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《櫻井ジャーナル》

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2022.08.01
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 2014年2月22日にビクトル・ヤヌコビッチ政権を暴力的に排除したネオ・ナチはその後もウクライナで大きな影響力を維持してきた。ネオ・ナチの代表格は「アゾフ」だが、その無法性、犯罪性が群を抜いているのは2014年9月に親衛隊として組織された「竜巻大隊」だろう。

 この大隊のメンバーは殺人、レイプ、拷問、誘拐、不法監禁、強奪、窃盗などを繰り返し、サディズムを趣味とする隊員もいる。レイプの対象には年少者も含まれていた。これでは単なる犯罪組織にすぎないが、他の親衛隊も程度の問題だけ。

 ネオ・ナチの総体や後ろ盾のアメリカ/NATOとしても邪魔な存在になったようで、2015年6月に解散させられ、隊員12名が逮捕されて非公開で裁判が進められていた。ロシア軍がウクライナへの攻撃を始めた後、そうした竜巻大隊の幹部がウォロディミル・ゼレンスキー大統領の命令で釈放されたと報道されている。(​ココ​や​ココ​)

 こうしたキエフ政権の親衛隊が行った残虐行為に基づいて「ロシア軍の残虐行為」なる話をでっち上げ、ロシア軍を悪魔化して描いていたのがウクライナ政府の人権オンブズマンを務めていたリュドミラ・デニソワだ。ゼレンスキー政権が偽情報を発信していることを世界の人びとが知り始めたと考えたのか、​ウクライナ議会は5月31日、根拠のない話を主張したとして彼女を解任した​。デニソワが偽情報を発表したことは問題だが、それに飛びついた人びとの責任も重い。

 竜巻大隊の場合、隊員が「自発的」に犯罪的なことを行ったのだろうが、ウラジミル・プーチン露大統領は4月下旬、CIAの担当者がネオ・ナチにそうした行為を指示していると発表、その担当者の名前もわかっているとしていた。

 プーチン体制になってもボリス・エリツィン時代に築かれた米英金融資本のネットワークは生きていたと見られているが、今年3月に興味深い出来事があった。そうしたネットワークで重要な役割を果たしていた​アナトリー・チュバイスが気候問題特使を辞任して国外へ脱出​したというのだ。

 チュバイスは1992年11月にボリス・エリツィンが経済政策の中心に据えた人物で、エリツィンの娘であるタチアナの利権仲間。HIID(国際開発ハーバード研究所)と連携していたが、ここはCIAの工作資金を流していたUSAIDからカネを得ていた。(Natylie Baldwin & Kermit Heartsong, “Ukraine,” Next Revelation Press, 2015)

 エリツィン時代にチュバイスはエゴール・ガイダルと同じようにラリー・サマーズの命令で動いていた。サマーズは1983年に28歳でハーバード大学の教授になった人物で、世界銀行の主任エコノミスト、財務次官、財務副長官、財務長官、ハーバード大学の学長を歴任。ロシア工作のためにサマーズが雇ったデイビッド・リプトンとジョナサン・ヘイはCIAのエージェントだ。(F. William Engdahl, “Manifest Destiny,” mine.Books, 2018)

 5月になると、​プーチン大統領の無給顧問を務めていたワレンチン・ユマシェフが辞任​したという。エリツィン・センターの役員だということらもわかるように、この人物は米英金融資本の手先だったボリス・エリツィンと緊密な関係にあった。

 ユマシェフは2001年にタチアナと結婚、ユマシェフの娘であるポリナ・ユマシェバと結婚したオレグ・デリパスカはロシアのアルミニウム産業に君臨するイスラエル系オリガルヒだ。デリパスカはイギリスを拠点とする富豪のナット・ロスチャイルドから「アドバス」を受ける一方、ロスチャイルド系の情報会社ディリジェンスの助けで世界銀行から融資を受け、政治面でも西側との関係を強めていた。

 3月から5月にかけてロシア国内で何か重大な出来事が引き起こされた、あるいは引き起こされそうになった可能性があるが、すでにロシア国内でカラー革命を実行する力は西側の支配層にはない。ロシアに残った西側のネットワークによる「宮廷クーデター」か暗殺が目論まれて失敗したか、事前に摘発されたということは否定できないだろう。

 米英の支配層にとってウクライナの制圧はロシア征服の準備にすぎない。ロシア征服は19世紀から続くアングロ・サクソンの戦略だ。その戦略のためにイギリスは明治維新を仕組んだと見るべきだろう。

 現在のウクライナ情勢は、短期的に見ても、ビクトル・ヤヌコビッチ政権が2014年2月22日に暴力的なクーデターで倒されたところから始まる。途中までEUは混乱を話し合いで解決しようとしていたが、バラク・オバマ政権は反発する。話し合いではヤヌコビッチを排除することが難しい。オバマ政権は暴力的な政権転覆を目指していた。

 そうしたアメリカ政府の方針を明らかにするビクトリア・ヌランド国務次官補(当時)とジェオフリー・パイアット米国大使(同)との電話での会話が2014年上旬にインターネット上へアップロードされた。

 その中でヌランドが口にした「EUなどクソくらえ」という表現が話題になった。この発言を「下品」で片付けようとした人も少なくなかったが、そこに問題があるわけではない。暴力的なクーデターではなく話し合いによる解決を目指すEUの方針にヌランドは怒っているのだ。その上で、パイアットとウクライナの「次期政権」の閣僚人事について話し合っているのだ。ヤヌコビッチの排除が前提になっている。

 ヌランドたちはヤヌコビッチ政権を倒すクーデターの実行部隊としてNATOの訓練を受けていたネオ・ナチを使う。そうしたグループは2月中旬になると棍棒、ナイフ、チェーンなどを手にしながら石や火炎瓶を投げ、ピストルやライフルで銃撃を始めた。広場では無差別の狙撃も始まるが、これを指揮していたのはネオ・ナチを指揮していたひとりのアンドレイ・パルビーだった。

 無差別の狙撃が政権打倒を目指すグループによるものだということは早い段階にEUも認識していた。2月25日に現地入りしたエストニアのウルマス・パエト外相は現地を調査、狙撃したのはクーデター派だとEUのキャサリン・アシュトン外務安全保障政策上級代表(外交部門の責任者)へ電話で報告しているのだ。これはもみ消されそうになったのだが、ふたりの会話がインターネット上に流れて表面化した。

 米英の支配層は19世紀以来、自分たちの目的を達成するために犯罪組織、麻薬業者、イスラム系カルト、ナチスやその後継者なども利用してきた。ウクライナではネオ・ナチ。その事実はクーデター直後、西側の有力メディア、例えばイギリスの​BBCでさえ伝えていた​。その事実でさえ西側は必死に封印しようとしている。それだけ追い詰められているということだろう。






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最終更新日  2022.08.01 01:47:25



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