アピチャッポン・ウィーラセタクン/Apichatpong Weerasethakul監督も来日して
前日から期待も高まる
『ブンミおじさんの森』を東京Filmexで観賞。
Phantoms of Nabuaで描かれた
メコン村近くのナブワは1960年~1980年代
共産主義の拠点と言われていた村。
ベトナムからラオスを経てタイにも共産主義が入って来たそうだ。
ナブワではタイ軍が常駐し
共産主義者であると肯定すれば殺され
否定しても殴られたという。
村の男たちは森に逃げ込んだ。
夜になると照明弾が上げられ
森の中の「共産主義者」まで追われた。
(以上は映画のあらすじではなく、タイ東北部の背景情報です)
そして前世をおぼえているブンミおじさんが登場する。
輪廻転生のなかでは
忘れることに意味がある。
前世を忘れなければ
現世で前世の家族や友人たちを求めてしまう。
前世をおぼえているブンミおじさんは
タイ東北部を象徴する存在という。
前日アピチャッポン・ウィーラセタクン監督が話していた、
政治的な記憶が薄れて行くことに対するPoetic/詩的なStatementを体現するのが
ブンミおじさんかもしれない。
ナブワで起こったこと
そしてその後に生まれた若者たちは
村で起こったことについて知らない。
輪廻転生/Reincarnation、Transformationを繰り返すブンミおじさんは
生者と死者の境界を暈していく気がする。
生者と死者の境界をあいまいにしながら
そのボーダーを超えて
薄れて行く前世の記憶、村で起こったことを
伝えてくれるような存在と思った。
生者と死者の境界を超えながら
時も超え
過去と未来をメビウスの輪のように結びつけ
融合する有機的な存在、という印象を受ける。
タイムマシーンで記憶装置な精霊。
これはわたしたちが希求していた存在なのだろうか、
(
そうかもしれない)。
猿に変身してしまったブンミおじさんの息子が久しぶりに帰って来た時
「ずいぶん毛が伸びたわね」と
おばさんに言われる。
そんなコメディ風の演出もある。
Filmexでもアピチャッポン・ウィーラセタクン監督は
「TVドラマやマンガ、昔のタイプのタイ映画へのオマージュ」と語っていた。
ただ、この手法はずうっと使い続けると
陳腐になりそう。
60年代から80年代という時代と遠く離れた現代では
瞬間的に目新しいけれど...
いつまでもレトロな演出で新鮮さを醸しだすわけにも行かないから...
アピチャッポン・ウィーラセタクンとマイケル・シャオワナーサイ/Michael Shaowanasaiが監督した『アイアン・プッシーの大冒険』(2003年)のようなジャンルならだいじょうぶかも。
ドキュメンタリー
『真昼の不思議な物体』もちょっと懐古的。
タイ国文化省の支援もあった本作の製作だが
フランスやドイツといったヨーロッパのプロダクションの投資が目立っているのが
興味深かった。
余談だが
ブンミおじさん(Thanapat Saisaymar)の風貌はちょっと
キム・ギドク監督に似ている。
1950年代アメリカで起こったマッカーシズムについては
『グッドナイト&グッドラック』で描かれていたように
口をふさがれそうになっても
冷たい頭と熱い心で対峙、真っ向批判していたけれど...
1960年代のベトナム戦争以降
ベトナム以外のアジアでも
恐ろしいことが起こっていたのかと
あらためて知る思い。
おなじころ、
韓国の地方の村でもイデオロギー対立による悲劇が起こっていた。
2007年の釜山国際映画祭で観た韓国のドキュメンタリー
ムン・ジョンヒョン監督『ハルメ花』。
タイを知り
韓国の歴史や来し方を俯瞰しながら
タイやアジアが抱えるイデオロギーや政治の問題に広がって
アジア史全体を鳥瞰している感覚をおぼえた。
ドラマで近現代史像が立ち上がったように。
東京FilmexでのQ&Aでは
作品の持つ政治的な側面を質問する人はひとりもいなく...
やはりここは日本だからだろうか...。
作品をファンタジーとして捉えているのが多数のような感触があった。
to be continued...!?
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