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イスラエルとハマスは11月22日、戦闘を4日の間中止することで同意した。人質の解放は24日以降になるという。アメリカのジョー・バイデン政権は停戦によって人びとが冷静に考える余裕ができることを恐れていたというが、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、停戦協定が終了すれば戦争は再開されると語っている。ガザからパレスチナ人を一掃するまで続けるということだろう。アメリカのように、先住民居留地へ押し込めるつもりかもしれないが、思惑通りに進むかどうかは不明だ。 西側の有力メディアはパレスチナの歴史を無視しているが、世界の人びとは多くがガザで行われている住民虐殺に憤っている。イスラム世界ではなおさらで、アメリカやイスラエルの支配層と利権で結びついている国々、たとえばペルシャ湾岸の産油国やモロッコ、インドなどはイスラエルを批判することに及び腰だが、そうした国々でも国民は怒っている。その怒りを無視すれば支配者の足元が揺らぐ。 11月21日にBRICSはガザでの虐殺を討議するためにバーチャル会議を開催、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカのほかサウジアラビア、アルゼンチン、エジプト、エチオピア、イラン、アラブ首長国連邦、そして国連事務総長が参加した。 議長を務めた南アフリカのシリル・ラマポーザ大統領が発表した総括では、ガザでイスラエルが行なっている戦争を停止するように求め、パレスチナ人の強制移送や自国からの追放を非難するとされている。共同声明が出されなかったのはアメリカやイスラエルとの関係が強いサウジアラビア、アラブ首長国連邦、インドあたりが反対したのだろうと見られている。 その前日、11月20日にはサウジアラビア、ヨルダン、エジプト、パレスチナ自治政府、インドネシアの代表とICC(イスラム協力機構)の代表が北京を訪れ、中国の王毅外相が主催する会談に臨んだ。この会談でサウジアラビアのファイサル・ビン・ファルハン・アル・サウド外相は戦争を直ちに止め、停戦に移行し、救援物資をガザへ搬入しなければならないと述べ、中国の責任感を賞賛している。 そのサウジアラビアはイギリスによって作られた国であり、リチャード・ニクソン大統領が1971年8月にドルと金との交換停止を発表、73年から変動相場制へ移行してからはドル体制を支えてきた。 金という裏付けをなくしたドルは金に束縛されることなく発行できるようになったが、何も対策を講じなければハイパーインフレになり、基軸通貨としての地位から陥落する可能性がある。そこでドルを発行元へ還流させなければならなくなったのだ。還流が進めば発行する余地が広がる。そこでアメリカはサウジアラビアを含む(石油輸出国機構)に石油取引の決済をドルに限定させた。ペトロダラーの仕組みだ。 変動相場制へ移行した1973年に第4次中東戦争が勃発。この戦争が石油危機の原因になったとされているが、1962年から86年までサウジアラビアの石油鉱物資源大臣を務めていたシェイク・アーメド・ザキ・ヤマニによると、「ある秘密会議」で石油価格の引き上げは決定されたという。値上げを指示したのはヘンリー・キッシンジャーだったという。当時、石油会社は多額の借入金で押しつぶされそうになっていたというが、ドルを基軸通貨の地位にとどめるためだったとも言えるだろう。 ペトロダラーの仕組みができあがって間もない1975年3月、自立の意思を持っていたサウジアラビアのファイサル国王が暗殺された。国王は執務室で甥のファイサル・ビン・ムサイドに射殺されたのだが、ジャーナリストのアラン・ハートによると、その暗殺犯はクウェートのアブドル・ムタレブ・カジミ石油相の随行員として現場にいた。 ビン・ムサイドはアメリカでギャンブルに溺れ、多額の借金を抱えていた。そのビン・ムサイドにモサド(イスラエルの情報機関)は魅力的な女性を近づけ、借金を清算した上で麻薬漬けにし、ベッドを伴にするなどして操り人形にしてしまったというのだ。(Alan Hart, “Zionism Volume Three,” World Focus Publishing, 2005) その後、サウジラビア国王のアメリカへの従属度は強くなる。イスラエル軍がガザで住民虐殺を始まる前、サウジアラビアを率いているムハンマド・ビン・サルマン皇太子はイランとの関係を修復する一方、アメリカやイスラエルとの関係も維持していたが、そうした二股政策を続けることが難しくなった。 11月11日、57カ国のイスラム諸国代表がサウジアラビアの首都であるリヤドで開かれたアラブ連盟とOIC(イスラム協力機構)の合同緊急会議に集まっている。その中にはイランのエブラヒム・ライシ大統領、トルコのレジェップ・エルドアン大統領、カタールのシェイク・タミーム・ビン・ハマド・アール・サーニー首長、そしてシリアのバシャール・アル・アサド大統領も含まれている。この会議で具体的なことが決まったとは言えないが、通常なら一同に会することはなさそうなメンバーが集まった意味は小さくない。その背後には各国の怒れる国民がいる。 イスラエル、アメリカ、イギリス、EU、サウジアラビア、インドが狙っている利権にとってガザは目障りな存在である。米英の巨大金融資本が19世紀に立てた長期戦略、ソ連消滅後にネオコンが始めた世界制覇プロジェクトだけの問題ではないが、ガザでの虐殺は彼らが狙っている利権を実現させないかもしれない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.11.24 00:00:09
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