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カテゴリ:第10話 遥かなる虹の民
![]() その時、キィッと静かにドアが開かれる音がして、先ほどの混血の美しい修道女リリアーナが入ってきた。 彼女は両手に大きなお盆を持っており、その上にはティーポットやカップが乗せられている。 「お茶をお持ちしました」と微笑み、彼女は5人をテーブルの方へといざなう。 ポットの中からは甘やかで芳醇なコカ茶の香りが漂ってくる。 「さあ、どうぞこちらに。 おかけになってお待ちくださいね」 「お気遣いいただいてしまい、すみません。どうもありがとうございます」とアンドレスたちは丁寧に礼を述べて、着座した。 アリスメンディとの対面を控えて緊張している様子の面々に、リリアーナはやわらかに微笑んで言う。 「いいえ、当然のことです。 それより、ほら、このクッキーを召し上がってみてくださいな。 当修道院自慢の焼き菓子です」 そう言って、彼女はアンドレスたちの前に、たくさんの可愛らしいクッキーが積まれた皿を置いた。 一口頬張ると、自慢の焼き菓子という言葉通り、焼きたての香ばしさや素朴な味わいが口の中に広がり、ホロホロとほどけるような食感が格別である。 「うん!美味い!」と旅のメンバーたちが思わず率直な声を上げた。 マリオも「この味、懐かしいなあ。やっぱり美味しい!」と、明るい笑顔を見せている。 そんな5人の様子にリリアーナは目を細めた。 「ふふっ、よかった。 マリオは知ってることだけど、このクッキーは昔から当修道院で作っているものなんです。 一口食べるごとに幸福が訪れると言い伝えられているんですよ」 香ばしい湯気が漂うコカ茶を一口含むたび体の芯から温まり、幸福を運んでくれるというクッキーの優しい味わいは、心をほぐして緊張を解いていく。 皆のそのような様子を見届けると、リリアーナはにっこり微笑んだ。 「それじゃあ、私はこれで失礼しますね。 そろそろアリスメンディ様もお越しになる頃ですので。 また後でお会いいたしましょう」 一礼して部屋をあとにしていくリリアーナに、旅のメンバーたちも「はい、すっかりお世話になり、ありがとうございます!」と、感謝の言葉を返したのだった。 やがて……ゆっくりドアがノックされる音が響き渡り──アンドレスたちは反射的に背筋を伸ばす。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() 【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆ ≪トゥパク・アマル≫(インカ軍) ≪アンドレス≫(インカ軍) ≪ジェロニモ≫(インカ軍) ≪ペドロ≫(インカ軍) ≪ヨハン≫(スペイン軍) ≪マリオ≫(インカ側) ≪リリアーナ≫(インカ側) ≪アリスメンディ≫(インカ側) ≪モスコーソ司祭≫(スペイン軍)
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