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カテゴリ:第10話 遥かなる虹の民
と同時にドアが開き──扉の向こうから、全身黒ずくめの僧衣をまとった長身の男が姿を現した。 蝋燭(ろうそく)の明かりぐらいしかない薄暗い室内では、薄闇に隠れて顔はよく見えないものの、鋭い眼光と、その男から放たれるただならぬ存在感に、彼がただの神父ではないことは初めて会うジェロニモやペドロたちにもすぐわかった。 緊張した雰囲気の滲む静まり返った地下室で、最初に沈黙を破ったのはアリスメンディだった。 「まさかこのようなところで会えるとは」 低い声で黒衣の人物が呟いた瞬間、アンドレスは懐かしさが込み上げ、弾かれたように椅子から立ち上がった。 「アリスメンディ殿!! やっと会えた!」 感極まった声を上げたアンドレスに引き寄せられるように、黒いシルエットはテーブルの方へ近づいてくる。 それと共に、とても神父とは思えぬような鋭利な表情がはっきり見えてくる。 もしアンドレスやモソプキオ村のロカ神父から事前に経緯を聞いていなければ、ジェロニモたちにはアリスメンディが敵か味方か全くわからなかっただろう。 しかし、「アンドレス、わたしも会いたかったぞ」と語るその声には、硬質でありながらも、人としての深い温かさが宿っている。 「いきなり押しかけてしまい申し訳ありません。 実は、今、トゥパク・アマル様の依頼で旅の途中で…それて、偶然に貼り紙をみかけて、立ち寄った村では教会の神父様が襲われていて……ああ、もう、話したいことがいっぱいで、どこから何を話したらいいのか!」 すっかり興奮した様子のアンドレスに、アリスメンディも椅子に腰を落ち着けながら「それはわたしも同じだ」と微かに笑(え)む。 アンドレスは逸(はや)る心を抑えながら、まずは伝えておかねばならないことを口にした。 「ありがとうございます! ええと、ここにいる皆はトゥパク・アマル様にも信頼されている俺の仲間たちなので、どうかご安心ください」 アリスメンディはゆっくりと頷き、椅子に深く身を預けた。 「お目にかかれて光栄デス!」とジェロニモは相変わらずな人懐こい笑顔で、そして、ペドロは興奮と緊張で頬を紅潮させながら自己紹介をする。 それからヨハンも、この謎めいた異端な雰囲気をまとった人物になにがしかの共感を覚えたのか、「よろしくお願いします」などと珍しく敬語になっている。 「ジェロニモ、ペドロ、ヨハン、ようこそ。わたしはイエズス会の神父アリスメンディ」と、アリスメンディも穏やかに応じ、そしてマリオにも「マリオもよく来たね」と微笑を見せた。 マリオもはにかんで、嬉しそうに頷く。 キャラからメッセージ 【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆ ≪トゥパク・アマル≫(インカ軍) ≪アンドレス≫(インカ軍) ≪ジェロニモ≫(インカ軍) ≪ペドロ≫(インカ軍) ≪ヨハン≫(スペイン軍) ≪マリオ≫(インカ側) ≪リリアーナ≫(インカ側) ≪アリスメンディ≫(インカ側) ≪モスコーソ司祭≫(スペイン軍)
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