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《櫻井ジャーナル》

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2023.09.04
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 ​中国のファーウェイ・テクノロジーズ(華為)は8月29日に「Mate 60 Pro」と名付けられた新しいスマートフォンを発表、オンラインストアで予約販売を開始した​。この携帯電話が搭載する同社のKirin 9000Sは5Gに対応しているとされている。アメリカ政府は2019年からファーウェイがアメリカ企業から先進的なチップやソフトウェアを購入することを制限しているが、そのひとつの回答がこれだ。

 アメリカをはじめとする西側には中国だけでなくロシアも過小評価、ハイテク製品を開発する能力がないと信じている人が少なくない。ロシアの戦闘力や生産力は低く、兵器の製造に必要なマイクロチップは回線から間も無く枯渇し、兵器庫は空になって降伏すると好戦的エリートは信じていたという。

 生産力の点で中国がアメリカより優っていることを理解しているアメリカ人も存在していた。そのひとりがアップルを率いていたスティーブン・ジョブスだ。

 ​2011年2月、バラク・オバマ大統領はシリコン・バレーの幹部たちと食事をともにした際、ジョブスに対して同社のiPhoneをアメリカで生産しないかともちかけたのだが、拒否されている​。

 ジョブスによると、アジアでは生産規模を柔軟に変更でき、供給ラインが充実、労働者の技術水準が高いという理由からだという。アップル側の推計によると、iPhoneを生産するためには約20万人の組立工と約8700人のエンジニアが必要で、それだけの陣容をアメリカで集めるためには9カ月が必要だが、中国なら15日ですむという。

 アメリカが抱える最大の問題は教育にある。最高レベルの教育は維持されているようだが、生産現場で必要な中間レベルの技術を持つ人を育成できていない。庶民から教育を受ける権利を奪ったアメリカのシステムは国を弱体化させている。アメリカに従っている日本でも学生のレベルが落ちているようだ。

 しかし、それでもアメリカは優れていると妄想している人がいる。その中にはジョー・バイデン大統領、アントニー・ブリンケン国務長官、ビクトリア・ヌランド国務副長官代理、ジェイク・サリバン国家安全保障補佐官らが含まれている。

 ウクライナでの戦闘でも彼らはロシアがすぐ無条件降伏すると考え、「戦犯法廷」も夢想していたというが、「経済封鎖」は機能せず、武器弾薬が枯渇したのはアメリカ/NATO/ウクライナ。ロシアの勝利は決定的だが、それを認めるわけにいかないバイデン政権はウクライナに「総玉砕」を要求、東アジアに火をつけようとしている。

 ネオコンは1991年12月にソ連が消滅した時、アメリカが唯一の超大国になったと考え、世界制覇プロジェクトを始動させた。これは本ブログで繰り返し説明してきた。

 ところが21世紀に入るとロシアでウラジミル・プーチンを中心とする勢力が再独立に成功するのだが、それでもアメリカの好戦派は自分たちが世界の支配者だと信じていた。例えば、​外交問題評議会(CFR)が発行している定期刊行物「フォーリン・アフェアーズ」の2006年3/4月号に掲載されたキール・リーバーとダリル・プレスの論文​もそうした考えが反映されていた。それには、ロシアと中国の長距離核兵器をアメリカ軍の先制第1撃で破壊できるようになる日は近いとされている。

 その考えが間違いだということは2008年8月に判明している。イスラエルやアメリカを後ろ盾とするジョージア軍が北京で夏季オリンピックが開かれていた期間を狙い、南オセチアを奇襲攻撃したのだが、ロシア軍の反撃で完膚なきまで叩きのめされたのだ。

 イスラエルは2001年からジョージアに武器/兵器を含む軍事物資を提供、将兵を訓練しはじめている。イスラエルから供給された装備には無人飛行機、暗視装置、防空システム、砲弾、ロケット、電子システムなども含まれていた。

 当時のジョージア政府にはヘブライ語を流暢に話す閣僚がふたりいたことも知られている。ひとりは奇襲攻撃の責任者とも言える国防大臣のダビト・ケゼラシビリであり、もうひとりは南オセチア問題で交渉を担当しているテムル・ヤコバシビリだ。

 そのほか、アメリカの傭兵会社MPRIとアメリカン・システムズが元特殊部隊員を2008年1月から4月にかけてジョージアへ派遣して軍事訓練を実施、同年7月にはコンドリーサ・ライス国務長官がジョージアを訪問している。南オセチアへの奇襲攻撃はその翌月だ。アメリカ政府の承認を受けての奇襲攻撃だったのだろう。

 アメリカはアル・カイダ系武装集団を使い、2011年春にリビアやシリアへ軍事侵攻、13年11月から14年2月にかけてウクライナではクーデターを実行、ビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒した。中東でもウクライナでもロシア軍の兵士や兵器の能力がアメリカ/NATO軍を上回ること明確になり、世界各国のアメリカ離れを促進する一因になった。

 アメリカをはじめとする西側は生産力も資源量も軍事力もロシアや中国より劣っているのだが、勝てると信じている。今年7月6日から9日にかけて中国を訪問したジャネット・イエレン財務長官は居丈高な姿勢を示し、強者総取りの新自由主義へ復帰することを要求した。その要求を中国政府が受け入れるとは思えない。






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最終更新日  2023.09.04 11:37:08



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