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ロシアのエネルギー会社ガスプロムは「ノードストリーム1」のメンテナンスのためだとして、EUへの天然ガス輸送を減少させ、8月31日には完全に停止した。コンプレッサーの装置をシーメンスが修理のために取り外し、カナダで修理して戻そうとしたところ、アメリカ政府の「制裁」で戻せなくなったのだ。その後、ロシア側は油漏れを理由にして輸送を再開していない。そして9月5日、クレムリンの広報官を務めるドミトリ・ペスコフはアメリカが「制裁」をやめるまで輸送を止めている技術的な問題は続くと述べた。 この決定をアメリカやイギリスの政府は歓迎しているだろう。ロシアからの天然ガスの輸送が停止したことでEU社会は厳しい状況に陥ると見られているが、そうした状況をアメリカやイギリスの政府は望んでいるのだ。 ウクライナの内戦は2014年2月のクーデターから始まったが、そのクーデターをアメリカのバラク・オバマ政権が実行したひとつの理由はロシアからEUへ天然ガスを運ぶパイプラインがウクライナを通過していたからだ。ロシアからEUというマーケットを奪い、EUからロシアという供給源を奪うことで両者を疲弊させ、米英、つまりアングロ・サクソンが世界の覇者になるという長期戦略を達成しようとしたのだ。 それに対し、EUとロシアはウクライナを迂回するパイプラインを建設した。そのひとつがバルト海を通るノードストリーム1。このパイプラインは2011年11月に開通している。 それと同時にガスプロムはロイヤル・ダッチ・シェルと共同で「ノードストリーム2」の建設を2015年6月に始めた。アメリカ政府は建設を執拗に妨害、建設に携わる会社は「制裁」の対象にするが、ロシアの天然ガスをドイツは放棄しない。ドイツとの関係を決定的に壊すことを避けるため、ジョー・バイデン政権はノード・ストリーム2の建設を認めざるをえなくなる。そして2021年9月にパイプラインは完成した。 しかし、今年2月24日にロシア軍はウクライナに対する軍事作戦を開始、アメリカ政府の圧力でEUは新パイプラインの稼働を断念している。この決定でEUのエネルギー不足は不可避になったが、アメリカはノードストリーム1も止めさせようともしていた。 エネルギー、食糧、通貨は世界支配の3本柱と言われている。 かつて、アメリカの支配層はOPECを利用してエネルギーを支配していたが、ロシアやベネズエラといったアメリカに従属しない国の存在感が強まった。そうした流れを変え、再びアメリカがエネルギーの支配者になろうとしている。 アメリカは食糧の分野でも大きな影響力を持っているのだが、その耕作地帯であるノースダコタ州、アイオワ州、イリノイ州、ミネソタ州などで干魃が深刻化していると伝えられているが、アメリカの農業は地下水に依存しているという問題もある。 グレートプレーンズ(大平原)の地下にはオガララ帯水層があり、この水がこの穀倉地帯を支えてきたが、その水位の低下は深刻。しかもシェール・ガスやシェール・オイルの開発に伴う水汚染も問題になっている。当然、水が枯渇すれば農業生産は不可能になる。そうした状況の中、アメリカ最大の農耕地所有者になったのがビル・ゲイツであり、欧米の巨大資本はウクライナの耕作地を買収しているとも言われている。 第2次世界大戦後、アメリカで発行されるドルが世界の基軸通貨として扱われてきた。アメリカの金融資本が通貨を支配してきたのだが、それをロシアや中国が揺るがしている。この両国はすでにドルでの決済を止め始めているが、その渦にインド、イラン、サウジアラビアなども巻き込まれ、その渦は大きくなりそうだ。アメリカはロシアをSWIFT(国際銀行間通信協会)から排除するなどして抵抗中だが、すでにロシアはSWIFTに替わるSPFSを稼働させている。 アメリカのドル体制は石油取引と密接に結びついてきた。ドルを発行するだけならインフレになり、破綻してしまうため、ドルを実社会から回収する仕組みが作られた。そのひとつがペトロダラー。石油取引の決済をドルに限定し、それをアメリカへ還流するようにOPECを説得、その代償として国の防衛や支配層の地位と富を保障している。また金融規制を大幅に緩和させて投機市場を肥大化させることでドルを吸収してきた。 エネルギー資源や通貨システムに対するアメリカの支配力が連動して弱まっている。アメリカ国内の食糧生産も30年以内に破綻する可能性が高い。崩れゆく現在の支配システムに君臨している人びとはこれからも支配者でいるため、死に物狂いだが、欧米は劣勢だ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2022.09.07 00:59:01
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