カテゴリ:カテゴリ未分類
ウクライナにおける戦闘で市民を危険に晒す戦術をウクライナ軍が採用していると批判する報告書を人権擁護団体のアムネスティは8月4日に発表した。学校や病院を含む住宅地にキエフ政権側の武装勢力が軍事基地を建設、そうした場所から攻撃することで住民を危険な状態にしていると批判したのだ。現地で取材しているジャーナリストや住民らの証言と合致していることから信憑性は高い。 しかし、その報告書は西側の支配層を怒らせるような内容だった。そこでアムネスティへは強い圧力がかかったと言われている。言うまでもなくアムネスティは巨大な組織であり、それなりの資金を集める必要がある。イギリスの国際開発省、欧州委員会、アメリカ国務省などの各国政府機関、アメリカのアムネスティはロックフェラー財団やフォード財団からも資金を得ている。 民主主義や人権を掲げる団体のスポンサーとして適切とは思えない組織、団体が名を連ねている。投機家で体制転覆家でもあるジョージ・ソロスと緊密な関係にあるヒューマン・ライツ・ウォッチに比べるとマシだとは言われているが、問題は小さくない。 有力メディアでも言えることだが、大口の資金源はそれなりの影響力を持っている。組織へ直接及ぼす影響だけでなく、その組織に圧力を加えることができる外部の組織などを通じても圧力を加えてくる。アムネスティはこうした圧力に屈したようで、自分たちが発表した報告書を外部の「専門家」に検証させるという。有り体に言うなら「検閲」に回したのである。 西側の有力メディアがCIAにコントロールされている実態は1970年代から指摘されていた。例えば、ワシントン・ポスト紙の記者としてウォーターゲート事件を取材したことで知られているカール・バーンスタインはリチャード・ニクソン大統領が辞任した3年後の1977年にワシントン・ポスト紙を辞め、「CIAとメディア」という記事をローリング・ストーン誌に書いている。(Carl Bernstein, “CIA and the Media”, Rolling Stone, October 20, 1977) ジャーナリストのデボラ・デイビスが書いた『キャサリン・ザ・グレート』もCIAによるメディア支配の一端を明らかにした。第2次世界大戦が終わって間もない1948年頃にアメリカでは「モッキンバード」と呼ばれる情報操作プロジェクトがスタートしているというのだ。 そのプロジェクトを指揮していたのは4人で、第2次世界大戦中からアメリカの破壊活動を指揮していたアレン・ダレス、ダレスの側近で戦後に極秘の破壊工作機関OPCを率いていたフランク・ウィズナー、やはりダレスの側近で後にCIA長官に就任するリチャード・ヘルムズ、そしてワシントン・ポスト紙の社主だったフィリップ・グラハムだ。(Deborah Davis, “Katharine the Great,” Harcourt Brace Jovanovich, 1979) 1980年代以降、有力メディアとCIAとの関係は強化され、気骨あるジャーナリストは排除されてきた。そうした状況に拍車をかけたのが「規制緩和」だ。それによってメディアは寡占化した。今ではメディアの9割程度を6つのグループが支配している。 つまり、COMCAST(NBCなど)、FOXコーポレーション(FOXグループなど)、ウォルト・ディズニー(ABCなど)、VIACOM(MTVなど)、AT&T(CNN、TIME、ワーナー・ブラザーズなど)、CBSだ。日本では電通をはじめとする巨大広告会社によるメディア支配が指摘されているが、情報機関の手は日本のマスコミの内部にも伸びている。 そうした中、権力犯罪の内部告発を支援してきたのがウィキリークスだが、その創設者のひとりで看板的な存在であるジュリアン・アッサンジは2019年4月11日、イギリスの警察に逮捕され、イギリス版グアンタナモ刑務所と言われているベルマーシュ刑務所へ入れられた。彼はオーストラリア人であり、活動の拠点はヨーロッパだった。そのアッサンジをイギリスの司法当局はアメリカの当局へ引き渡そうとしているのだ。アメリカへ引き渡された場合、アッサンジには懲役175年が言い渡される可能性がある。 アッサンジへの弾圧が正当だと認められたなら、アメリカの権力犯罪を明らかにしたジャーナリストは国籍や活動拠点に関係なくアメリカの私的権力が報復できることになる。アムネスティにもそうした私的権力の力が及んだということだろう。世界規模で「事実」は瀕死の状態にある。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2022.08.16 09:25:54
|