカ政府はロシア政府を恫喝しているようだが、効果があるようには思えない。

 この傭兵にはアメリカ系のグループとトルコ系のグループが存在、アメリカを後ろ盾とするタハリール・アル・シャーム(アル・ヌスラ)はアル・カイダ系。アメリカ大統領の​ブレット・マクガーク特使はこの地域について、9/11からアル・カイダの最も大きな避難場所だと表現​していた。

 アメリカを含む外国勢力が2011年にリビアを侵略した際、NATOがアル・カイダ系武装勢力LIFGと連携していることが明確になり、その戦闘員が武器/兵器と一緒にシリアへ移動したことも明らかになった。つまり、シリアへもアル・カイダ系武装勢力が攻め込んでいることが否定できなくなった。

 そこでバラク・オバマ大統領(当時)は「穏健派」というタグを持ち出して誤魔化そうとしたが、2012年8月、アメリカ軍の情報機関​DIA(国防情報局)はシリアで政府軍と戦っている勢力について、サラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)、ムスリム同胞団、アル・カイダ系のAQI(アル・ヌスラを実態は同じだとDIAは報告している)だと報告​している。オバマ大統領がいうところの「穏健派」は存在しないということだ。

 DIAはバラク・オバマ政権の反政府勢力への支援がシリアの東部(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配圏を生み出すことになるとも警告しているが、これは2014年以降、ダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)という形で現実になった。その年にマイケル・フリンDIA局長は解任されている。

 DIAが報告を出した2012年8月、オバマ大統領は直接的な軍事介入の「レッド・ライン」は生物化学兵器の使用だと宣言した。シリア政府軍を攻撃して体制転覆を目指すということであり、サラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)、ムスリム同胞団、そうした人びとによって編成されているアル・カイダ系武装集団を助けるということにほかならない。

 2012年12月に国務長官だったヒラリー・クリントンはバシャール・アル・アサド大統領が化学兵器を使う可能性を口にし、13年1月29日付けのデイリー・メール紙には、オバマ政権がシリアで化学兵器を使ってその責任をアサド政権に押しつけようとしているとする記事が載る。イギリスの軍事関連企業ブリタム防衛の社内電子メールに、そうした作戦をオバマ大統領が許可したという記述があるというのだ。(同紙のサイトからこの記事はすぐに削除された)

 2013年には3月と8月に政府軍が化学兵器を使ったという話が流れるが、いずれも嘘であることがばれている。これは本ブログでも何度か書いた。

 嘘が明らかになるまである程度の時間が必要だが、それまでの間にオバマ政権はアメリカ軍に攻撃を始めさせようとする。9月の上旬に実行するという話が流れる中、そのタイミングで地中海からシリアへ向かってミサイルが発射される。が、このミサイルは途中で海中へ落ちてしまう。イスラエルはミサイルの発射実験を行ったと発表するが、事前の警告はなく、ECM(電子対抗手段)が使われたと言われている。この直後、ロシア政府が主導、国連の決議を経てシリア軍は保有する化学兵器を全て廃棄した。

 そして2014年に登場してきたのが「残虐性」を誇示するダーイッシュ。そのダーイッシュを叩くという名目でアメリカ軍はシリア政府の承認を受けずに空爆を開始、シリアのインフラを破壊、後にシリア政府軍に対する攻撃も始めた。ロシア軍が介入するまでの約1年間、ジハード傭兵の支配地は拡大していく。

 その後、嘘が明らかになっても「化学兵器話」をアメリカ政府は持ち出す。その話を広める役割を果たしてきたのがSOHR(シリア人権監視所)やSCD(シリア市民防衛)。SCDは白いヘルメットと呼ばれることが多い。ロシア国防省によると、SCDは現在、化学兵器による攻撃を受けたとするシーンの撮影を行っているという。

 このSOHRはラミ・アブドゥラーマン(本名オッサマ・スレイマン)がイギリスで個人的に設置した団体だが、​イギリス外務省から約19万5000ポンド相当の支援​をしている。2011年にスレイマンはシリア反体制派の代表としてウィリアム・ヘイグ元英外相と会ったとも報道されている。

 今年(2018年)4月7日にシリア政府軍がドゥーマで化学兵器を使ったとSCDとジャイシュ・アル・イスラム(アル・カイダ系)が宣伝、それを理由にしてアメリカ、イギリス、フランスの3カ国はOPCWが現地を調査する直前の4月14日にシリアをミサイル攻撃した。ジャイシュ・アル・イスラムを指揮していたのはイギリスの特殊部隊SASやフランスの情報機関DGSEのメンバーで、MSF(国境なき医師団)が隠れ蓑として使われてきたとも報告されている。

 SCDは2013年3月にジェームズ・ル・ムズリエというイギリスの元軍人が編成、訓練してきた。この人物は2000年にイギリス軍から退役し、傭兵組織の特別プロジェクトの幹部になる。この組織の後にアカデミ(ブラックウォーターとして創設、Xeに改名、現在に至る)に吸収された。

 SCDの設立資金30万ドルはイギリス、アメリカ、そして日本から得ているが、その後、アメリカ政府とイギリス政府から西側のNGOやカタールを経由して1億2300万ドルが渡った。

 また、アメリカ国務省の副スポークスパーソンのマーク・トナーは2016年4月27日、SCDがUSAIDから2300万ドル受け取っていることを認めた。言うまでもなく、USAIDはCIAの資金を流すパイプ役。そのほか投機家で旧ソ連圏の制圧を目指しているジョージ・ソロス、さらにオランダやイギリスの外務省も資金を提供している。

 リビアやシリアへの軍事侵略ではイギリスやフランスが積極的に動いているが、SOHRやSCDの背後にもイギリス政府が存在。アメリカのリチャード・ブラック上院議員は先週、イギリスの対外情報機関MI6がシリアで化学兵器を使った偽旗作戦を進めていると語っている。

 イドリブでタハリール・アル・シャームとジャイシュ・アル・イスラムは手を組んでいる。が、正確に言うならば本体は同じで、タグが違うだけ。つまり、連合ではなく合流したと言うべきだろう。

 その後にドゥーマへ入って調査した​OAN(アメリカのケーブル・テレビ局)の記者​やイギリスのインディペンデント紙の​ロバート・フィスク特派員​は化学兵器が使われた痕跡はないと報告している。

 また、ロシア系の​この3カ国にドイツが加わる動き​は西側の有力メディアが化学兵器の被害者だとして報道した子どもとその父親を取材、その親子は化学兵器が使用されたという話を否定している。その後、現地入りしたOPCWのチームも化学兵器が使用された痕跡はないとしている。






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最終更新日  2018.09.12 06:00:09



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