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カテゴリ:美術
森美術館の「杉本博司:時間の終わり」展に行ってきたのは、昨年の11月です。仕事を珍しく9時に終わらせることができたので、せっかくだから、ということで足を伸ばして行ってみました。
詳しい展示内容は、森美術館のサイトをご覧になってください。 森美術館会員になったので、カードを専用カウンターで見せると、チケットを発行してもらえます。待ち時間、ほとんどなし。ちょっと優越感です。 ちょうど夜景が綺麗な夜で、展望台をぐるりとまわってから展示室のある上階へ向かいます。 杉本博司さんの作品については、他の方も書いてらっしゃるので、そんなに書くべき事はないのかもしれません。 ただ、これはオリジナルプリントといいますか「大きな版」で見た方が絶対に良い作品だと思いました。 私の場合、立つ位置によって、リアリティが浮かび上がったり消えたりするのが、非常に面白かったのです。 たとえば、マダムタッソー蝋人形館の人形を撮影した「ヘンリー8世」。小さい印刷物で見ると、本物そっくりです。なのですが、大きなプリントで間近で見てみると、作り物っぽいのです(当たり前ですけど)。 肌の質感、造作のバランス、毛の生え具合など、やはりホンモノの人間ではないな、という感じがしました。 ところが、です。ちょっとずつ後ろへ下がって、だんだんと細かなディテールが見えなくなっていくと、本物っぽくみえてくる。これは不思議です。博物館の剥製を撮った作品でも同じなのですが、どこかで偽物と本物の転換が起きる。これは、実地に、おおきなプリントで見ないと味わえないことでしょう。 海や建築物、映画館の作品も、やはりどこか偽物感と本物感が混在しているような気がしました。つまり、天然のものや杉本さん本人が作ったものではない人工物なのだけど、どことなく作り物のようで、作り物ではない。 きっと杉本さんは、その境界線に立って、対象物が作り物的な本物、本物的作り物のように、一歩離れたところから見ているような感覚がしました。 並んでいる作品は、かなりコンセプチュアルです。誰でも、そのコンセプトを踏襲すれば杉本的な作品が作れる、と一見思ってしまうでしょう。海を撮ったり、仏像を撮るだけなら、そんなに難しいものでもないだろう、と。 でも、やはりプロの確固とした技術に支えられて、夢うつつのような現実感を出しているのです。大きな写真で見ると、それが伝わってくるのです。基本的に写真は複製可能な芸術ですけど、写真集や雑誌で見るよりも、オリジナルプリントでじっくり見られたからこそ、深く味わえたのかもしれません。写真家の展覧会は少ないですが、これは、良かったですねえ。 しかし、六本木ヒルズ。できた当初はもてはやされましたけど、あの事故がおきる前後から、金満・拝金の権化のように言われることが多くなってきているような気がするのですが・・・・。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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