(まさか、トゥパク・アマルが、早々に手を回していたのか…?!
だが、いくらなんでも、このような、あの者どもにとっても危険の大きいことを?!)
アレッチェの強く握り締めた拳が、わなないている。
(いや……有り得る!!
いかにリスクがあろうが、我がスペイン軍を最も窮地に陥れる方法は、結局、これだと見切っていたのだとしたら…!
ならば、あの男が、どこかで、この手を打ってくる可能性を予測しておくべきだったのだ――!!)
あまりに強度の切歯扼腕のために、アレッチェの、その歯も、腕の骨までもが、実際に砕かれそうなほどにギリギリと不快な音を立てて鳴っている。
「おのれ…トゥパク・アマル……!!」
アレッチェは、激しく拳を机上に打ちつけると、大股で執務室のドアに向かう。
そして、ドアを蹴り上げて開くと、荒々しい怒声で乱暴に部下を呼びつけた。
「即刻、バリェ将軍を、ここに呼べ!!
それから、すぐに、ラ・プラタ副王領のフロレスに伝令を飛ばすのだ。
大至急、わたしの元へ参じよと――!!」
【お知らせ】
本日もお読みくださいまして、どうもありがとうございます。
いつも、とても励みになっています!
『第8話 青年インカ』も長い章となってしまいましたが、最後までお付き合いくださいまして、本当にありがとうございました。
明日からは、いよいよ『第9話 碧海の彼方』に入って参ります。
早速、英国艦隊側の敵情視察からスタートしたいと思います^^
おかげさまで、この物語も、いよいよ終盤戦となりました。
トゥパク・アマルも主役に返り咲きたくてウズウズしている様子ですし(…って、登場は、もいちょい先なんですが<(_ _)>)、次章は、トゥパク・アマル、アンドレス、アレッチェ、フロレスなど、これまでの主要キャラ総動員で盛り上げていけたらと思っております!
今後とも、どうぞよろしくお願いいたします!!
【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆
≪トゥパク・アマル≫
反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。
インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。
インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。
「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。
清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。
≪ホセ・アントニオ・アレッチェ≫
植民地ペルーの行政を監督するためにスペインから派遣されたエリート高官(全権植民地巡察官)で、植民地支配における多大な権力を有する。
ペルー副王領の反乱軍討伐隊(スペイン王党軍)総指揮官として、反乱鎮圧の総責任者をつとめる。
有能だが、プライドが高く、偏見の強い冷酷無比な人物。
名実共に、トゥパク・アマルの宿敵である。
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